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「私」から考える文学史

私小説という視座

他編:井原 あや
他編:梅澤 亜由美
他編:大木 志門

紙版

内容紹介

日本固有の文学ジャンルと考えられている「私小説」。
明確な定義がないなか、読者は一体なにを作者の「私」像として読み取っているのだろうか?
本書では、従来「私小説」とみなされてこなかった作品や周辺ジャンルである日記や紀行文、映画や漫画などを含めた文学史の構築を試みるとともに、作り手である現代作家の水村美苗氏、佐伯一麦氏、青木淳吾氏への 「私」をめぐるインタビューを収録。
明治以降の「私小説」を研究と創作の両面から再検討する。

目次

〈私小説〉という視座 本書の方法と構成について  梅澤亜由美・大木志門
【インタビュー】私小説という「フィクション」  水村美苗

Ⅰ 明治期の「私」
田山花袋と徳田秋聲における〈「私」性〉と「文体」の生成  大木志門
「書く」女の生活と戦略 田村俊子「彼女の生活」とジャーナリズム  鬼頭七美
郡虎彦の初期作品における〈私〉の様相  太田 翼
変容する〈透谷〉 小田切秀雄の文学史把握とポジショナリティ  黒田俊太郎
【コラム】〈私〉の旅日記―坪内逍遙「旅ごろも」  富塚昌輝
【コラム】ルポルタージュと労働者手記  金子亜由美
【コラム】モデルの手記と小説―岡田(永代)美知代  井原あや
【コラム】帰朝者の文学―永井荷風  多田蔵人

Ⅱ 大正期の「私」
一九二〇年の〈「私」小說〉 白樺派から奇蹟派、そして宇野浩二へ  梅澤亜由美
告白の相手は誰か 佐藤春夫の〈詩〉と〈私小説〉  河野龍也
菊池寛〈啓吉もの〉と芥川龍之介〈保吉もの〉の間  小澤純
真摯な自己語りに介入する他者たちの声  田中祐介
【コラム】少女雑誌における「私語り」―『少女世界』を中心に  嵯峨景子
【コラム】看取り・介護  梅澤亜由美
【コラム】幻想の系譜―藤枝静男の「私小説」を中心に  大木志門
【コラム】関東大震災直後のルポルタージュと小説  小林洋介
【インタビュー】自画像としての私小説  佐伯一麦

Ⅲ 昭和初期の「私」
一九二〇年代後半の横光利一テクストにおける〈私小説性〉の諸要素
〈「私」性〉と〈事実性〉による享受のシステム  小林洋介
伊藤整における私小説の模索と転回 「得能もの」から自伝小説「北国」へ  尾形大
〈私〉を更新する 宮本百合子〈伸子〉連作について  竹田志保
個人的なことは政治的なこと 〈私性〉から見た転向文学  山根龍一
【コラム】文学の〈素人〉性―北條民雄と川端康成  尾形大
【コラム】戦争と私語り―原民喜の場合  大原祐治
【コラム】「文学」史のキャラ化―伊藤整から高橋源一郎へ  小澤純
【コラム】批評の原点―江藤淳における〈私〉  河野龍也

Ⅳ 戦前〜戦後の「私」
〈私〉を応用する 一九四〇年代前半の太宰治小説  井原あや
「私」と「歴史」のあいだ 坂口安吾と私小説  大原祐治
大岡昇平文学における〈私〉 短篇小説「妻」を中心に  立尾真士
安岡章太郎『私説聊斎志異』論 「私」の小説化  小嶋洋輔
【コラム】福島次郎『三島由紀夫―剣と寒紅』の提起するもの  太田翼
【コラム】「主観的」な「風景」をめぐって―塚本晋也版『野火』  立尾真士
【コラム】〈私〉をクロスジェンダーする―鷺沢萠の場合  康潤伊
【コラム】マンガ家になるマンガ―東村アキコ『かくかくしかじか』  小嶋洋輔
【インタビュー】「私」から遠く離れて  青木淳悟

見取り図
執筆者一覧
索引

著者略歴

他編:井原 あや
大妻女子大学大学院文学研究科国文学専攻・博士後期課程単位取得満期退学。博士(文学)。現在、大妻女子大学ほか非常勤講師。
主な著書・論文に、『〈スキャンダラスな女〉を欲望する―文学・女性週刊誌・ジェンダー』(青弓社、2015年)、「復刊後の『若草』―新人小説と早船ちよ」(小平麻衣子編『文芸雑誌『若草』 私たちは文芸を愛好している』翰林書房、2018年)、「『女性自身』と源氏鶏太―〈ガール〉はいかにして働くか」(『国語と国文学』2017年5月)などがある。
他編:梅澤 亜由美
法政大学大学院人文科学研究科日本文学専攻・博士後期課程満期退学。博士(文学)。現在、大正大学文学部准教授。
主な著書に、『増補改訂 私小説の技法 「私」語りの百年史』(勉誠出版、2017年)、共編著に、秋山駿・勝又浩監修『私小説ハンドブック』(私小説研究会編、勉誠出版、2014年)、訳書に、安英姫著『韓国から見る日本の私小説』(鼎書房、2011年)などがある。
他編:大木 志門
立教大学大学院文学研究科日本文学専攻・博士後期課程満期退学。博士(文学)。現在、山梨大学准教授。
主な著書に、『徳田秋聲の昭和―更新される「自然主義」』(立教大学出版会、2016年)、編著に『下萌ゆる草・オレンジエート 山田順子作品集』(龜鳴屋、2012年)、『二一世紀日本文学ガイドブック6 徳田秋聲』(ひつじ書房、2017年、共編)などがある。

ISBN:9784585291701
出版社:勉誠出版
判型:A5
ページ数:480ページ
定価:7200円(本体)
発行年月日:2018年10月
発売日:2018年10月31日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:FB
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:1FPJ