挑発する軍記
著:大津 雄一
内容紹介
大量の血と首、首のないむくろ、切り落とされた手、切腹して折り重なる死骸。
愛のために生き、そして死んでいった親子や夫婦、主従たち。
『平家物語』『太平記』などに代表される「いくさ」を描いた物語は、いまなお、なぜ読まれ、語り継がれていくのか。
「死」と「生」の物語のもつ魅力と意義、そして可能性をあざやかに解き明かす。
目次
はじめに
主要使用テクスト
第一部 いくさの表象
第一章 軍記と暴力
一 フー=チュ=リの処刑
二 千任の処刑
三 『後三年合戦絵詞』あるいは『後三年記』
四 『後三年合戦絵詞』の世界
五 軍記の暴力表象
六 緩慢な死
七 悪魔的暴力
八 悲劇の効能
九 『後三年合戦絵詞』の価値
第二章 『平家物語』という祝祭
一 戦争という祝祭
二 法住寺合戦
三 モックキング
四 見世物・笑い・装飾
五 グロテスク
六 アブジェクシオン
七 共同体の物語
第三章 いくさと少年たち
一 物語
二 千世童子
三 十三歳
四 「美しさ」と「健気さ」と「生への可能性」
五 勢多伽と六代
六 三条河原の公開処刑
七 「死の欲動」
第二部 愛の表象
第一章 『平家物語』の語る愛
一 物語の効能
二 六代と若宮
三 六代と若宮から成親と俊寛へ︑そして維盛へ
四 凡庸な物語
五 維盛から宗盛へ
六 維盛から小宰相へ
七 怪我の功名
第二章 残された女の物語
一 出家するか身を投げるか
二 小宰相
三 出家
四 入水
五 曾我兄弟の母
六 再婚
七 小宰相と曾我兄弟の母
八 小宰相と虎
九 おわりに
第三部 知の様相
第一章 慈光寺本『承久記』は嘆かない
一 「文学」的価値
二 慈光寺本『承久記』
三 王の敗北
四 慶事
五 四劫と三千仏
六 『愚管抄』
七 『水鏡』
八 危機
九 歴史の語り方
十 したたかな人々
十一 不遜な発言
十二 慈光寺本の価値
第二章 『太平記』の「知」
一 認知の様式としての物語
二 批評精神
三 議論する人々
四 「結論」のない議論
五 「次での才覚」
六 『太平記』のカオス
七 カオスの価値
第四部 英雄の誕生
第一章 野蛮と純朴
一 プリミティビズム
二 叛臣
三 野人
四 英雄
五 ロマンティスト
六 運命にあらがう人
第二章 時勢と英雄
一 叛逆英雄
二 伝記の時代
三 ロマン的英雄へ
四 道徳的英雄へ
五 扱いにくい叛逆者たち
六 帝国軍人の祖へ
七 革命の英雄へ
八 英雄なき世界
第五部 教室の『平家物語』
第一章 何のために?―『平家物語』群読の危うさ―
一 群読
二 感動
三 訓練
四 本質との邂逅
五 『平家物語』である理由
六 危うさ
七 まとめ
第二章 『平家物語』に惚れさせない
一 古典からの解放
二 古典に惚れさせない
三 「木曾最期」の戦前
四 「木曾最期」の戦後
五 「木曾最期」の現在
六 木曾義仲と廣瀬武夫
七 「木曾最期」に惚れさせない
八 「能登殿最期」に惚れさせない
九 「自他の生命を尊重する精神」
おわりに
初出一覧
索 引