想起する帝国
ナチス・ドイツ「記憶」の文化史
編:溝井 裕一
編:細川 裕史
編:齊藤 公輔
内容紹介
ナチス・ドイツは、建築や言説、祝祭、シンボル、音楽、動物観など、様々な西洋文化を無節操に利用し、過去のイメージを想起させることで、自らの正統性を人びとに訴え、大衆操作を試みた。また現在では、ナチスやヒトラーのイメージが映画や小説で再生産され、様々な形で受容されている。
過去と現在、二つの視点から、ナチス・ドイツの文化政策と受容のあり方を探る。
目次
はじめに―第三帝国の記憶 溝井裕一
第1部 第三帝国における「過去」の利用とその「多様性」
1.古代の「記憶」を略奪せよ―ナチス時代の建築に秘められたプログラム 溝井裕一
2.「私は総統を信じます」―キリスト教を想起させ大衆をとりこんだナチスのことば
細川裕史
3.想起された「アーリア的自然」―古代生物復元計画 溝井裕一
第2部 「記憶の場」としての祝祭をめぐる「過去」と「現在」
4.ナチス時代の祝祭―ニュルンベルク党大会を中心に 浜本隆志
5.集合的記憶としてのワーグナー―ヒトラーによる受容とその影響 北川千香子
第3部 「現代の大衆文化」におけるナチスの「記憶」
6.人間・ヒトラーの登場―『ヒトラー―最期の12日間』 齊藤公輔
7.月面に蟠踞するドイツ第四帝国のリアリティ―反ナチス映画としての『アイアン・スカイ』 森貴史
8.『帰ってきたヒトラー』―あるいは大衆文化に居つづけるヒトラー 細川裕史
おわりに 細川裕史
コラム① 「集合的記憶」とは何か
コラム② ヒトラーにとって「歴史」と「記憶」
コラム③ 「記憶」を巻きこむ歯車―ハーケンクロイツ
コラム④ 消えるように設計された記念碑
コラム⑤ 映画化される「ナチスへの抵抗」―あるいは「人としての良心」の記憶