「好奇心を満たすため」「科学の発展のために」……。科学者に「何のために研究をしていますか」と問うと、そんな返事が返ってくることがある。これは残念な発想だ。▼宇宙飛行士である著者が館長をつとめる日本科学未来館の基本理念は、「科学技術は文化である」。すなわち、「科学技術とは、人類が生き延びるためにある文化の一種である」と考える。これは著者の宇宙における思索に沿う思想であり、「科学は神がつくった真理を探究するためにある」と捉えてきたヨーロッパ人の科学観とは一線を画す。本書が示すこの科学観は、科学技術立国・日本をつくりあげるためのバックボーンになるだろう。さらに、先駆的な活動を続ける日本科学未来館の取り組みについても紹介するほか、京都大学大学院教育学研究科教授・鈴木晶子氏による、未来館のスタッフへのインタビューも掲載。科学とアートのつながりについて考察を深めるなど、「科学の見せ方」について考える。