建国六〇周年を迎えた中国。過去六〇年間の中国の歩みを振り返って見ると、その前半は「毛沢東思想」によって<貧困のユートピア>を求めた時代であった。その後半は「鄧小平理論」による<改革・開放>の時代であるといえる。しかし、どの時代においても流血を伴う悲劇があったことを見れば、中国共産党は「国づくり」に成功したとは言い難い。一方、経済の発展と社会の安定成熟という国づくりに成功した日本が、最近の国際舞台では存在感が希薄になり、中国の陰に見え隠れするといった存在になっているとすれば、それはひとえにわが国の政治の貧困と外交戦略の欠如のためである。日本は今こそ中国と「対決」しつつ、アジアの同盟国として時にはアメリカを説得し、ヨーロッパや太平洋地域の民主主義国とともに、リーダー国としての責任を果たしてゆかなければならない。中国の歴史と現在、未来、そしてあるべき「日中関係」の姿を、中国研究の第一人者が洞察する。