存分に旅をして、存分に歌を詠み、存分に恋して、そして死んだ西行。どうしたら、西行のように生きられるのか――自由に生きることが難しい時代だからこそ自由に生きたい、そう思う現代人の多くが共鳴する生き方をした日本人が、遠く昔にいた。没後千年近くもの間も、日本人の心を魅了し続け、古くは松尾芭蕉、近現代では、若山牧水、種田山頭火、さらには小林秀雄、白洲正子……といった知識人・教養人までもが魅せられたのはなぜか。諸国を旅しながら歌を詠むという生き方をした西行が生きた時代は日本が激動の期だった。保元・平治の乱から、源平の争い、平家の滅亡という時代のうねりに飲み込まれることなく、俗世間を捨てて生きた西行は、どう考えどう行動したのか。それをもっとも克明に記した伝記物語こそがこの著者不明の名作『西行物語』である。西行の生き方に憧れる一人である新進気鋭の若手訳者が現代人の心に問いかけるように、訳・解説を施した。