星野道夫が遺した膨大な写真と文章を新編集したMichio’s Northern Dreamsシリーズ6作目。文庫版だけのオリジナル作品で、本書で本シリーズは完結する。▼極北のアラスカに春は駆け足でやってくる。白夜の季節、二十四時間の太陽エネルギーは雪解けを一気に押し進め、ツンドラは香ばしい土の匂いがする。やがて川が開き、半年間眠っていた大地は、ゆっくり伸びをするかのように動きだしてゆく。この一瞬とも言える植物たちの季節に、いっせいに咲き誇る可憐で美しい花々。花に目を向け始めると、この土地の人々の暮らしの中で、いかに花が大きな位置を占めているかを再発見する。長い冬があるからこそ、人々はこの花の季節を愛でるように大切にするのだろう。過酷な自然の中で咲く凛とした花々に心あたたまる一冊。▼本シリーズの好評既刊『オーロラの彼方へ』『ラブ・ストーリー』『最後の楽園』『森に還る日』『大いなる旅路』もぜひ。