忠臣蔵といえばTVや芝居で毎年の恒例行事。また、来年度のNHK大河ドラマにもとり上げられた。その根強い人気の秘密は、赤穂浪士=正義、悪の勧善懲悪の図式に胸をすく思いがするからであろう。 さて、問題はその吉良上野介である。彼は本当に悪人だったのか? そうではないと著者はいう。上野介は幕府の策謀に翻弄された、悲しき犠牲者であったと。著者の推理はこうである。幕府の側用人・柳沢吉保は、自分の領地で製塩業を興そうとした。そこで当時もっとも技術の進んでいた赤穂藩の製法を探らせようと、自分の名を秘して上野介を派遣したのである。そこで、赤穂藩内における上野介に対する猜疑心が一挙に高まってしまったのである。その後の展開は周知の通りである。 著者は忠臣蔵は単に赤穂藩と吉良家だけの問題ではないという。将軍綱吉、側用人柳沢吉保、御三家、上杉家など、それぞれの思惑が複雑に絡み合った政争劇だったのである。