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夜の声

著:スティーヴン・ミルハウザー
訳:柴田 元幸

紙版

内容紹介

耳をすませば、
声が聞こえてくる

 人魚の死体が打ち寄せられた町の人々の熱狂と奇妙な憧れを描く「マーメイド・フィーバー」。夜中に階下の物音を聞きつけた妻が、隣で眠る夫を起こさずに泥棒を撃退しようとあれこれ煩悶する「妻と泥棒」。幽霊と共に生きる町を、奇異と自覚しつつもどこか誇らしげに語る「私たちの町の幽霊」。勝手知ったるはずの自分の町が開発熱でまるで迷宮のようになってしまう「近日開店」……。
 ミルハウザーといえば、細部まで緻密な描写でリアルに感じられるが、決定的にどこか変という世界が特徴である。前作『ホーム・ラン』ではその想像力は外へ外へと広がり宇宙を感じさせたが、本書で印象的なのは、内に広がる内省的なもの。「夜の声」はそれが顕著な傑作。夜中に自分の名前を呼ぶ声を聞いた旧約聖書の少年の物語を軸に、“声”を待ちわびる、時空を超えた者たちの心のうちをたどる。じつはこの短篇の原題はA Voice in the Nightと単数だが、短篇集全体の原題はVoices in the Nightと複数。つまり、一篇一篇が「声」なのである。唯一無二の世界を生み出す名人が緻密な筆致、驚異の想像力で紡ぐ八篇の声に耳を傾けていただきたい。

著者略歴

著:スティーヴン・ミルハウザー
1943年、ニューヨーク生まれ。アメリカの作家。1972年『エドウィン・マルハウス』でデビュー。『マーティン・ドレスラーの夢』で1996年ピュリツァー賞を受賞。『私たち異者は』で2012年、優れた短篇集に与えられるThe Story Prizeを受賞。邦訳に『イン・ザ・ペニー・アーケード』『バーナム博物館』『三つの小さな王国』『ナイフ投げ師』(1998年、表題作でO・ヘンリー賞を受賞)(以上、白水Uブックス)、『ある夢想者の肖像』『魔法の夜』『木に登る王』『十三の物語』『私たち異者は』『ホーム・ラン』(以上、白水社)、『エドウィン・マルハウス』(河出文庫)がある。ほかにFrom the Realm of Morpheusがある。
訳:柴田 元幸
1954年生まれ。米文学者・東京大学名誉教授・翻訳家。ポール・オースター、スティーヴン・ミルハウザー、スチュアート・ダイベック、スティーヴ・エリクソン、レベッカ・ブラウン、バリー・ユアグロー、トマス・ピンチョン、マーク・トウェイン、ジャック・ロンドンなど翻訳多数。『生半可な学者』で講談社エッセイ賞、『アメリカン・ナルシス』でサントリー学芸賞、『メイスン&ディクソン』で日本翻訳文学賞、坪内逍遥大賞を受賞。

ISBN:9784560098738
出版社:白水社
判型:4-6
ページ数:220ページ
定価:2500円(本体)
発行年月日:2021年11月
発売日:2021年11月01日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:FB