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白い骨片

ナチ収容所囚人の隠し撮り

著:クリストフ・コニェ
訳:宇京 賴三

紙版

内容紹介

撮影行為のアルケオロジー

 ナチ収容所では、囚人たち自らが秘密の写真撮影に成功していた──はたして、それらの写真はどのように見るべきか? ドキュメンタリー映像作家でもある著者は、囚人たちが命がけで隠し撮りした秘密写真を手がかりとして、それら秘密写真が撮影された現場(アウシュヴィッツ=ビルケナウ、ブーヘンヴァルト、ダッハウ、ミッテルバウ=ドーラ、ラーフェンスブリュック)に赴く。そしてマニアックなまでの正確さで場所や時刻、シャッターが切られた瞬間を探しもとめ、写真を凝視し、撮影者や被写体について掘り下げ、細部を浮かび上がらせてゆく。
 本書は、カルロ・ギンズブルグのミクロストリアの手法さながらに、ホロコーストの歴史を“無修正で”物語ることにより記憶と歴史の関係を問い直す。そしてそれは同時に、スーザン・ソンタグやロラン・バルトの写真論、クロード・ランズマンやディディ=ユベールマンらによるイメージ論を更新する「撮影行為の考古学」でもある。アネット・ヴィエヴィオルカが本書序文で「鮮烈なほど革新的な書」と称える所以だ。
 『夜と霧』や『ショア』の記憶を確かめるため、未公開資料も参照しつつ5つの収容所を実地調査した、戦慄の「写真論」。

著者略歴

著:クリストフ・コニェ
ドキュメンタリー映像作家、脚本家。1966年、マルセイユ生まれ。パリ第三大学で映画学を学び、以後映画制作の道を歩む。映像作品としては1994年の『天才たちの声』をはじめ、主としてドキュメンタリー映画が10数本ある。主要作品に『私は画家だったから』(2013年)、『ボリスのアトリエ』(2004年)、『オーソン・ウェルズのドミニシ事件』(2000年)など。『私は画家だったから』は、2014年にラ・ロシェルのドキュメンタリー・フェスティバルでグランプリを受賞し、他の6本も各地の国際フェスティバルでノミネートされている。最新作には、本書と同時並行して制作された『盲目の足取りで』(2021年公開予定)があり、著者自身が登場し、秘密写真が隠し撮りされた各収容所を探索し、そのプロセスを映像で見せる。1時間50分の、すぐれたドキュメンタリーである。
訳:宇京 賴三
1945年生まれ。三重大学名誉教授。フランス文学・独仏文化論。著書:『フランス―アメリカ―この〈危険な関係〉』(三元社)、『ストラスブール―ヨーロッパ文明の十字路』(未知谷)、『異形の精神―アンドレ・スュアレス評伝』(岩波書店)、『仏独関係千年紀―ヨーロッパ建設への道』(法政大学出版局)、訳書:トラヴェルソ『ユダヤ人とドイツ』(法政大学出版局)、同『ヨーロッパの内戦 炎と血の時代1914-1945年』(未來社)、同『左翼のメランコリー―隠された伝統の力 一九世紀〜二一世紀』(法政大学出版局)、オッフェ『アルザス文化論』(みすず書房)、同『パリ人論』(未知谷)、フィリップス『アイデンティティの危機』(三元社)、同『アルザスの言語戦争』(白水社)、リグロ『戦時下のアルザス・ロレーヌ』(白水社)などがある。

ISBN:9784560098141
出版社:白水社
判型:4-6
ページ数:528ページ
定価:7000円(本体)
発行年月日:2020年12月
発売日:2021年01月04日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:NHD
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:1DFG