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古代ローマ人は皇帝の夢を見たか

アルテミドロス『夢判断の書』を読む

著:ピーター・トーネマン
訳:藤井 千絵
監:藤井 崇

紙版

内容紹介

当時の庶民の等身大の姿を生き生きと描き出す

 1972年、イギリスのある作家が多数のインタビューに基づいて、「国民の三分の一までが王室に関する夢を見たことがある」という結論を導き出した。古代ローマ人は、はたして20世紀のイギリス人のように、皇帝と食事をする夢を見たのか?
 アルテミドロスは、2世紀末~3世紀初めのローマ帝国を生きた小アジア出身のギリシア人で、5巻からなる『夢判断の書』を著した。これは、古典古代の夢と夢判断の実態を伝える、唯一現存する書物で、フロイトやフーコーが大きな関心を寄せた。本書は、これを同時代の社会、文化、宗教に位置づけながら、当時の人々の希望と不安、またその前提となった価値観――身体と自然の捉え方、ジェンダー観、宗教、そして、首都ローマから遠く離れたギリシア文化圏の都市の住民にとって、帝国とは何だったのか――を読み解く。
 古代ローマで著述をした人物としては例外的に、アルテミドロスは高度な教養を備えた知識人ではなく、ギリシアの属州エリートの平均的な教養をもち、庶民や奴隷、上流階層出身の運動選手を顧客とした。『夢判断の書』からは、概説書で描かれるものとはまったく違ったローマ帝国の姿が現れるのである。

目次

 地図 
第1章 蛇と鯨 
第2章 アルテミドロスと『夢判断の書』 
第3章 夢判断の方法 
第4章 身体 
第5章 セクシュアリティとジェンダー 
第6章 自然界 
第7章 夢の都市 
第8章 書物と文芸 
第9章 神々 
第10章 祭礼と見世物 
第11章 地位と価値観 
第12章 見えない帝国 
エピローグ 中世以降のアルテミドロス 
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 文献索引

著者略歴

著:ピーター・トーネマン
Peter Thonemann
オクスフォード大学古典学部の古代史教授。専門はヘレニズム史、ローマ史、ギリシア語刻文学。文芸・文化批評誌The Times Literary Supplementの執筆者。著書は他に、The Maeander Valley: A Historical Geography from Antiquity to Byzantium (2011)、The Hellenistic Age (2016)など。本書が初の邦訳。
訳:藤井 千絵
京都大学文学部、大阪外国語大学外国語学部卒業、インペリアル・カレッジ・ロンドン修了(翻訳学)。翻訳会社の社内校正者・翻訳者としての勤務を経て、現在、ワイン、観光、人文系分野の英語・スペイン語翻訳に従事。訳書として、キャロリン・パーネル『見ることは信じることではない――啓蒙主義の驚くべき感覚世界』(白水社)。
監:藤井 崇
京都大学文学部卒業、京都大学大学院文学研究科修士課程修了、ハイデルベルク大学哲学部博士課程修了(Dr. phil.)。専門はヘレニズム史、ローマ史、ギリシア語刻文学。京都大学大学院文学研究科西洋史学専修准教授。
主要著訳書
Imperial Cult and Imperial Representation in Roman Cyprus (Franz Steiner)、『古代地中海の聖域と社会』(共著、勉誠出版)、『歴史の転換期1 B.C. 220年』(共著、山川出版社)、『論点・西洋史学』(共編著、ミネルヴァ書房)『生き方と感情の歴史学』(共著、山川出版社)、『岩波講座 世界歴史3 ローマ帝国と西アジア』(共著、岩波書店)、クリストファー・ケリー『1冊でわかるローマ帝国』(岩波書店)

ISBN:9784560094921
出版社:白水社
判型:4-6
ページ数:344ページ
定価:3800円(本体)
発行年月日:2023年03月
発売日:2023年03月27日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:VSP