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裏切りの王国 ルポ・英国のナショナリズム

著:服部 正法

紙版

内容紹介

グローバリズムが進展し、経済格差が急速に広がるなか、各地でナショナリズムの胎動が表面化し、事象として現れ始めている。本書は、EU離脱で揺れた英国を舞台に、世界の政治を駆動する大きな潮流となったナショナリズムの発露を現場から報告する試みである。
著者は毎日新聞の前欧州総局長。場末のパブで飲んでいる労働者・移民からケンブリッジの研究者や閣僚経験者に至るまで、取材対象は実に多彩だ。こうした人びとの意見を聞き、彼らと対話を重ねる著者の取材ぶりと、さまざまな文献にあたって検証する様子を追体験することで、英国理解が徐々に深まっていく。加えて、英国の政治が具体的にどのように運営されているかや、世論の動向をつぶさに追っているため、賛成・反対の揺れ具合が手に取るようにわかる。
「ブレグジット以前」と「ブレグジット以後」の二部構成で、EUに「裏切られた」という庶民の声、イングランドに「裏切られた」と感じるスコットランドなど、ネイションに息づく思いや歴史観を描きながら、EUを「裏切った」英国のナショナリズムの動態を、多方面にわたるインタビューと精緻な歴史検証で描いた渾身のルポ。

目次

第1部 ブレグジット以前
1 移民という「記号」
2 「保険」としてのEU
3 揺れる北アイルランド
4 「カフカ的」な議会攻防
5 極右過激派の台頭
6 英政界の二人の異端
7 労働者の支持を失った労働党
8 宗派で分断された投票
9 保守党圧勝
10 浮上する「アングロスフィア」
11 離脱が駆り立てる独立
12 チャーチルの振り子

第2部 ブレグジット以後
13 コロナが露呈した英国の問題
14 香港問題とファイブアイズの結束
15 終わらぬブレグジット、「第二幕」の幕開け
16 加速する欧州離れ、もう一つの「離脱」
17 議会主権と国制改革
18 英国のインド太平洋「回帰」
19 暴動噴き出す北アイルランド
20 二つのナショナリズム
21 重い二十一世紀の「革命」
22 移民とLGBTを「敵」とするロジック
23 血の日曜日、ソウェト蜂起、国家の暴力

エピローグ/あとがき/参考・引用文献

著者略歴

著:服部 正法
毎日新聞編集長補佐。1970年、愛知県生まれ。早稲田大学第一文学部史学科卒業(東洋史学専修)。NHKディレクター、テレピ番組制作会社契約社員を経て、99年、毎日新聞入社。奈良支 局、大阪社会部、大津支局などを経て、2012年4 月~16年3月、ヨハネスブルク支局長。2019年4 月~22年3月、欧州総局長。著書に「ジハード大陸一「テロ最前線」のアフリカを行く』(白水社)がある。

ISBN:9784560094853
出版社:白水社
判型:4-6
ページ数:314ページ
定価:2400円(本体)
発行年月日:2023年06月
発売日:2023年06月19日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JPF
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:QDTS