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国境を越えるためのブックガイド50

編:小川 忠

紙版

内容紹介

本書は一般的な意味でのブックガイドとは異なる。
本書は、日本最大の公的国際交流機関である、国際交流基金の職員が、自分たちの「愛読書」を取り上げ、それらを通じて、国際文化交流に懸ける自らの思いを語っている。
今、世界は著しく変化している。
ウクライナ戦争やコロナ禍、新冷戦はじめ、国際社会において対立が深まり、人類が悲惨な戦争の教訓から得た国際協調の精神が大きく揺らいでいる。
そもそも、グローバリゼーションの時代にあって国境を越えることが容易になったと考えられていたが、私たちは本当に〈越境〉していたのだろうか? ただ、自己の意識を肥大化させていただけではないのか? はたして他者と出会っていたのか?
これが本書の問題関心である。
加速し続ける現代社会において、私たちは立ち止まって、じっくり考えることができなくなっている。
しかし、複雑化し続ける今の社会において本当に求められているのは、より長いスパンで社会を見通す目ではないだろうか。
「書評=ブックガイド」という方法を取ることで、こうしたより根源的な問いにアプローチすることができる。国境を越えて生きるための50冊!

目次

第Ⅰ章 文化交流の現場で、他者と出会う
1 「小さな民」の世界へ 下山雅也
  村井吉敬『インドネシア・スンダ世界に暮らす』
2 ハルキのむこうに「日本」が見える 本田修
  国際交流基金企画『世界は村上春樹をどう読むか』
3 自分だけの真実 原秀樹
  ミア・カンキマキ『清少納言を求めて、フィンランドから京都へ』
4 灯台下暗し 吉岡憲彦
  藤子・F・不二雄『ドラえもん』
5 本が国境を越えるまで 野崎浩司
  辛島デイヴィッド『文芸ピープル』
6 インドで日本をにじませて 夫津木美佐子
  黒柳徹子『窓ぎわのトットちゃん』
7 日本文化を相対的に考えてみること 田村彩
  加藤周一『日本文化における時間と空間』
8 越境者たちの交叉 山田慶太
  エレン・リー『アフリカン・ロッカーズ』
9 個と個がつなぐ可能性のネットワーク 阿部夏実
  清水展ほか編『職場・学校で活かす現場グラフィー』
10 できるだけあわせて、逆らわない 松岡裕佑
  ジル・クレマン『動いている庭』
11 インドを知る、深く知る 田中洋二郎
  ウルワシ・ブターリア『沈黙の向こう側』
12 日系人が教えてくれたこと 瀧田あゆみ
  ジェイミー・フォード『あの日、パナマホテルで』
13 四十年前の「基礎研究」の有難味 久保田淳一
  辻村明ほか編『世界は日本をどう見ているか』
14 終わらない物語を読もう 野崎浩司
  ハーマン・メルヴィル『白鯨』
15 その灯火は消えたのか 玄田悠大
  与那原恵『赤星鉄馬 消えた富豪』
16 まちの文脈を歩く 玄田悠大
  富永健一『近代化の理論』
17 ドライブ・マイ・カー 吉岡憲彦
  ウィニッチャクン『地図がつくったタイ』
18 異文化の中で生きていくこと 嶋根智章
  ヨシ笈田『俳優漂流』
19 「歌舞伎」から何が見えるか? 本田修
  河竹登志夫『舞台の奥の日本』
20 他者と出会うこと 嶋根智章
  平田オリザ『芸術立国論』
第Ⅱ章  歩きながら、私は何者かを考える
21 あなたにとって、友人とは誰か? 後藤愛
  デール・カーネギー『人を動かす』
22 一粒のガラスを集める 桑原輝
  シーダーオルアン『一粒のガラス』
23 村上春樹さんについて語るときに僕の語ること  小出哲也
  村上春樹『走ることについて語るときに僕の語ること』
24 国境を越える美食 加藤華子
  東京ディープチャイナ研究会『攻略! 東京ディープチャイナ』
25 国や言語の差異を薄めるのは? 高口真法
  カズオ・イシグロ『Never Let Me Go』
26 人の心の中に平和の砦を築く 小出哲也
  サンテグジュペリ『星の王子さま』
27 白石顕二を追いかけて 井上遼
  白石顕二『アフリカ映画紀行』
28 『ONE PIECE』国際交流論 コイ・D・テツヤ
  尾田栄一郎『ONE PIECE』
29 国際交流は“問答有用”な人生から 土井克馬
  加藤典洋『考える人生相談』
30 隣国の文学の手ざわり 井上遼
  ハン・ガン『菜食主義者』
31 その国をどう理解するか——少しの好奇心の大切さ 島田靖也
  伴美喜子『マレーシア凛凛』 
32 歴史と記憶——負の歴史とどう向き合うか 島田靖也
  キャロル・グラック『戦争の記憶 コロンビア大学特別講義』 
33 越境する文化 木村英里菜
  和田誠・村上春樹『ポートレイト・イン・ジャズ』
34 Outsider Within 松田/胡英亮
  温又柔『真ん中の子どもたち』
第Ⅲ章 人と人がつながる。人間とは何か
35 現実をまなざすことの困難 井上遼
  四方田犬彦『見ることの塩』
36 揺らぐ境界線、「わたし」と出会い直す 阿部夏実
  松村圭一郎『はみだしの人類学』
37 相互理解という深淵へのまなざし 鈴木勉
  スーザン・ソンタグ『他者の苦痛へのまなざし』
38 戦争文学からのメッセージ 竹下潤
  L・ヴァン・デル・ポスト『影の獄にて』
39 「個人」と「国家」の狭間で 原秀樹
  ロジャー・パルバース『僕がアメリカ人をやめたワケ』
40 芸術の人をつなぐ力を信ぜよ 佐藤幸治
  アラ・グゼリミアン編『バレンボイム/サイード 音楽と社会』
41 文化交流は「国」を越えるか? 山本訓子
  西川長夫『国境の越え方』
42 原風景へのまなざし 玄田悠大
  オギュスタン・ベルク『日本の風景・西欧の景観』
43 「対話」を捉えなおす 久保田淳一
  斎藤環・水谷緑『やってみたくなるオープンダイアローグ』
44 自粛の時代を見通す 石井晋平
  ノーマ・フィールド『天皇の逝く国で』
45 知と学びをつなぐ——私の文化国際主義 金子聖仁
  入江昭『権力政治を超えて』
46 国際文化交流にとっての「文化」とは? 久保田淳一
  芝崎厚士『近代日本と国際文化交流』
47 さよなら「島国」ニッポン 原秀樹
  ドナルド・キーン『日本を寿ぐ』
48 「国境を越える」交流を考える仕事 関友哉
  加藤幹雄『文化交流は人に始まり、人に終わる』
49 人間とはなにか? 田中洋二郎
  ヴィクトール・フランクル『夜と霧』
50 「やさしい日本語」は国境を越えるか 林義燦
  庵功雄ほか編『「やさしい日本語」は何を目指すか』
終章 「国境を越える」意味を再考する 小川忠
あとがき

著者略歴

編:小川 忠
跡見学園女子大学文学部教授。国際交流基金に1982年から2017年まで勤務。『テロと救済の原理主義』(新潮選書)、『戦後米国の沖縄文化戦略』(岩波書店)他

ISBN:9784560094518
出版社:白水社
判型:4-6
ページ数:204ページ
定価:2000円(本体)
発行年月日:2022年10月
発売日:2022年10月03日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JPS