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ジェイムズ・ボールドウィンのアメリカ

「もう一度始める」ための手引き

著:エディ・S・グロード・ジュニア
訳:秋元 由紀

紙版

内容紹介

1960年代末から70年代にかけてボールドウィンは、アメリカという国が、マルコムXや非暴力を唱えていたキング牧師さえも殺害し、黒人解放運動を袖にする様子を目の当たりにした。公民権運動が盛り上がりを見せ、一時は希望と期待に胸膨らませたが、結局これまでと変わらぬ白人優位の体制を選んだことを思い知らされ、深い幻滅と絶望を味わったのだ。
アフリカン・アメリカン研究の分野をリードする著者は、ボールドウィンの足跡と数ある作品の中から、当時の暗澹たる状況に彼がどう向き合ったかを探り出した。初の黒人大統領が誕生し、今度こそアメリカは変わると思われたすぐ後でトランプ政権に代わり、白人至上主義が再燃するような今の危機的状況にこそ、ボールドウィンの作品と当時の発言を振り返り、もう一度始めるためのヒントを探る意義があると考えたからだ。
都合よく解釈され語り継がれてきた「アメリカ」という物語を噓と断じたうえで、ボールドウィンの意図することとその背景にあるものを深く掘り下げ、当時と今を行き来しながら、われわれが直面する人種問題、ひいてはアメリカという国のありようについて論じた魂の書である。

目次

 はじめに──ジミーと考える
第一章 アメリカの噓
第二章 証言
第三章 危険な道
第四章 仕切り直し
第五章 異郷
第六章 残骸
第七章 もう一度始める
結論  新しいアメリカ
 著者による注釈/謝辞/訳者あとがき

著者略歴

著:エディ・S・グロード・ジュニア
Eddie S. Glaude Jr.
プリンストン大学教授、同大学アフリカン・アメリカン研究学科長。1968 年生まれ。モアハウス・カレッジ卒業後、テンプル大学で修士号(アフリカン・アメリカン研究)、プリンストン大学で博士号取得(宗教学)。ボウディン・カレッジ教授、ハーヴァード大学客員研究員などを経て現職。『タイム』誌のコラムニストを務めるほか、テレビやラジオへの出演も多い。本書(Begin Again)のほか、著書に Democracy in Black: How Race Still Enslaves the American Soul(2016)、African American Religion: A Very Short Introduction(2014)、Exodus!:Religion, Race, and Nation in Early Nineteenth-Century Black America(2000)、共編著に African American Reli- gious Thought: An Anthology(2003)などがある。
訳:秋元 由紀
翻訳家、米国弁護士。著書に Opportunities and Pitfalls: Preparing for Burma’s Economic Transition(Open Society Institute, 2006)、訳書にイザベル・ウィルカーソン『カースト』(岩波書店)、イアン・ジョンソン『信仰の現代中国』、アリ・バーマン『投票権をわれらに』、マニング・マラブル『マルコムX(上下)』、コーネル・ウェストほか『コーネル・ウェストが語る ブラック・アメリカ』、ウェイド・デイヴィス『沈黙の山嶺(上下)』、タンミンウー『ビルマ・ハイウェイ』(第 26 回アジア・太平洋賞特別賞受賞)、ベネディクト・ロジャーズ『ビルマの独裁者 タンシュエ』(以上、白水社)がある。

ISBN:9784560093771
出版社:白水社
判型:4-6
ページ数:310ページ
定価:4200円(本体)
発行年月日:2023年09月
発売日:2023年09月13日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JPF
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:JBF