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エクス・リブリス

フォレスト・ダーク

著:ニコール・クラウス
訳:広瀬 恭子

紙版

内容紹介

見失った自分と向き合い
変容を遂げる再生の物語

 ニューヨークで暮らす作家のニコールは、仕事も家庭生活もスランプに陥っている。閉塞感のなか、現実だと思っているいまの暮らしは夢なのではないかと思いつめ、かつて現実と非現実が交錯する経験をしたテルアビブのホテルに飛ぶ。ひょんなことから”イスラエルでのカフカの第二の人生”にまつわる仕事を依頼され、夢と現実が交錯する体験をすることに。一方、同じくニューヨークで弁護士として成功してきたエプスティーンは、高齢の両親を相次いで亡くしたことから、盤石なはずの人生にふと疑問を感じるようになる。仕事にも趣味にも精力を注ぎ人生を謳歌するうちに、なにか大事なものを見落としてきたのではないか? 彼はすべてを捨て、生まれ故郷テルアビブへと旅立つ。
 自分探しなど、若者の専売特許と言うなかれ。長く生きてきた大人だからこそ、人生の分かれ道で選択を重ねていくうちに、自分自身を見失ってしまうこともある。本書後半、それぞれの自身と向き合う荘厳な砂漠の場面は、何かが昇華されるような爽快感がある。喪失と変容をめぐる瞑想を、深い洞察と挑戦的構成で描く大人の自分探し。柴田元幸氏推薦!

著者略歴

著:ニコール・クラウス
1974年、ニューヨーク生まれ。十代から詩作を始め、スタンフォード大学在学中に詩人ヨシフ・ブロツキーに出会い師事。2002年の長篇デビュー作『2/3の不在』がロサンゼルス・タイムズ文学賞の最終候補作となり、一躍注目を集める。『ヒストリー・オブ・ラブ』(2005)はサローヤン国際文学賞とフランス翻訳小説賞を受賞、Great House(2010)は全米図書賞の候補作、オレンジ賞の最終候補作に選出された。2017年発表の本書『フォレスト・ダーク』は構造・テーマともさらに深めた意欲作で、「これまでの長篇のなかでも最も核心に迫る」と高く評された。初の短篇集To Be a Man(2020)はウィンゲート文学賞を受賞。《ニューヨーカー》《アトランティック》《ハーパース》《エスクァイア》などに短篇を発表しており、『ベスト・アメリカン・ショート・ストーリーズ』にも収録多数。クラウスの作品は、これまでに37カ国語に翻訳されている。2020年、コロンビア大学ザッカーマン神経科学研究所初のライター・イン・レジデンスとなる。2021年には優れたユダヤ文学に贈られるサミ・ロア賞を受賞。
訳:広瀬 恭子
翻訳家。国際基督教大学卒業。主な訳書にブライアン・フェイガン『若い読者のための考古学史』(すばる舎)など。

ISBN:9784560090763
出版社:白水社
判型:4-6
ページ数:316ページ
定価:3600円(本体)
発行年月日:2022年08月
発売日:2022年08月29日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:FB