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土と肥やしと微生物

武蔵野の落ち葉堆肥農法に学ぶ

著:犬井 正

紙版

内容紹介

東京近郊の北武蔵野には、化学肥料に頼らない落ち葉堆肥農法が、新田開発以来360年後の今も継承されており、首都圏に供給する野菜の持続的な生産を支えている。この「武蔵野の落ち葉堆肥農法」が、近くFAOの世界農業遺産に登録される見込みであり、「土づくりを基礎とする世界でも稀有な農耕文化」として新たに評価されている。
「大都市近郊の奇跡」ともいえるこの農法の価値を土壌生態学の最新知見や江戸期の都市と周辺農村の物質循環、欧州の農業近代化の流れをふまえ、世界的な「土と堆肥の自然力」の低下との関係から考察する。

目次

まえがき
序 章 農業と土と肥やしと微生物 
  農と土
  必須元素・微量要素と土の構造と成分
  土と肥やしと微生物
  リービッヒの「無機栄養説」と堆肥の役割
  土と肥やしの力を侮るな
  農業生態系の変容と武蔵野の落ち葉堆肥農法
  本書の構成
第1章 田んぼと刈敷の力 
  稲作に対する固定観念
  水田稲作の伝播と土壌
  イネの連作を支える水田土壌
  刈敷などの緑肥
  畔は満鮮要素の草原
  谷津の環境は自然の宝庫
  早春の谷津田の生き物たち
  谷津田・ため池・ヤマはセット
  刈敷と農耕馬
  ゲンゲと金肥
  田んぼと肥やしの危機
第2章 江戸・東京の糞尿はどこへ
  下肥の効用と便所
  江戸地廻り経済と江戸「糞尿圏」
  江戸の下肥と葛西船
  舟運による「江戸糞尿圏」の拡大
  近郊農業の発展と「東京糞尿圏」
  鉄道による糞尿の運搬
  糞尿処理と下水道整備
  水質保全に向けて
  どうする、あふれる窒素
  まさかの海と湖の「貧栄養化」
  汚泥が救うか土と肥やしの危機
第3章 今に息づく武蔵野の落ち葉堆肥農法
  武蔵野の開拓
  三富新田の成立と短冊形地割
  不良土の黒ボク土と空っ風
  台地・丘陵上の平地林
  落葉広葉樹林の落ち葉生産
  ヤマ仕事の季節
  堆肥を求める土と作物
  萠芽更新と農用林
  平地林、雑木林、里山
  地力を育む「ツクテ」の力
  腐食連鎖と土壌圏の多様性
  落ち葉を持ち去られた平地林の栄養物循環
  サツマイモ苗のウイルス障害と基腐病
  落ち葉堆肥農法による生物多様性の保持
  東京近郊の平地林の減少
第4章 西欧農業、厩肥から化学肥料へ
  ヨーロッパの平地林とその利用
  三圃式農業による地力維持
  輪栽式農業と厩肥利用の増大
  テーアの有機栄養説
  リービッヒの無機栄養説
  無機肥料の出現と化学肥料の普及へ
  現代の農業と環境
  ハワードを起点とした有機農業
  持続的農業と土と化学肥料
終 章 世界農業遺産、武蔵野の落ち葉堆肥農法に学ぶ 
  土と農と食のワン・ヘルス
  緑の革命から世界農業遺産へ
  持続的農業と土と肥やし
  落ち葉堆肥による地力増強を世界に
あとがき 
引用・参考文献リスト
事項・人名索引

ISBN:9784540231513
出版社:農山漁村文化協会
判型:4-6
ページ数:324ページ
定価:2200円(本体)
発行年月日:2023年09月
発売日:2023年09月16日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:TVB
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:TVBP
国際分類コード【Thema(シーマ)】 3:TVF