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長良川のアユと河口堰

川と人の関係を結びなおす

編:蔵治 光一郎

紙版

内容紹介

かつて、川には、人々の生活が息づいていた。夏の水辺は、水遊びの子供達でいっぱいだった。私達は、この国の自然に生かされ、文化を育み、時を繋いで来たのではなかったか。
山口 保(木彫工房メリーゴーランド)

いつのまにか川は、ただの水路となり、山は無価値なものとして、打ち捨てられてしまった。いずれ「バチ(罰)が当たる」と、祖母の言葉を思い出した。
山口一郎(サカナクション)

日本三大清流に数えられる長良川は、本州の大河で唯一本流にダムと堰のない川と言われ、山・川・海の連続した生物圏の上に豊かな水文化が育まれてきた。アユをはじめ海と川を回遊する生き物、汽水域で生活する生き物は長良川の大切な恵みであり、川の生物圏の連続性、持続可能性の指標だが、河口堰はその営みを分断した。2015年、長良川の天然アユは岐阜市で準絶滅危惧種に指定(後に削除)、「清流長良川の鮎」が世界農業遺産に認定された。本書は、生物多様性の喪失が地球の限界を超えている時代に、川の生物圏を再生し、社会や経済の基盤として復権させ、川と人の関係を結びなおす可能性を探る。



〈本書の構成〉
はじめに――世界農業遺産、日本三大清流のアユは語る………蔵治光一郎
Ⅰ 長良川の恵みと なりわい今昔 ………………………………岩佐昌秋/中山文夫/大橋亮一/平工顕太郎
Ⅱ 長良川のアユと生態系に起きていること……………………高橋勇夫/古屋康則/向井貴彦/原田守啓
Ⅲ ふたたび、いのち幸ふ川へ――河口堰という試金石………蔵治光一郎/小島敏郎/今本博健/藤井智康/鈴木輝明/富樫幸一/伊藤達也
Ⅳ 河口堰の最適運用に向けて……………………………………武藤 仁/青山己織/伊藤達也
おわりに――近くて遠い川と人の関係を結びなおすために……蔵治光一郎
【付録】それが「長良」やがね……………………………………大橋亮一/尾瀬妃那実

カバー・表紙画 村上康成



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目次

口絵
はじめに――世界農業遺産、日本三大清流のアユは語る  蔵治光一郎
SDGsとアユと河口堰(相関図)
木曽三川(木曽川、長良川、揖斐川)流域図

Ⅰ 長良川の恵みとなりわい今昔

長良川の鵜飼の奥深い世界  岩佐昌秋
最後の1艘で守る夜川網漁  中山文夫
80歳現役漁師が見た「ばばちい川」  大橋亮一
憧れの川漁師、知られざる川の世界  平工顕太郎
【付記】その後の長良川  平工顕太郎

Ⅱ 長良川のアユと生態系に起きていること

なぜ天然アユが準絶滅危惧種に?  高橋勇夫
長良川のアユと河口堰  古屋康則
【コラム】長良川のアユを支える揖斐川のアユに異変  古屋康則
河口堰による生態系の変化  向井貴彦
【コラム】過剰な放流は魚類を減らし、自然を失わせる  向井貴彦
温暖化が長良川にもたらしたもの  原田守啓

Ⅲ ふたたび、いのち幸ふ川へ――河口堰という試金石

長良川に「健全な水循環」を取り戻す  蔵治光一郎
なぜ今、河口堰の「最適運用」なのか  小島敏郎
気候変動と大地震に備える  今本博健
長良川治水の「これまで」と「これから」  今本博健
河口堰開門で塩水はどこまで遡上するか  藤井智康
伊勢湾の漁業・環境と河口堰  鈴木輝明
社会経済構造の変化に対応した水の使い方  富樫幸一
異常渇水にも対応できる新しい水利用秩序へ  伊藤達也

Ⅳ 河口堰の最適運用に向けて

世界の河口堰の先進事例に学ぶ  武藤 仁・青山己織
【コラム】福原輪中の塩害を防ぐ「アオ取水」  伊藤達也

おわりに――近くて遠い川と人の関係を結び直すために  蔵治光一郎
源流遊行絵図
【付録】それが「長良」やがね  大橋亮一・尾瀬妃那実
主な参考文献
年表――世界の環境問題と長良川
執筆者一覧


カバー・表紙画 村上康成

著者略歴

編:蔵治 光一郎
蔵治光一郎(くらじ・こういちろう) 1965年東京都生まれ。1996年東京大学大学院農学生命科学研究科森林科学専攻博士課程修了。博士(農学)。東京大学大学院農学生命科学研究科教授。専門は森林水文学。矢作川森の研究者グループ共同代表、愛知県長良川河口堰最適運用検討委員会委員、水循環基本法フォローアップ委員会座長など務める。

ISBN:9784540231278
出版社:農山漁村文化協会
判型:A5変
ページ数:232ページ
定価:2200円(本体)
発行年月日:2024年03月
発売日:2024年03月11日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:PSAF
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:RNKH
国際分類コード【Thema(シーマ)】 3:WNCS
国際分類コード【Thema(シーマ)】 4:SVF