年報 村落社会研究 55
小農の復権
編:日本村落研究学会
内容紹介
オランダのプルフを初めとする研究グループは、欧州の6ケ国3264人の農業者を対象とした調査から、対象者全体の83%にあたる農業者が、「多角化」、「高付加価値化」、「地域資源の有効利用/に根ざす」の少なくともいずれかひとつの戦略を実行していることをあきらにした。EUの農業者らが現代を生き抜くために実際に採用している戦略が「再小農化」である。本集の目的は、日本農業が、どこまでこの「新しい小農層」の議論と状況を共有し、どこが固有の特徴として独自の論点を提起するのかについて、明らかにすることである。
目次
序 世界農業の転換を照らす「小農」の再評価 秋津元輝
第一章 小農再評価の国際的状況と日本の動向 Steven R. McGreevy/松平尚也
一 小農概念のグローバルな再評価
二 小農再評価の日本の動向の検討
第二章 農業・農村担い手の多様性と小規模農家の意義
――農業集落に視点を当てた二〇一五年農林業センサスの分析から―― 橋詰 登
一 はじめに
二 農家の現状と動向
三 農業集落の変容と集落機能
四 「農業担い手」の賦存状況と集落活動
五 おわりに
第三章 複合して生きる暮らし――現代における小農の社会的特質―― 靏 理恵子
一 はじめに
二 調査地の概況および事例の紹介
三 東和地区の農業と暮らしのかたち
四 まとめ
第四章 環境保全における小農とムラ
――「魚のゆりかご水田プロジェクト」から―― 川田美紀
一 社会の変化と社会における農業の位置づけ
二 滋賀県の農業の特色と環境政策
三 各地区における魚のゆりかご水田プロジェクトの取り組み
四 環境保全と小農
第五章 農家経営のもとでの有機農業の面的展開
――山形県高畠町露藤集落「おきたま興農舎」の事例から―― 中川 恵
一 はじめに
二 有機農業の「転換」と露藤集落の農家経営
三 有機農業「転換」とおきたま興農舎
四 まとめ
終章 日本における「小農」再評価の位相 秋津元輝
一 再小農論の理論的特徴
二 過去の論点を振り返る
三 新しい小農層の具体的存在根拠
四 未来の農業像の転換にむけて
【研究動向】
史学・経済史学の研究動向 湯川郁子
農業経済学の研究動向 桑原考史
社会学・農村社会学の研究動向 荒川 康
第六十六回村研大会記事
編集後記
ISBN:9784540191138
。出版社:農山漁村文化協会
。判型:A5
。ページ数:264ページ
。定価:5400円(本体)
。発行年月日:2019年11月
。発売日:2019年11月08日。