腫瘤から⾮腫瘤性病変まで多彩な所⾒を呈し,悪性度の高い癌へ進展する傾向をもつ⾮浸潤性乳管癌(DCIS)について,⽇本乳腺甲状腺超⾳波医学会(JABTS)による多施設研究から収集・厳選された88の症例の超⾳波画像を掲載し,マンモグラフィやMRI,病理組織像も交えて,その⾒極め⽅を解説.典型例と多様なバリエーション例を網羅することで,DCISの画像所⾒と病理組織との関連性を正しく捉え,深く理解できるアトラス書.
【序文】
 医学の進歩と共に,乳癌診療における超音波検査の役割はますます重要になっています.乳癌は女性の中で最も多い癌ですが,早期に発見することによって治癒する可能性が非常に高い疾患でもあります.非浸潤性乳管癌(ductal carcinoma in situ:DCIS)は日本の乳癌の15%程度を占めており,将来的に浸潤癌へ進行する可能性があるため,正確な診断と適切な治療が求められます.しかし,DCISの超音波画像はバリエーションに富んでおり,腫瘤から非腫瘤性病変に至るまで非常に多彩です.この多彩さが,乳房超音波検査でのDCIS診断を複雑にしています.本書はこの問題に応えるために企画されましたが,日本乳腺甲状腺超音波医学会(JABTS)で行われたDCISの超音波画像に関する多施設研究(JABTS BC‒02研究)が契機となっています.本書には多くの施設から厳選収集された88例のDCIS症例の超音波画像が収録されています.必要に応じてマンモグラフィやMRI,病理組織像が掲載されており,各症例には解説もついています.これらの症例を通じて,DCISの超音波における幅広い画像バリエーションを目の当たりにすることにより,その特徴と病理組織との関連性を深く理解することができるでしょう.また,DCIS診断におけるポイントを学ぶことで,臨床現場での診断能力の向上が期待されます.
 乳腺専門医はもちろん,超音波検査士,そして乳房超音波を学ぶすべての医療従事者にとって,本書が貴重な学習資料となり,DCISの診断における洞察と理解を深める手助けとなることを願っています.また,最新の研究と臨床経験を基に編纂された本書が,読者の皆様の専門知識の向上と患者へのより良い診療に貢献することを心から願っております.この分野におけるあなたの学びと成長を支援するために本書を手に取っていただき,その内容を深く掘り下げていただければ幸いです.あなたの専門性を磨く旅の中で,本書が一助となりますように.
 末筆になりますが,BC‒02研究に参加してくださった施設の皆様,ならびに本書の執筆者の先生方に深謝いたします.特に,病理の項を執筆いただいた森谷鈴子先生にはオリジナルのわかりやすいシェーマで解説いただき,感謝申し上げます.
2024年9月
「DCIS乳房超音波画像アトラス」作成小委員会
委員長 渡辺隆紀