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魯迅と世界文学

著:藤井 省三

紙版

内容紹介

東アジア共通の文化遺産でありモダン・クラシックである魯迅文学を、作家たちはどのように受容し作品へと昇華させていったのか。魯迅-松本清張-莫言という「ミステリー」の系譜、魯迅-莫言という「故郷」の系譜、そして莫言・張愛玲・村上春樹と魯迅との色濃い影響関係を探り、ヨーロッパ文学を交えながら魯迅文学における女性問題の分析および政治的危機と不倫のテーマを考察する。国や時代を越えグローバルな時空から、魯迅文学や東アジア作家による魯迅読書体験を読み解く論文集。

目次

第一部 魯迅と世界文学
第一章 東アジアのミステリー/メタミステリーの系譜
――松本清張『眼の壁』と莫言『酒国』および魯迅「狂人日記」
第二章 莫言が描く中国の村の希望と絶望
――「花束を抱く女」等の帰郷物語と魯迅および『アンナ・カレーニナ』
第三章 俯く女たちの家出
――張愛玲「傾城の恋」と魯迅「愛と死」およびバーナード・ショー『傷心の家』
第四章 魯迅と劉吶鷗
――〝戦間期〟上海における『猺山艶史』『春蚕』映画論争をめぐって

第二部 恋愛世界―― 紐約の恋から東亜の『安那・卡萊尼娜』まで
第五章 胡適とニューヨーク・ダダの恋
――中国人のアメリカ留学体験と中国近代化論の形成
第六章 車中の裏切られる女
――張愛玲「封鎖」におけるモーパッサン「脂肪の塊」の反転
第七章 莫言と村上春樹
――あるいは天安門事件の『アンナ・カレーニナ』

第三部 村上春樹における家族の不在と戦争の記憶
第八章 中国の村上チルドレンと村上春樹小説の「家族の不在」
――衛慧、アニー・ベイビーにおける「小資」文学の展開をめぐって
第九章 「レキシントンの幽霊」におけるアジア戦争の記憶
――村上春樹〝デタッチメント〟時代の終わりをめぐって
第一〇章 村上春樹の中の「南京事件」
――『騎士団長殺し』における中国

著者略歴

著:藤井 省三
1952年生まれ。東京大学名誉教授。現在、南京大学海外人文資深教授および名古屋外国語大学教授。専攻は現代中国語圏の文学と映画。著書に『魯迅と日本文学 漱石・鷗外から清張・春樹まで』『中国語圏文学史』(以上、東大出版会)、『村上春樹のなかの中国』(朝日新聞社)など。訳書に魯迅短編集『故郷/阿Q正伝』、張愛玲短編集『傾城の恋/封鎖』(光文社古典新訳文庫)、莫言『酒国』(岩波書店)、李昂『夫殺し』(宝島社)、鄭義『神樹』(朝日新聞社)ほか多数。

ISBN:9784497220226
出版社:東方書店
判型:4-6
ページ数:368ページ
定価:2700円(本体)
発行年月日:2020年11月
発売日:2020年12月03日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:FB