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これからの理科教育はどうあるべきか

編著:久保田善彦

紙版

内容紹介

教科教育の現在と未来を考える羅針盤シリーズ、ついに刊行!

予測困難な現代社会を生き抜くために、理科教育が果たすべき役割とは何か。理科の不易なテーマである「問題解決」を新たな視点で捉え直すとともに、それを支えるウェルビーイング、メタ認知と自己調整学習、「個別最適な学び」「協働的な学び」などの在り方を考える。STEM/STEAM教育やSDGs、ダイバーシティなど、理科教育の広がりを示唆する最新トピックを含む、未来を見据えた一冊。


◎これからの「問題解決」とは
新型コロナウィルスによるパンデミック、地球沸騰化と呼ばれる異常気象、生成AIの進化など、これまで誰も予想していなかった出来事が立て続けに押し寄せている今、まさにVUCA時代が到来しています。「問題解決」は、理科がこれまでも大切にしてきた不易なテーマですが、予測困難な現代社会において、さらにその重要性が高まっているといえるでしょう。本書では、理科教育の現状と課題を踏まえ、これからの時代に求められる「新たな問題解決」を提案します。

◎ウェルビーイングに向けた理科の学び
OECDは、教育の目的を「個人のウェルビーイングと社会のウェルビーイングの2つを実現することである」と定義しています。理科において、ウェルビーイングをどのように捉えればよいのでしょうか。ウェルビーイングにつながるメタ認知と自己調整学習、「主体的に学習に取り組む態度」の育成と評価について検討するとともに、古来より日本人の精神に脈々と伝わる「自然を愛する心情」について改めて見つめ直します。

◎「個別最適な学び」「協働的な学び」とICT活用
「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実が叫ばれる中、理科ではどのような授業づくりが考えられるでしょうか。忘れてはならないのが、「科学的」というキーワードです。実証性・再現性・客観性という条件を踏まえた問題解決の活動を充実させるために、「個別最適な学び」「協働的な学び」という観点で授業を捉え直すことが大切です。本書では、具体的な授業場面に即して考えるとともに、それらを加速させるICTを活用した学習の現状や今後の可能性について紹介します。

◎理科教育のつながり・広がり
現代社会の問題解決には、あらゆる分野を横断する知恵が求められます。本書でも、理科と他教科・他分野とのつながりを踏まえて、新しいトピックを論じます。分野横断的・創造的な学びである「STEM/STEAM教育」、理科と社会をつなぐ「SDGs」、差別や偏見のない社会に導く「ダイバーシティ」、ニセ科学に翻弄されないための「科学メディアリテラシー」、それぞれが社会に開かれた理科教育を実現するための重要な視点です。

目次

はじめに

第1章 問題解決のこれまでとこれから 
1 全国学力・学習状況調査にみる問題解決のこれまでとこれから
 ①調査問題の基本的な枠組み
 ②調査結果から明らかになった課題
 ③課題を解決するための授業改善
2 問題を科学的に解決する力
 ①問いを設定する力
 ②知的謙虚さ
3 問題解決を支える評価
 ①評価観のアップデート
 ②学習目標と達成規準の共有
 ③指導の改善と柔軟な評価
4 問題解決の過程を再考する
 ①不易のテーマ「問題解決」
 ②問題解決のプロセス
 ③科学者の探究と科学の性質

第2章 学びに向かう力とウェルビーイング
1 理科におけるウェルビーイングの基本的な捉え方
 ①理科室で向上するウェルビーイング
 ②ウェルビーイングを実現するための教師の営み
2 メタ認知と自己調整学習
 ①これからの時代に求められる力
 ②メタ認知とは何か
 ③自己調整学習とは何か
 ④メタ認知と自己調整学習を促す理科の授業づくり
3 「主体的に学習に取り組む態度」とその評価
 ①「主体的に学習に取り組む態度」を評価するとは
どういうことか
 ②OPPAを活用した「主体的に学習に取り組む態度」の
育成とその評価
4 「自然を愛する心情」を育む
 ①日本の「理科」はひと味違う
 ②自然を愛する心
 ③「自然に親しむ」から始まる
 ④科学者にとっての「自然を愛する心情」

第3章 「個別最適な学び」と「協働的な学び」
1 理科における「個別最適な学び」と「協働的な学び」を考える
 ①「個別最適な学び」「協働的な学び」を
意識することになった経緯
 ②「個別最適な学び」「協働的な学び」と
「主体的・対話的で深い学び」を整理する
 ③「個別最適な学び」「協働的な学び」とは 
 ④理科における「個別最適な学び」「協働的な学び」
2 理科における「指導の個別化」と「学習の個性化」
 ①改めて「子ども一人一人」
 ②問題解決の展開の仕方
 ③「指導の個別化」「学習の個性化」から
問題解決の活動を見つめる
3 「個別最適な学び」「協働的な学び」とICT-その可能性と限界-
 ①科学的な問題解決(探究)のためのICT活用
 ②理科におけるICTを活用した学びとは
 ③協働的な学びの場面における教師のICT活用
 ④ICT活用の可能性と限界

第4章 つながる理科・広がる理科
1 STEM/STEAM教育
 ①STEM/STEAM教育って何?
 ②STEM/STEAM教育を具体化するために
 ③STEM/STEAM教育の実践事例
2 SDGs時代の理科教育
 ①理科教育は激変する世界で通用するか
 ②カリキュラム・マネジメントで「汎用的な能力の育成」へ
 ③子どもの学ぶ心に火をつける
3 ダイバーシティ
 ①ダイバーシティの視点の重要性
 ②理科教育におけるダイバーシティとは
 ③ダイバーシティ(多様性)からエクイティ(公平,公正)へ
4 科学ニュースを読み解く「科学メディアリテラシー」
 ①「科学メディアリテラシー」とは
 ②科学ニュースの「生産」の信頼性をチェックする
 ③科学ニュースの「伝達」の信頼性をチェックする
 ④科学ニュースの「消費」の信頼性をチェックする
 ⑤理科教育は何ができるのか

おわりに

著者略歴

編著:久保田善彦
玉川大学教育学研究科教授 
茨城県生まれ。東京学芸大学大学院修士課程修了後、茨城県公立小学校教諭および公立中学校理科教諭として15年あまり勤務。その傍ら、上越教育大学大学院修士課程、兵庫教育大学大学院連合大学院博士課程を修了。上越教育大学教職大学院、連合大学院博士課程、宇都宮大学教職大学院を経て現職。
科学概念の変容と授業デザイン、ARやVRなど先進技術を利用した教材開発、教科教育全般の授業改善やカリキュラム・マネジメントの研究を行っている。また、小・中・高等学校、教育委員会等の多くの研修に関わる。文部科学省学校DX戦略アドバイザー、一般社団法人日本理科教育学会会長などを務める。
主な著書に、『理論と実践をつなぐ理科教育学研究の展開』(東洋館出版社 2022)『テンプレートでわかる算数・理科のクラウド活用』(東洋館出版社 2021)『GIGAスクールで実現する新しい学び』(東京書籍 2021)『これならできる小学校教科でのプログラミング教育』(東京書籍 2018)などがある。

ISBN:9784491053868
出版社:東洋館出版社
判型:A5
ページ数:140ページ
定価:1800円(本体)
発行年月日:2023年12月
発売日:2023年12月14日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JNT
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:JNU
国際分類コード【Thema(シーマ)】 3:JNW