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子どもは罰から学ばない

著:Paul Dix
訳:森本幸代

紙版

内容紹介

必要なのは罰でも脅しでも、なだめすかしでもない。 本当の信頼関係を結び、子どもが社会の中で生きていく力を育むために大切なもの。
本書の概要
筆者であるポール・ディックスは、イギリスで数々の教育困難校を立て直してきました。その中で、子どもたちの問題行動は傷つきや不安に由来すること、学校全体が一貫した基準で彼らに行動支援を行うことが大切だと考えました。
罰を用いても、子どもたちはそこから正しい行動規範を学ぶことはありません。傷つき、困りや怒りを抱える子どもたちには、他者と生きるためのふるまいを教えてくれる大人、身に付くまで根気よく支えてくれる大人こそが必要なのです。
本書では、そうした行動支援に必要な教師のマインドセットや方法を示します。

本書からわかること
教師の行動から子どもたちはメッセージを受け取っている
世の中には、「〇歳ならちゃんとできてあたりまえ」という、根拠のない言説があふれています。でも、それは本当でしょうか。子どもたちは日々、家庭で、地域で、学校で、他者と生きていくために必要なふるまいを学び続けています。しかし、たった一度教わるだけでそれらが身につくわけではありません。
子どもたちの中には、ルールや規範をすぐに守れる子と、それがむずかしい子がいます。環境によって精神的に追い込まれていたり、傷つきを抱えていたりする子どもたちはなおさらです。
ルールやふるまいを身に付けるには、学校や教室が一貫した基準で運営され、子どもたちにとってそれがわかりやすい形で示されていることが大切です。

罰や脅しを用いずに、行動に問題のある子どもをどう導くのか
本書では、学校や教室が子どもたちにとって安定した環境になるための方法がまとめられています。

・教師が毅然とふるまうことの大切さ
・子どもを気にかけ続けるということ
・悪い行いを目立たせても良いことはない
・ルールに従う子と人に従う子
・問題行動へ介入するためのスクリプト(指導台本)
・子どもと問題を解決するための修復的な会話・実践

問題行動があるときほど、そしてそれが続けば続くほど、力や声の大きさでねじ伏せてしまいたくなるかもしれません。でも、それで子どもがなにも学べないのだとしたら――。 明日からの学校経営・学級経営を変える一冊です。

こんな先生におすすめ
・子どもの問題行動が続いたときに対処の方法がわからない・迷うとき
・教師の「安定感」について考えたくなったとき
・むずかしい指導に直面したとき

目次

はじめに

第1章 目に見える一貫性と思いやり
子どもを温かく出迎える
ファンタスティック・ウォーキング
校内見学なしでは誰も4 4 校長に会えない学校
全員で取り組むということ
一貫性が崩れるとき
学校を崩壊から救ったもの
教室で取り入れるには
Column 1 「これが私たちのやり方です」

第2章 感情に流されない学級経営
そのやり方は正しいのか
自分を顧みる
罪の重さについて
表彰掲示板の力を借りる
行動成績表の功罪
トークンエコノミー法の課題
100万ポイント!
ロバートとの出会い
教室で取り入れるには
Column 2 熱心過ぎる人

第3章 気にかけ続ける
ものでつる
小さなことの積み重ね
レオンの話
期待は高く
「愛情」という通貨
いいねカードの威力
いいねカード:こういうパターンもある
プリントについて
「仲間だと示そう」
教室で取り入れるには
Column 3 目立たない子にスポットライトを当てるホットチョコレート・フライデー

第4章 安定感のある大人
感情的な教師にかかるコスト
ベテラン教師が安定感の大切さについて教えてくれること
自分のクラスの子どもは自分で指導する
安定感は懲罰に勝る
自信がなくても、あるようにふるまう
大人の方が守れないルール
教室で取り入れるには
Column 4 教育省にて

第5章 学級経営の要になる習慣をつくる
行き過ぎた習慣化
悪夢のサーカス
基本になる習慣
きまりの新しいあり方
遅刻問題を解決したシンプルなきまり
教室で取り入れるには
Column 5 天賦の才能に見えるもの

第6章 生徒指導の台本をつくる:意表を突いた愛と思いやりの力
「フリースタイル生徒指導」?
30秒の介入
30秒でできる生徒指導の台本
毅然とふるまうこと
最高のスタートを切る
むずかしい案件
教室で取り入れるには
Column 6 懲罰式に関する矛盾

第7章 罰への依存が社会を形づくる
懲罰至上主義
教師の言い訳?
反抗的な態度に反応しない
隔離ブース
大人の欺瞞
段階的指導について
課題を出す
都市部の大規模中学校で居残りを廃止してみたら
教室で取り入れるには
Column 7 ヤギを使った指導

第8章 問題を解決し信頼関係を修復する対話
面談
内省を促す5つの問いかけ
小さい子との対話
諦めない教師になる
教師も謝る
停学の本質を考える
教室で取り入れるには

第9章 ルールに従う子、人に従う子
怒りと心の傷を抱えている子ども
むずかしい指導をするときに
気をつけること
トラウマとアタッチメントについて
代替教育施設から学ぶ
障害のサイン?
むずかしい問題を保護者と話すとき
教室で取り入れるには

第10章 それでいいのか、指導方針!
自分なりの指導方針をもつ
〝戒律〟と呼ばれている規則
多過ぎるきまり
準備、敬意、安全(RRS)の力
「それぞれの裁量に任せる」のは危険
連帯責任
懲罰式に伴う経済的コスト
方針は1枚の覚書にまとめる
グレーのスーツを着た悪魔
教室で取り入れるには

第11章 1ヶ月の魔法
目標は毎日見る
挨拶
「もっと罰を!」という声が聞こえたら




結びに
謝辞
著者について
訳者紹介

著者略歴

著:Paul Dix
著/ポール・ディックス(Paul Dix)
教育アドバイザー。教師、指導者、教員トレーナーとして25年間教育に携わり、都会の荒れた小・中・高校、代替教育施設、高等教育機関で生徒指導革命を起こしている。学生時代は何度も勉強を放棄しかけたが、ケンブリッジのホーマートン大学で教育訓練を受け、卒業後はさまざまな教育困難校で勤務した。
 現在は教育アドバイザー・生徒指導スペシャリストとしてさまざまな学校で教職員を指導する他、教職員行動規範に関する教育省への提言、教育特別委員会へのエビデンス提供、司法省と共同で若年受刑者のふるまいと扱いに関する多数の取組を実施している。
訳:森本幸代
翻訳者。訳書に『ボーン・フィ・デッド:ジャマイカの裏社会を旅して』(MIGHTY MULESBOOKSTORE)、『People Funny Boy』(JD Medusa)、『L T 1: ジャマイカの性』(MIGHTYMULES BOOKSTORE)、『DUB論』(水声社)、『ソリッド・ファウンデーション』(DU BOOKS)などがある。

ISBN:9784491050621
出版社:東洋館出版社
判型:4-6
ページ数:312ページ
定価:2100円(本体)
発行年月日:2024年03月
発売日:2024年03月04日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JND