新 トポスの知☆〔新装版〕☆
箱庭療法の世界
著:河合 隼雄
著:中村 雄二郎
内容紹介
多くの読者のご要望に応え、待望の名著復刻!
限定された砂箱という「場」(トポス)に人間存在の在り様が示される――
〈箱庭療法〉という心理療法の一技法をめぐる哲学者と心理療法家の対話。
(河合隼雄「あとがき」より)
言うまでもなく、箱庭療法は、箱庭をつくることによって心理療法が行なわれてゆくのであるが、そこに生じる多くの出来事は、人生のドラマと言ってもよく、限定された砂箱という「場」(トポス)に、人間存在の在り様が見事に提示されてくるのである。
したがって、このことは、単に心理学とか心理療法ということを超えて、広く「人間存在」に対する関心をもっている人たちに、多くのことを知っていただきたいと思う新しい「知」をはらんでいるのである。
哲学と心理学は、従来からあまり仲の良い関係ではなかった。しかし、共著者である中村雄二郎氏と私は、この両者が協力しあうことがきわめて重要であり、またそれを必要とする時が来ているという認識をもっている。その両者の出会う「場」として箱庭というものが浮かびあがってきたことは、なかなか興味深いことと言わなければならない。
もちろん、われわれの“対話”は、まだ始まったばかりであり、これを出発点として哲学と心理学の対話が、異なる「場」や異なる「時」に、今後ますます発展してゆくことを願っている。
本文中でも述べていることだが、「箱庭療法」は簡単そうに見えて、その実、危険性も困難性も十分に持ちあわせている。本書によって箱庭に興味をもたれた方が、もし実際に箱庭療法を行なってゆこうとされるなら、専門的知識のある人の指導を受けられることが望ましいことを、ここに附言しておきたい。
目次
箱庭療法と〈私〉――河合隼雄
1 箱庭療法との出会い
2 どう発展したのか
3 日本への導入の仕方
4 発展に伴う課題
5 〈都市の会〉との相互交流
6 本書成立までのいきさつ
7 ドラマとしての箱庭
Ⅰ 〈自由に創ること〉の楽しさ
箱庭療法はなぜ日本で成功したか
無理な「組織化」を避ける――明石箱庭療法研究会の場合
材料選びにも個性が反映する
Ⅱ 豊かなイメージの世界
ファンタジーの客観化
内面を「枠」で守る
「枠」を越えること――アクティング・アウト
世界の解体と再構成
風景が一変する――日常と非日常
死と直面する―― 男性原理と女性原理
次元が変わる――立体と平面
象徴性の強い世界
イメージを噴出させる装置
Ⅲ 〈癒やす〉意味とその働き
「治す」ではなく「治る」こと
性急な言語化は禁物
ノーマルな作品の限界性
隠すことも高次の表現
情念のキャナライズ
「解釈」ではなく「鑑賞」を
曼陀羅生成の過程
Ⅳ 隣接する領域とのかかわり
芸術療法との関係
夢体験と意識
組み合わせの発想――箱庭の場合
古典的箱庭との違い
フラットな全体像――ロールシャッハ・テスト
心理テストの位置づけ
Ⅴ 箱庭・その哲学的パフォーマンス
凝縮された「都市論」
場所(トポス)の論理
箱庭表現のなかの時間性
シンボルとイメージが生命
「触れること」の哲学
コスモロジーとしての箱庭
言語を超えて――無意識の責任
Ⅵ 近代科学と新しい〈知〉のあり方
近代科学の特質――瞬間証明主義
箱庭療法は「科学」か
新しいパラダイムとしての「臨床の知」
知と文化のモデル――ツリー型とリゾーム型
インテグレーションとは何か
葛藤の美的解決
他者の存在―― セラピストとクライエント
身体論の展開――ヴァレリーからアルトー、ドゥルーズへ
心身症と生きる手応え
新しい都市論と箱庭表現――中村雄二郎
一 棲み家としての都市
二 市川浩と山口昌男の仕事から
三 多木浩二と前田愛の仕事から
四 トポス論の新しい展開へ
あとがき
新装版あとがき――河合隼雄
新装版あとがき――中村雄二郎
索引(事項・人名)
ISBN:9784484172118
。出版社:CCCメディアハウス
。判型:4-6
。ページ数:320ページ
。定価:2500円(本体)
。発行年月日:2017年03月
。発売日:2017年03月18日
。国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:VSP。