はじめに
現象学とは何か/現れと出会い/フッサールの現象学/本書の構成
第一章 他者と向き合うための孤独――フッサールの肖像
1 フッサールの生涯
少年時代(一八五九?一八七六年)/学生時代(一八七六?一八八三年)/ブレンターノとの出会いから『論理学研究』執筆まで(一八八四?一九〇一年)/ゲッティンゲン時代(一九〇一?一九一六年)/フライブルク時代(一九一六?一九二八年)/晩年(一九二八?一九三八年)/フッサール文庫
2 フッサールの文体と思考
探検家フッサール/フッサールと一緒に哲学する/誰も踏み込んだことのないところ/他者と向き合うための孤独
第二章 経験の仕組み
1 どんなふうに経験を記述するか
世界のなかで生きる/リンゴの木を空想する/リンゴの木を経験する/空想と経験が織りなす生/経験から出発する/スイッチはどこ?
2 自然的経験
素朴な経験としての自然的経験/経験はあとから訂正されうる/志向性/「現れ」と「現れるもの」/世界あってこその経験……なのか?/循環の問題/像の問題/自然的経験からしばらく距離をとる
3 超越論的還元
経験は止められないけれど/エポケー(判断停止)/家に帰るまでが遠足/括弧入れと遮断/世界を意識の内側に引き戻す
4 「超越論的」であるとはどういうことか
経験の可能性の条件/「超越的」と「超越論的」/カントの言葉づかい/フッサールの言葉づかい/カントの超越論的哲学からフッサールの超越論的現象学へ
5 超越論的経験
何も引かない、何も足さない/リンゴの木と私のあいだに/現れを素通りするということ/現象学は何を記述するのか/経験の仕組みの問題
コラム1 蜜柑と紅葉
第三章 経験の分類
1 経験の領野へ
経験の領野の歩き方/体験、意識、作用/空虚な作用/直観/対象を根源的に与える直観/すべての原理のなかの原理/「対象そのものが与えられる」ということ/対象の構成/アルケーは身近なところにある
2 さまざまな経験
根源的な与えられ方は一つではない/経験と根源的に与える直観/他者経験の位置づけ/経験の分類の問題/現象学を定義する
第四章 世界との接触
1 超越的知覚
超越的であるとは/現れ、現れるもの、地平/ノエシスとノエマ/ノエマの意味/カント的な意味での理念/対象に関する言葉づかいの整理/なぜ「カント的」なのか/突き破られる意識
2 内在的知覚
内在的知覚とは何か/移ろいゆく体験を捉える/「生の全体」を捉えることはできるか
3 価値覚
空の青さに見惚れる/価値覚/価値覚と価値判断のつながり/価値覚と実践的な行為とのつながり/生活世界
補章 厳密な学問としての現象学
本質直観とは何か/普遍性にはさまざまなレベルがある/自由変更と理念化/精密な学問と記述的な学問/現象学における記述/厳密な学問としての現象学/形相的還元
第五章 生きている私
1 人間としての私、純粋自我としての私
人間としての私/キネステーゼ/純粋自我としての私/特別な意味での孤独/体験流が私のものであるということ
2 時間のなかを生き抜く私
時間図表/幅をもった現在/過去と未来
3 哲学する私
自己解明としての現象学/自我論とモナド論/フッサールがデカルトから学んだこと/自我論は「独我論」なのか?/自我はやっぱり孤独/なぜ独我論を避けて通れないのか/独我論の難点①――日常生活との乖離/独我論の難点②――客観性の消失/内から外へ
第六章 私から他者へ
1 異質なものと固有のもの
他者の構成の問題/なぜ「他者」なのか/付帯現前化/異質さを残しつづけるもの/他者との出会い/超越論的な他者経験の理論/固有の領分への還元/固有の領分には何があるのか
2 エンパシー
触発と把握/対化/類比による把握/エンパシー(感情移入)/反論①――対化は本当に起こっているのか/反論②――他者は結局のところ私のコピーなのか/フッサールのエンパシー論の意義
3 コミュニケーション
エンパシー論からコミュニケーション論へ/私と君/君の声に耳を傾ける/哲学的孤独からの脱却
コラム2 リンゴの木とお茶会をする
おわりに
今回の探検はひとまずここまで/哲学をする理由
読書案内/あとがき/参考文献