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ちくま新書 1762

ルポ 歌舞伎町の路上売春

それでも「立ちんぼ」を続ける彼女たち

著:春増 翔太

紙版

内容紹介

歌舞伎町で路上売春をする「普通」の若い女性が急増したのはなぜか。当事者たちのほか、彼女らを支援するNPO、ホスト、警察など多角的に取材、素顔に迫る。

巨大歓楽街に起きた、ある異変
買春客を待つ若い女性が急増したのはなぜか?
リスクを抱えてまで、なぜ「売る」のか?
毎日新聞社会部記者が迫る!

2022年の晩秋、歌舞伎町の一角で「立ちんぼ」をする若い女性が急増した。「たちんぼ」とは路上売春のことだ。風俗店で働くのとは違い、買春客に金を奪われたり、ラブホテルの密室で暴力を振るわれたりといったリスクがあるにもかかわらず、彼女たちはなぜ路上で「売る」のか。毎日新聞社会部記者が、60人以上の女性たちのほか、自分たちに貢がせようとするホストたち、彼女らを支援し続けるNPO、路上売春を取り締まる警察など、100日以上にわたって多角的に取材、その「リアル」に迫ったルポ。

目次

プロローグ 

第1章 歌舞伎町の「立ちんぼ」スポット 
薄暗い路上で/売春女性が集まる公園/取材の始まり/相場/それぞれの事情/みつぐために/より安く、より若く/路上売春の急増/観光地化/無断で撮影し投稿/隣り合わせの危険/ネットを避けて路上で/買春する男たち/彼女たちの人間関係/戦後生まれの歌舞伎町/性風俗のきっかけは売春防止法/街の繁栄とともに/昭和から平成へ/21世紀の「浄化作戦」

第2章 彼女たちのリアル 
1「別にずっといたいとは思わないけど」……ユズ 
ネカフェ暮らし、ホスト通い/自分の値段/札幌のホスト/キャリーケース一つで上京/「出稼ぎ」と「裏引き」/介護施設に就職/3週間で逆戻り/再びホスト通い
2「私はね、家族が欲しかったんだ」……モモ 
初めて迎えた歌舞伎町の冬/「家みたい」なホストクラブ/虐待を受けた幼少期/「愛情が何かは知らないんだよね」
3 「愛を探しに来たんです」……レイ 
声をかけられて/施設を転々とした日々/「愛を探しに」/「病気をきちんと治したい」

第3章 ホストの沼 
私のラスソン/みつぐための売春/500万円のおねだり/飛び降り騒ぎ/「その女の人は知っ
てるよ」/「担当」への愛憎/負の連鎖/変わらない業界の風潮/勧誘の場はSNS/10代も通う
「メンコン」「メン地下」/女性客を「沈める」/ホストの「沼」

第4章 手を差し伸べる 
深夜の薬局へ/目の前の困り事/午前1時の相談/海外で目にした売春の光景/支援の日常/居場所となる相談室を/支援の輪/活動資金の悩み/行政と民間団体の協働

第5章 取り締まりのジレンマ 
「もう絶対、捕まりたくない」/買春は罪にならず/珍しくない逮捕事案/警察の「説諭」/いたちごっこ/専門相談員/売春をさせる「構造」/「風俗やりなよ」/「めちゃくちゃ試行錯誤」

第6章 彼女たちはどこへ行くのか 
1 「誰にも知られたくなかった」……ユズ 
望まぬ妊娠/「産みたい」/母親の思わぬ発言/捨てようとした過去/居心地のいい場所/「また東京に戻ってくる」/郷里にて
2 「ちゃんとした家族が欲しい」……モモ 
「もう疲れた」/15歳の少女/臨月/「友達と一緒に住むから」
3 「この街に愛はなかったです」……レイ  
病院を抜け出し/トラブル続き/次の居場所/「しあわせになりたい」
4 「プラスでもマイナスでも、リセットされる街」……鈴木涼美さん(作家)
5 「「自分に関係ない」と見切れば、大久保公園の現象に加担するのと同じ」……宮台真司さん(社会学者) 

著者略歴

著:春増 翔太
春増 翔太(はるまし・しょうた):1984年神奈川県生まれ。植物学を専攻していた大学院を中退し、2009年に毎日新聞入社。甲府支局、盛岡支局、社会部、神戸支局を経て、21年から再び社会部に所属。各地で警察を担当し、事件・事故取材に携わった。岩手や神戸では東日本大震災と阪神大震災後の被災地を、社会部では東京パラリンピックのほか、コロナ禍で陰謀論に陥った人やその家族、闇バイトに手を染めて捕まった若者を追った。

ISBN:9784480075925
出版社:筑摩書房
判型:新書
ページ数:256ページ
定価:900円(本体)
発行年月日:2023年11月
発売日:2023年11月09日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JBF