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ちくま新書 1752

世界を動かした名演説

著:池上 彰
著:パトリック・ハーラン

紙版

内容紹介

そのとき歴史が動いた。時代を揺さぶった言葉とは。現代史に残る15本の演説を世界情勢、表現の妙とともに読み解く。知っておきたい珠玉の名言と時代の記録。

演説とは「言葉での戦闘」だ。
第2次大戦の戦況を覆した世紀の演説、
史上最強の謝罪演説、
被差別者側の切実なほしい物リスト……。
現代史の学びなおしに欠かせない
教養としての名スピーチを
最強タッグの解説で味わい尽くす
――そのとき 歴史が動いた。
■「言葉の力」は凄い。人の心を動かし、本当に世界を動かすことができる。
 そんなことを多くの人が実感したのは、2022年2月にロシアがウクライナに軍事侵攻した後のことでしょう。(・・・)
世界の首脳たちの演説は、それぞれの時代と場所によって規定されています。どんな時代背景にあって発せられた言葉なのか。それを知ることで、現代史が一段と理解できることでしょう。
――池上彰
(本書「おわりに」より)
■私たちの対談では、演説の現場を訪れたときのリアルな体験談や各演説の知られざる裏話などを紹介し、社会的、政治的な背景を独自のわかりやすい口調で解説する池上さんの魅力があふれます! 同時に、演説大国アメリカの観点、または修辞学(古代ギリシャの時代から続いているコミュニケーション学)に基づいた分析で話術を解説する、僕の微力もあふれています!(・・・)
池上さんと僕との、この旅が終わったら、あなたはきっと世界をよりよく理解し、話術をよりよく駆使するようになっていると予想します。そして、そのあなたも、神様や発明家、独裁者じゃなくても、毎日少しずつ世界を変えていく人になるでしょう。
――パトリック・ハーラン(パックン)
(本書「はじめに」より)

目次

はじめに
第1 部 抗戦と平和  
1  ウィンストン・チャーチル
「我々は戦う。岸辺で、上陸地点で、野原で、街路で、丘で」1940年6 月4日
第2次大戦時、英国軍の反転攻勢を鼓舞した名演説/チャーチル以前の英国とポピュリズム/「すごい」「すばらしい」「凄まじい」ドイツ軍の恐ろしさ/映像のようにたたみかけ、聴衆の心を揺さぶる/今も昔もしたたかなアメリカ/「どんな犠牲を払っても」という切迫感/戦争屋は、戦争が終わればお払い箱?/戦況を覆した世紀の演説
【原文抜粋】  【演説要旨】  
2  ウォロディミル・ゼレンスキー
「ウクライナに栄光あれ」2022年3 月8日/同12月21日 
ゼレンスキーはパトス(感情)の人/あの日からの13日間を描く/「ウクライナも私も、ナチスじゃない」/過去の惨劇を思い起こさせる/「子ども」で感情を揺さぶる/郷に入れば郷に従え ―― アメリカでのレトリック/これは宗教戦争であり、言語闘争でもある/スピーチの役割、言葉の重み
【演説要旨=2022年3 月8 日@英国議会オンライン演説】 
【原文抜粋=2022年12月21日@米国連邦議会演説】  
【演説要旨=2022年12月21日@米国連邦議会演説】  
3  ジョン・F・ケネディ
「Ich bin ein Berliner( 私はベルリン市民です)」1963年6月26日  
生粋のヒーローが残した数々の名演説/1963年6 月、公民権法、キューバ危機後、ベルリン訪問/冷戦下のユーモア/ベルリンの壁の特殊性/宗派アレルギーを解消した男/ケネディは自虐ネタの名手?/ベルリンの壁崩壊のきっかけを作った演説
【原文抜粋】  【演説要旨】  
4  ロナルド・レーガン
「この壁を壊してください!」1987年6 月12日 
「つかみ」は現地語で/一都市の問題ではなく、全世界の問題なのだ/ベルリンの真ん中でソ連に軍縮を呼びかける/ザ・グレート・コミュニケーター、レーガンのお手並拝見/
レーガンとゴルバチョフの歩み寄りが冷戦終結をもたらした/誰もが愛したレーガンのユーモア/東欧の民主化とベルリンの壁崩壊の真実
【原文抜粋】  【演説要旨】  
5  リヒャルト・フォン・ヴァイツゼッカー
「過去に目を閉ざす者は現在にも目をつぶることになる」1985年5 月8日 
史上最強の謝罪演説/過去に対する責任は誰にもある/加害すべてを網羅する/謝罪するなら徹底的に/「知る責任」を問う/ドイツを野蛮国からヨーロッパのリーダーへと転換させた
【演説要旨】  
6  ジャワハルラール・ネルー
「世界で何が起ころうとも、どちらにも属さない」1955年4 月18日 
インドのネルーの名演説/第3 世界の非同盟宣言は「グローバルサウス」へ/元植民地としての大国への怒り/戦争への痛切な忌避感/内政不干渉のジレンマ
【演説要旨】  
7  鄧小平
「今、3 つの世界がある」1974年4 月10日  
ルーツはネルーの演説にある/鄧小平演説の皮肉/ソ連の位置づけを変えた/50年を経て変貌した中国/中国批判の絶好の材料?/第3 世界の消滅/先進国か途上国かを使い分ける
【演説要旨】  
8  昭和天皇
「堪え難きを堪え、忍び難きを忍び」1945年8 月15日  
日本には演説文化がない?/初めて聞く天皇の声が戦争を止めた/平和大国日本の礎となった?/玉音放送から人間宣言へ
【「玉音放送」原文】  【「人間宣言」抜粋】  
9  安倍晋三
「希望の同盟へ」2015年4 月29日  
米国連邦議会でスピーチした日本人/ご当地ネタに自虐ネタ、歴史の列挙……演説テクニックの宝庫/アメリカ人に響く史実を踏まえる/情けに訴えてスタンディングオベーショ
ンを誘う
【原文抜粋】  【日本語訳】  

第2 部 迫害と希望  
10 マーチン・ルーサー・キング
「I have a dream.(私には夢がある)」1963年8月28日  
演説の金字塔/アメリカ人全員から慕われるエトスの持ち主/一般人の生活と独立宣言を結びつける/黒人の苦悩を下敷きに、人々の心を揺り動かすレトリック/ 3 つの意味で世界を変えた演説
【原文抜粋】  【演説要旨】 
11 マルコムX
「The Ballot or the Bullet(投票か弾丸か)」1964年4月12日  
マルコムX の本名は?/キングが牧師なら、マルコムX はボクサー?/人々の怒りを煽り、立ち上がらせる話術/ディキシークラットとレーガンデモクラット/公民権運動は終わっていない/公民権は南部者が実現した?
【原文抜粋】  【演説要旨】  
12 ネルソン・マンデラ
「死ぬ覚悟はできている」1964年4 月20日  
アパルトヘイトとは何か/何が廃止を後押ししたのか/アパルトヘイトの影で行われていた核開発/「世界」を視野に入れた法廷陳述/南アフリカの今に残るアパルトヘイトの影響
【原文抜粋】  【演説要旨】  

第3部 課題に立ち向かう 
13 マララ・ユスフザイ
「一人の子ども、一人の先生、一本のペン、そして一冊の本が世界を変える」2013年7 月12日  
シンプルな言葉だからこそ力強い/謙虚なのに、マーベル映画の主人公のようなカッコよさ/マララ銃撃事件の背景/自然と主導権を握り、アクションを呼び起こす/タリバンへの注目を集め、子どもの声が世界に届くきっかけに
【原文抜粋】  【演説要旨】  
14 ジャシンダ・アーダーン
「私たちが信じている国になるために」2019年3 月29日  
相手への共感を示し、仲間を感じさせる/ローカルからグローバルへと視点を広げる/優しい心根とリーダーシップ/新たな女性リーダー像を世界に示した
【原文抜粋】  【演説要旨】  
15 アンゲラ・メルケル
「親愛なる市民の皆様へ」2020年3 月18日  
ステイホームとその理由を人々に真正面から訴える/科学を話し、人間性に帰着する/確かな生活から生まれたフレーズ/具体的で理性に訴えかける名演説/21世紀のリーダー像を示したメルケル首相
【演説要旨】 
おわりに  
原文出典  

著者略歴

著:池上 彰
池上彰(いけがみ・あきら):1950年長野県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、73年にNHK入局。記者やキャスターを歴任する。2005年にNHKを退職して以降、フリージャーナリストとしてテレビ、新聞、雑誌、書籍、YouTubeなど幅広いメディアで活躍中。名城大学教授、東京工業大学特命教授を務め、現在9つの大学で教鞭を執る。著書に『池上彰の憲法入門』『「見えざる手」が経済を動かす』『お金で世界が見えてくる』『池上彰と現代の名著を読む』(以上、筑摩書房)、『世界を変えた10冊の本』『池上彰の「世界そこからですか!?」』(以上、文藝春秋)ほか、多数。
著:パトリック・ハーラン
パトリック・ハーラン:1970年生まれ。米国コロラド州出身。芸人、東京工業大学非常勤講師、流通経済大学客員教授。93年ハーバード大学比較宗教学部卒業。同年来日。97年吉田眞氏とお笑いコンビ「パックンマックン」を結成。NHK「英語でしゃべらナイト」「爆笑オンエアバトル」等に出演し、注目を集める。「報道1930」「めざまし8」でコメンテータを務めるなど、報道・情報番組にも多数出演。2012年より池上彰氏の推薦で東工大の非常勤講師に。コミュニケーションと国際関係についての講義を担当。著書に『パックン式お金の育て方』(朝日新聞出版)『ツカむ!話術』『大統領の演説』(角川新書)ほか、多数。

ISBN:9784480075857
出版社:筑摩書房
判型:新書
ページ数:288ページ
定価:940円(本体)
発行年月日:2023年10月
発売日:2023年10月06日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:NHB