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ビジュアルだいわ文庫

誘う絵

著:平松 洋

紙版

目次

第1章 ヴィーナスの誘惑
異教の女神を描いて、ルネサンスに復活した裸婦像
ヴィーナスは、裸婦を描く口実だった!?
ギリシャ彫刻に典拠のない眠れるヴィーナス
艶めかしくも誘うような視線を送る横臥の裸婦
有名な『泉』は、眠れる美女の甘美なポーズだった!?
踏襲されていく、グラビアの源流となったポーズ
「ヴィーナスのサロン」を飾った甘美で魅惑的な裸婦たち
より官能的な両腕を上げた眠りのポーズ
立ち姿で眠りを表すピンナップの定番ポーズ
匂い立つ花々とともに魔性の誘惑者を表す事物

第2章 ゼウスの誘惑
美女に懸想し求愛する、大いなる不倫の神ゼウス
アングルが描いた哀願のポーズは死のポーズだった?
大神が見染めた、裸体の見返り美人たち
裸体の美女に忍び寄る半人半獣
女性に変身してまで誘惑する大神の姦計
ヨーロッパの語源は、雄牛に誘惑された美女の名前!?
牛の角を握るポーズに秘められた象徴とは?
ダ・ヴィンチから始まる艶めかしいレーダーと白鳥の主題!
白鳥とのキスや抱擁が意味する男女の営み
後世に影響を与えたエクスタシーのポーズ
性の陶酔を描いた甘美すぎるダナエーの構図
美しい肢体を浮かび上がらせる光の魔術師
金貨となった黄金の雨は売春の隠喩か?

第3章 牧神の誘惑
裸の美女をのぞき見るサテュロスは恰好のヌード主題
もうひとつのヌード主題とサテュロスの構図
サテュロスがのぞくヴィーナスは官能的なレーダーのポーズ
どこまでも官能的な地上のヴィーナスの肢体
もう一人の誘惑者、半神半獣の性神パーン
好色でニンフを誘惑するパーンとサテュロス

第4章 ニンフの誘惑
自然の精霊を表した美しき乙女たちの本性
無自覚に牧神を誘惑する美しき精霊の魔性性
処女性を表すポーズに隠された官能の場面
牧神を翻弄する美しきニンフたち
裸婦画のポーズ集のようなニンフの群像表現
裸体美とその技量を見せつける大量のニンフたち
水底へと引きずり込む美しき妖魔たち
ニンフォマニアとしてのニンフの正体
美しい男を引きずり込むニンフ像に与えた不倫作品の影響
欲情するニンフと両性具有者によるレズビアン絵画!?
妖艶に死の深みへと誘う海の女神たち

第5章 セイレーンの誘惑
美声によって聞く者を誘惑する人魚のイメージ
妖鳥セイレーンの歌声に魅了されるオデュッセウス
人魚から裸婦へと変身し男を誘惑するセイレーン
叙事詩に忠実に描かれた男を餌食にする女怪
手を振り誘う姿を借用した魅惑のポーズ
死の深みへと誘う人魚は友人へのオマージュか?
誘惑者セイレーンに描かれた不倫相手の相貌
果実と花々が象徴する甘美な死の誘惑

第6章 パンドーラーの誘惑
禁断の箱を開ける誘惑の美少女
未来の災禍におびえる少女の眼差しと小箱
箱ではなかった「パンドラの箱」の真相
物語には語られない箱を運ぶ乙女の由来
パンドーラーに流用されたプシュケーの小箱
オリュンポスの館には登場しない容器の謎
箱も瓶も登場しない誕生の場面を描いた絵画
全ての神々の贈物と「美しき禍」の正体
人類に災厄をもたらす二人の「最初の女」
男を誘惑し災厄をもたらす「運命の女」

第7章 蛇の誘惑
エヴァをそそのかし原罪をもたらす蛇の誘惑
誘惑に負け、楽園を追われる二人の姿
巨匠の苦い思い出が証す絵画の影響関係
巨匠作を借用した官能のポーズと男性を象徴する蛇
誘惑の肢体に隠された巨匠たちのポーズ
エヴァを誘惑する蛇はアダムの最初の妻か
リリスのポーズに潜むロセッティの影
ブレイクから連鎖するエヴァを誘惑する蛇の図像
聖書の物語から逸脱する誘惑の構図

第8章 エヴァの誘惑
アダムを誘惑するエヴァの図像の秘密
受胎告知の裏に描かれた禁断の実を差し出すエヴァ
理想的な人体比率として描かれたアダムとエヴァ
予型論の復活と九頭身美女の誘惑
予型論から切り離されても引き継がれる誘惑のポーズ
蠱惑的な九頭身美女は、デューラーの油彩画を踏襲か!?
あまりに積極的なエヴァによる肉体的誘惑!
デューラーが元祖だった!? 肉体的誘惑のエヴァ
デューラーの3作品を融合させた妖艶なポーズ
ミケランジェロの蛇のポーズを借用した誘惑のエヴァ
エヴァによる西洋版・逆「壁ドン」の絵画
蛇のごとく身をよじらせながら罪へと導く誘惑のエヴァ

第9章 浴女の誘惑
美女の水浴をのぞいた王の横恋慕と犬の意味するもの
のぞき主題に描かれた等身大の美しき裸婦像
赤裸々に描かれた彩色写本の誘惑者
エヴァにも通じる誘惑者バテシバと「虚栄」の持物
ラストマンを継承したバテシバの虚飾性や娼婦の暗示
不在の王に代わる老婆からの誘惑の手紙
誘惑の手紙に逡巡する画家独創のバテシバ
美貌の誘惑者が秘めたレンブラント譲りの深い内省性
新説! レンブラントの構図で悲嘆する処女神の秘密とは
人妻か? 女神か? 区別できない覗かれる水浴の美女
魅惑の裸体像とは裏腹な、純潔堅持のポーズ
旧約聖書由来のもう一人の浴女の主題
覗かれる浴女に共通のポーズと貞節の象徴
レイプ事件を想起させる卑劣な誘惑者たち
明暗法を極めた画家が描いた、西洋版「時代劇の帯回し」
長老たちと同じ視点で覗き見る恥じらいの美女
蠱惑的なスザンナのポーズは愛妾のポーズ!?

第10章 誘いと惑わしの眼差し
誘うような、その眼差しは、何を意味するのか?
肖像画ではなかった振り向き美人の眼差し
絵画における「カメラ目線」が生み出す効果とは?
誘惑の視線を回避する困惑の視線!?
消えた男のポーズに隠された秘密とは?
絵に描かれた楽器が示す本当の意味!
2枚の絵に描かれた画中画に込められたメッセージとは?
フェルメール版ナビゲーターが投げかける視線
上目遣いの眼差しはインスタ映えの誘惑の視線!?
誘惑の上目遣いは、伝統的に聖女の神への眼差しだった!?
フェルメールの『取り持ち女』に影響を与えた作品か?
何故か売春婦に借用された聖女の眼差しとポーズ
転用され連鎖する驚きの図像連関!
海のニンフが見上げる先には何があるのか?
愛へと変換される拒絶を意味した眼差しとポーズ
求愛の眼差しを拒絶する眠りのポーズ
絵画史上、最も官能的な恍惚の眼差し

著者略歴

著:平松 洋
美術評論家、フリーキュレーター。1962年、岡山県生まれ。早稲田大学文学部卒。展覧会の企画・運営やプランニングとともに執筆活動を行い、早稲田大学エクステンションセンターなどで講師も務める。 『クリムト官能の世界へ』『名画の謎を解き明かすアトリビュート・シンボル図鑑』『ラファエル前派の世界』『バーン=ジョーンズの世界』『名画 絶世の美女』シリーズ(以上、KADOKAWA)、『「天使」の名画』(青幻舎)、『終末の名画』(学研)など、著書多数。『ギュスターヴ・モローの世界』『ムンクの世界』『ミケランジェロの世界』『クリムトの世界』(以上、新人物往来社)など、解説・監修や海外での翻訳出版を含めると著作は50冊を超える。

ISBN:9784479307266
出版社:大和書房
判型:文庫
ページ数:272ページ
定価:880円(本体)
発行年月日:2019年01月
発売日:2019年01月10日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:WFA
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:1D