出版書誌データベース

艶句の世界は、まさしく性愛・エロチシズムの珠玉である。著者が折りにふれ、目にしてきた江戸期を中心にした破礼句と呼ばれる官能的な古川柳は庶民風俗、性愛模様を粋にユーモラスに謳って、笑いを誘い、好色心をくすぐる。「白魚の力帆柱引き起こし」とか「顔が火で娘とばした事が知れ」といった、エロスの綾、美感さえ漂わせる句に親しむにつれ、江戸期の秘事の多彩さ、奥の深さに魅了され、著者の脳裏には「男と女の物語」が、あれこれ浮かび上がってきた。一時期、気功をかじった体験も味付けに、性文化の花が咲き溢れた江戸の昔に想いを馳せて、この奇想な小編は描かれた。艶句の魅力・表現を延長させた「句的な小説」とでも呼びたい。カラー挿絵付き。

著：長辻篤郎
1933年生まれ。鹿児島県出身。鹿児島県立甲南高校、西南学院大学卒業。産経新聞社記者、編集委員を経てフリージャーナリスト。旧財団法人都市交通問題調査会（浅沼清太郎理事長・元警察庁長官）発行の都市交通・駐車場問題の専門紙編集長を兼務。「？公」の筆名で執筆活動も。著書には『入れ歯一心』『父子鷹・入れ歯一心』など。

絵：柳たかを
1949年生まれ。大阪府出身。立命館大学卒。在学中、1年の時、著名漫画家手塚治虫のデビューに深くかかわったマンガ誌（漫画界の重鎮酒井七馬・監修）の編集スタッフに採用され、漫画家の道へ。早々に大阪新聞募集のマンガ投稿で注目される。1983年には「第5回読売国際漫画大賞」のグランプリ受賞。雑誌「上方芸能」に「思い出ほろほろ劇場」を連載。一時期、10年間にわたり宝塚造形芸術大学（現宝塚大学）のマンガコースで教鞭も。