〈目次〉
はじめに
序章 今日の心理療法の在り方
1 精神分析による「治療」概念の越境
2 ユング心理学における「個性化の過程」の概念
3 神経症による新しいこころの「治療(セラピー)」の創造
4 心理療法の「基部構造」としての「自己関係」「自己意識」
5 今日における「サイコロジカル・インフラ」の消失
6 二十一世紀における「今日の心理療法の在り方」
第I部 心理療法と「近代」――ユングの三つの夢を通して
第1章 神話的世界へのイニシエーション――ファルスの夢
1 ファルスの夢
2 「人喰い」としてのキリスト
3 地下の世界へのイニシエーション
4 王と王の息子
5 あれが人喰いなのよ
第2章 「近代の意識」の本質――影入道の夢
1 影入道の夢
2 No.1人格とNo.2人格
3 あかりの位置――イニシエーションの新しい在り方
4 心理学における「自然」
5 心理学と「近代」
第3章 神話的世界の埋葬――家の夢
1 家の夢
2 フロイトとの出会いと連想実験
3 神話的世界への没入と精神分析運動からの離脱
4 古き「異端」への傾斜と個人神話の発見
5 神話的世界の埋葬――「近代」という時代精神に課された課題
6 ユング以降を生きるわれわれの課題
第II部 心理療法における「近代」と「前近代」
第4章 心理療法の始まりと「意味の病」
1 近代の心理療法と近代以前の呪術・シャーマニズム
2 「病の意味」と二つのブラックボックス
3 無意識の発明
4 意味の病
5 おわりに
第5章 心理療法と錬金術の論理
1 自然に反する作業(opus contra naturam)
2 結合と分離の結合
3 錬金術師の意識
4 「石(ラピス)」としてのイメージ
5 汝の内以外に汝の救いなし――眼前の「レトルト」への専心
6 心理療法の「方法論」としての「前近代」
第6章 心理療法の本性としての〈非治療性〉
1 医学と心理療法
2 真理へと至るための「想起(ana-mnesis)」
3 事象の背後に動くものを「見通す」心理学的診断
4 「転倒した世界」としての心理療法
5 瞬間の「出会い」とその無限の反復――「見立て」から「治療」へ
6 心理療法の全体解としての「心理学的診断」
第III部 心理療法と「現代の意識」
第7章 心理現象としての解離
1 ヒステリー性せん妄を呈したある症例から
2 「近代の意識」と「解離」のかかわり
3 「解離という病」の自己展開
4 解離性障害の心理療法
5 おわりに――解離性障害と発達障害とが形成する「スペクトラム」
第8章 発達障害は心理療法をどう変えたのか?
1 「対象」によって常に改訂されるという心理療法の本性
2 「発達障害」による心理療法の無効化
3 「発達障害」の心的世界――未だ生まれざる者たちのこころ
4 「発達障害」による心理療法の改訂
5 おわりに
第9章 ユビキタスな自己意識とその心理療法
1 今日における新しい意識の在り方
2 二世界構造をもたないユビキタスな自己意識
3 ユビキタスな自己意識の精神病理
4 「心的未生」の心理療法における留意点
5 おわりに
終章 心理療法の終焉
1 心理療法という「共同体」
2 心理療法への社会制度の介入――裁判と保険
3 「科学」としての心理療法
4 リスク回避とコストパフォーマンス重視の「治療」と「訓練」
5 心理療法の非科学性・非効率性
6 心理療法が夢から醒めること
補章 心理療法家に求められるもの――カフカの『掟の門』をめぐって
1 心理療法家の資格
2 門口で立ち尽くすこと
3 内面化された基準にふれること
4 眼前のものへのコミットメント
5 日常の意識を後にすること
6 「個別性」に目覚めること
7 心理療法において「変わらぬもの」と「変わりゆくもの」
おわりに
文献
索引