Ⅰ 西洋の文明が未来を開く――原初の福澤諭吉
1「福澤諭吉の時代」としての近現代日本
新しい時代の始まり、福澤精神の再生/時代は福澤諭吉に何を求めたか?/一身にして二生を経
るが如く――実体験と耳目の彼方
2 距離と時間が動く!――福澤諭吉の衝撃を追体験する
文明の目に見える姿、電信/文明の速度、蒸気車/文明の二つの顔、科学技術と社会福祉
3 彼方の現実へ---福澤諭吉の選択
世界一家・五族兄弟/文明の未来像、万国博覧会/歩は踏み出された、どこに向かって?
Ⅱ 文明の利器「実学」――福澤諭吉の現実主義
1 文明とその外にあるもの
自由と通義、文明のもう一つの顔/文明と野蛮、新しい価値の現出/文明への第一歩、啓蒙の実践
2 理想への呼びかけから現実へ
姿を見せた理想の片鱗――『啓蒙手習之文』/「地球の文」は何を呼びかけたか?/『学問のすゝ
め』――そこに書かれていることを読む(その一)
3 一身独立して一国独立する事
『学問のすゝめ』――そこに書かれていることを読む(その二)/文明の理想から現実の認識へ――思想
と実践の転機/『文字之教』――「なぜ?」ではなく「なのだ!」
Ⅲ 自由民権をめぐって――福澤諭吉の人間観
1 世事を論ぜず実践あるのみ
「一国独立」は福澤諭吉に何を失わせたか?/激動の時代、実践の共同体/維新の内戦から新たな内戦へ
2 士族の叛乱、土民の一揆
日本型文明開化が最初の危機に直面する/叛乱のエネルギーを別の力に――『分権論』/あらためて、「士族」とは何か?
3 民権は国権のために――指し示された日本の進路
自由民権運動の渦の外で/百姓町人ハ豚ノ如キモノナリ/内乱を転じて外戦
Ⅳ なぜ「脱亜論」か?――福澤諭吉の世界像
1 自然淘汰説と人類の文明化
天賦人権か、優勝劣敗か/福澤門下生の自由民権/妄想は果して人間社会に有害なるや
2 東進する西洋、変乱の朝鮮
『時事新報』創刊と新たな啓蒙活動の開始/緊迫するアジア情勢の只中へ/日本はすでに盟主なのだ
3 アジアを文明化する道へ
東洋ノ政略果シテ如何セン/脱亜の宣言は何を宣言したか/文明の戦争、日本臣民の覚悟
Ⅴ 象徴天皇制と日本の進路――福澤諭吉とユートピア
1 兵馬の戦に勝つ者は
新領土「台湾」とその住民たち/台湾島民の処分甚だ容易なり/「支那の大統領」と万民平等主義
2 我帝室ハ日本人民ノ精神ヲ収攬スルノ中心ナリ
自由民権思想にとって天皇とは?/『帝室論』――その天皇像と人民像/文明国家と天皇制――『文明論之概略』の危惧
3 いまはまだない現実---福澤諭吉の彼方へ
帝室に精神を収攬されない人びと/「一八年戦争」の時代と福澤諭吉の天皇制論/「天は人の上に人を造らず」再考
註
あとがき---笑うべき三つのエピソードを添えて