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ロスト・イン・パンデミック 失われた演劇と新たな表現の地平

監:早稲田大学坪内博士記念演劇博物館
編:後藤 隆基

紙版

内容紹介

演劇の灯は消えない――
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大によって、何が失われ、何を得たのか。
そして、この先の来るべき演劇の形とは―
100人をこえる舞台関係者の声をあつめ、コロナ禍の記憶を記録する。

コロナ禍と舞台芸術についてふり返り、検証するといった営為は、ほんとうに事態が収束し、完全なかたちでなくとも、世界が落ち着きを取り戻した時点で、はじめて可能になるのだろう。けれども、いつか来るべきその日のために、この一年余の時間を、いま、記録にとどめておきたいと思う。ひとつひとつの記憶までもが失われぬうちに。それが、次の時間につながることを祈りながら。
演劇の灯は消えない―― 希望だけを安易に訴えられない切迫した現実を前に立ち尽くしてしまう瞬間もある。それでも、コロナ禍の苦境に立ちながら、劇場は扉を開け、舞台は幕を上げてきた。数多の制約をこえようとする新たな試みもうまれている。
希望と絶望のあいだを行きつ戻りつし、演劇そのものの存在や私たちの世界が脅かされている今だからこそ、後の時間を照らすための光の一片として、本書をご覧いただければ幸いである。(本書「序にかえて」より)

目次

 序にかえて
 * * *
 コロナ禍の社会と演劇 近藤誠一
 人間には芸術が必要なのだ 緒方規矩子
 反面教師コロナ 矢野誠一
 コロナとわたし 大笹吉雄
 コロナ禍とシェイクスピア 松岡和子
Ⅰ 失われた公演と舞台の再開 ※図録編
Ⅱ 二〇二〇年の演劇
[座談会]経済的損失・支援策・興行市場 細川展裕・福井健策・瀬戸山美咲・山口宏子
[インタビュー]歌舞伎は、不死鳥のように 安孫子正
        奇跡の一か月を創 池田篤郎
        原動力は「怒り」だった 堀義貴
        「2・5次元ミュージカル」の強みが生きた 松田誠
        「芝居で食べていく」ために 吉田智美樹
[対談]小劇場の現場から 本多愼一郎・那須佐代子
[インタビュー]エンターテインメントの土台を支える 吉田祥二
[対談]イキウメ式オンライン活用術 前川知大・中島隆裕
[インタビュー]オンライン歌舞伎で脚光を浴びた竹本の演劇性 竹本葵太夫
        歌舞伎の伝統を残していく使命 四代目 中村梅玉
* * *
孵化/潜伏するからだ 相馬千秋
Ⅲ 現場からの声
阿部海太郎/石川彰子/伊藤達哉/伊藤雅子/戌井昭人/井上麻矢/井上芳雄/岩崎加根子/荻野達也/奥秀太郎/堅田喜三代/加藤健一/加納幸和/河合祥一郎/川村毅/観世銕之丞/嶽本あゆ美/木ノ下裕一/桐竹勘十郎/串田和美/熊井玲/倉持裕/小山ゆうな/齋藤雅文/坂手洋二/シライケイタ/白井晃/鈴木聡/関美能留/瀬戸山美咲/高萩宏/谷賢一/タニノクロウ/内藤裕子/永井多恵子/中村茜/波乃久里子/奈良岡朋子/西川信廣/西川箕乃助/西久保有里/野上絹代/野村萬斎/野村万作/蓮池奈緒子/林与一/坂東玉三郎/福島明夫/藤川矢之輔/松本白鸚/麿赤兒/水谷八重子/宮城聰/やなぎみわ/山本卓卓/宮崎刀史紀/流山児祥/渡辺えり/渡辺弘/STAGE BEYOND BORDERS/ネットTAM
Ⅳ パンデミックと演劇 ※図録編
 近世/疫病と近世演劇――東西興行界と安政五年 原田真澄
 近代/明治大正期のインフルエンザ流行と演劇――お染風とスペイン風邪 後藤隆基
Ⅴ コロナ禍の演劇
 パンデミックとグローバリゼーション 吉見俊哉
 コロナ禍で待ちながら――不条理の芸術と人間の尊厳について 岡室美奈子
 災禍が生き返らせるもの 内田洋一
 観客席からみたコロナ禍の舞台 山口宏子
 コロナ禍と伝統芸能 児玉竜一
 オンラインと共存し始めた演劇の現場から 伊達なつめ
 消えた新作ラッシュ――コロナ禍中のミュージカル界 萩尾瞳
 コロナ禍と小劇場 徳永京子
 大衆演劇は強い 下野歩
 コロナ禍の児童青少年舞台芸術 長田(吉田)明子
 新型コロナウイルスの高校演劇への影響 工藤千夏
 試されているのは誰なのか
  ――コロナ禍の大学で「演劇を学ぶ」ということ 多和田真太良
 新型コロナウイルス禍と伝統芸能と保存技術 前原恵美
 劇場等における感染拡大防止対策としての換気調査と飛沫観測 奥田知明
Ⅵ 資料
 〈失われた公演〉リスト抄
 新型コロナウイルスと演劇年表
 出典リスト

著者略歴

監:早稲田大学坪内博士記念演劇博物館
演劇博物館は、1928(昭和3)年10月、坪内逍遙が古稀の齢(70歳)とシェークスピア全集の完訳を記念して、各界有志の協賛により設立された。日本国内はもとより、世界各地の演劇・映像の貴重な資料を揃えている。錦絵48,000枚、舞台写真400,000枚、図書270,000冊、チラシ・プログラムなどの演劇上演資料120,000点、衣装・人形・書簡・原稿などの博物資料159,000点、その他貴重書、視聴覚資料など、およそ百万点にもおよぶ膨大なコレクションは、80年以上培われた“演劇の歴史”そのものといえる。建物は、1987年(昭和62年)には新宿区有形文化財にも指定された。演劇人・映画人ばかりでなく、文学・歴史・服飾・建築をはじめ、様々な分野の方々の研究に貢献している。
編:後藤 隆基
早稲田大学坪内博士記念演劇博物館助教。1981年、静岡県生まれ。立教大学大学院文学研究科日本文学専攻博士後期課程修了。博士(文学)。専門は近現代日本演劇・文学・文化。著書に『高安月郊研究――明治期京阪演劇の革新者』(晃洋書房)、共著に『演劇とメディアの20世紀』(森話社)、『新聞小説を考える――昭和戦前・戦中期を中心に』(パブリック・ブレイン)、『興行とパトロン』(森話社)、『〈ヤミ市〉文化論』(ひつじ書房)ほか。

ISBN:9784394190226
出版社:春陽堂書店
判型:B5
ページ数:320ページ
定価:1800円(本体)
発行年月日:2021年06月
発売日:2021年06月28日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:AT