鳥の歌、テクストの森
著:髙山 花子
内容紹介
ときに空を舞い、ときに歌をうたい、ときに色彩ゆたかな羽を纏う鳥。世界中のありとあらゆる土地に生息するこの夥しい種類の鳥たちは、その起源や進化の謎、多彩な形態、さえずりの美しさから、はるかむかしから現在に至るまで、ひとびとの心を惹きつけ、古今東西のさまざまなテクストに、その姿が描かれ、記録されてきた動物であると言えるだろう。本書は鳥の歌や声がどのように作家によって聞かれ、音楽家によって追求されてきたのか、いくつかのテーマにもとづいて、テクストの森の中で鳥の声に耳を澄ますように紐解く。
目次
はじめに
Ⅰ 祈るように鳥たちの声を聞く――大江健三郎
一 鳥に由縁ある者たち 『個人的な体験』
二 クイナのエピソードと捨子 『静かな生活』
三 鷲から鷹の形象へ 『頭のいい雨の木』
四 鳥のテーマの変奏 『燃えあがる緑の木』
Ⅱ 鳥の歌声は響かない――石牟礼道子
一 空を飛ぶ鳥、鳴かない鳥 『苦海浄土』
二 詩篇に描かれる鳥 「死民たちの春」
三 歌われる鳥 『椿の海の記』から『あやとりの記』へ
四 森と湖畔に響く声 『天湖』と『水はみどろの宮』
五 奇跡の鳥、使いの鳥 『アニマの鳥』に向かって
Ⅲ 日常と非常をゆきかう鳥――泉鏡花
一 鳥を待つ風景 『高野聖』あるいは「化鳥」
二 鳥たちの語り 「春昼」、「春昼後刻」、「海の使者」
三 平凡な鳥の声、取り憑く神の声 「山吹」と「多神教」
四 庭先の雀たち 「二、三羽――十二羽、三羽」
五 回帰する化鳥のイメージ 「神鷺之巻」
六 日常非常の往還 「露宿」
Ⅳ 鳥と音楽、そして映画――武満徹
一 鳥を待つ風景 『音、沈黙と測りあえるほどに』
二 《樹》とともにある歌 《鳥は星形の庭に降りる》
三 匿名の世界へ 映画音楽
四 祈りについて ジャズ
五 神に対する距離 「樹の鏡、草原の鏡」
Ⅴ 譜面に棲まう鳥たち――オリヴィエ・メシアン
一 鳥のモチーフ 《世の終わりのための四重奏曲》
二 鳥の様式 『音楽言語の技法』
三 日本の鳥への眼差し 「軽井沢の鳥」
終章 鳥のように話す声、あるいは非言語――モーリス・ブランショ
一 モーリス・ブランショと鳥の歌 『謎のトマ』
二 メシアン、それからデ・フォレ 『サミュエル・ウッドの詩』
三 非言語のほうへ 『モロイ』
出典
あとがき