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公共宗教論から謎めいた他者論へ

著:磯前 順一

紙版

内容紹介

東日本大震災後の公共と宗教の議論が見落としたのは、天皇制のような公私を包摂する法外な「謎めいた他者」の主体への影響である。村上春樹やオウム以降の宗教学、戦後民主主義を批評することで、公共空間を考察する。著者の宗教学に関する最後の日本語論集。

目次

序 章 批評行為とは何か――宗教概念論から公共宗教論、そして謎めいた他者論へ
 はじめに
 一 宗教概念論の始まり
 二 宗教概念あるいは宗教学の死
 三 宗教概念論の展開(1)――世俗主義批判と情動論
 四 宗教概念論の展開(2)――東アジア論
 五 宗教的主体化論
 六 他者論的転回

第一章 公共宗教論――天皇・国民・賤民
 はじめに――「宗教概念あるいは宗教学の死」の後で
 一 公共性の禁忌
 二 他者なき他者
 三 剥き出しの生と公共性
 四 主体性論から主体化論へ
 五 神仏の声を聴く
 六 傷ついた宗教
 七 出没する幽霊たち
 八 「弱さ/弱者」と「強さ/強者」
 おわりに――「信仰」 宗教を信じ切るとは

第二章 酒井直樹の翻訳論――謎めいた死者のまなざし、そしてざわめく声
 一 翻訳論としての「死者のざわめき」
 二 翻訳不能という事態
 三 主体化過程としての翻訳論
 四 謎めいた他者との転移論
 五 不均質な複数性の公共空間

第三章 タラル・アサドの翻訳不能論――ポストコロニアル研究の遺産
 一 世俗主義による翻訳
 二 アサドの初期翻訳論――人類学批判として
 三 翻訳論におけるアサドの位置

第四章 出雲神話論――祀られざる神の行方
 一 神話化する出雲と観光ブーム
 二 近代神道を支える国譲り神話
 三 鳥取県境港の水木しげるロードへ
 四 祭主たる天皇の身体

第五章 村上春樹論――民主主義社会と隠された暴力
 一 戦後日本における暴力と民主主義
 二 『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』を読む
 三 社会における排除と犠牲
 四 闇との共存の仕方
 おわりに――他者の声を聴くとは?

あとがき 世代を超える学問――遺志の継承
各論考情報一覧

著者略歴

著:磯前 順一
1961年、茨城県生まれ。静岡大学人文学部日本史・考古学専攻卒業。東京大学大学院人文科学研究科宗教学専攻博士課程中退。文学博士(東京大学)。国際日本文化研究センター教授。著書に『記紀神話と考古学』(角川学芸出版)、『近代日本の宗教言説とその系譜』(岩波書店)、『閾の思考』(法政大学出版局)、『死者のざわめき』(河出書房新社)、『昭和・平成精神史』(講談社)など。「シリーズ宗教と差別」全4巻(法藏館)を監修。

ISBN:9784393299531
出版社:春秋社
判型:A5
ページ数:424ページ
定価:4500円(本体)
発行年月日:2022年10月
発売日:2022年10月18日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:QRA