【本書はどのような役に立つか】
「土木施工」とはどのような内容か?その答えを簡易に与えてくれるのがこの本です。
人間生活を支える社会基盤施設には、道路や鉄道、橋、トンネル、ダム、通信施設、上下水道など種々のものがあります。その施設を発案・調査・計画し、実際に品質を確認しながら建設する技術や方法の学問を「施工管理学」といいます。
わが国には建設会社が約50万社あります。それらには、技術者が数人の小さな会社から数万人の社員がいる大会社があり、他にも住民サービスのための官公庁、および設計などを手掛けるコンサルタントなど種々のものがあり、千差万別の工事を担っています。その業務のひとつである土木施工では、最新のAIやコンピュータを駆使した自動化・無人化や、遠隔操作の建設機械などを用いた各種の最新工法が用いられています。一方、地方の工事や、東南アジア・中近東などでのODAや青年海外協力隊など、日本が技術協力として行っている工事では昔からの工法も数多く採用されています。
以上述べたように、土木施工の分野は大変広い領域を含んでいます。最先端の技術も基礎的な原理・工法を基盤として成り立っており、複雑なプログラムもその理解なくして実践は不可能です。
土木技術者にとって、工法の選択や施工の順序、および建設機械や作業員の配置など、判断を迫られる機会が多くあります。その際、専門知識を豊富に持っていることは、より良い選択・判断が可能となり、品質の良い構造物を早く・安く・しかも安全に作ることができます。
本書はそれらの基礎として、建設やコンサルタントの技術者が身につけておかなければならない基礎的事項を学習するものであり、高専をはじめ大学・短大・高校の教育、およびこれから土木技術者を志す方に活用していただくことを念頭に執筆しています。また、本書は土木施工管理技術検定にも役立つ内容といえます。
【本書の特徴および内容】
本書は、土木工事を行う方法や手順などを記しており、調査・試験から各種の工法や技術および考え方などを、豊富な図表・写真やイラストを用いてわかりやすく解説しています。また、各章の演習問題では、それぞれの習熟度が確認できます。3人の著者はいずれも民間企業および教育機関を経験しており、実務経験も豊富です。
主な内容は、以下のとおりです。
1章では施工体系全般の説明と、施工に際してまず求められる環境関係の調査・試験・基準について詳述しています。
2章は近年の労働力不足や、生産性・品質向上の観点から進展が著しい建設機械の運営管理をはじめ、無人航空機(UAV)やAIなどの情報通信技術(ITC)を活用した無人化や自動化の要求が高い情報化施工について述べています。
3章から5章は、一般の多くの工事に関係深く汎用性の高い技術である土工・基礎工・コンクリート工について、一方、6章と7章では、特殊な専門性が要求されるトンネル工やダム工などの用語から工法などについて説明しています。
続く8章と9章では施工計画を立案する手順から種々の施工管理の手法を解説しています。