出版社を探す

実践 機械システムの振動

実機振動問題の簡易解析

著:松下 修己
著:小林 正生

紙版

内容紹介

【著者からのメッセージ】
著者らがコンサルタント業務の中で実際に遭遇したトラブルとその解決策や,講習会で話題になったテーマを整理しまとめたものです。制御工学を含むより広い視野から振動全般を念頭に執筆しました。機械振動関係の仕事に関わる人にとって,振動問題への遭遇とその解決業務は,ほぼ全員が辿る道と思われ,本書がその役に立つことを望むばかりです。

【各章の説明】
第1章…実機のモデル化としてモード解析が有名であるが,軸受やシールのように回転数で変化する境界条件には不向きである。代わるものとして,境界条件の変化に強いGuyan法やモード合成法を推奨し,得られたモデルの精度を比較し,両者の優劣を論じた。
第2章…油軸受の動特性に関し,クロスばねKcはダイレクト減衰Cdに回転数Xを乗じた剛性のm倍,すなわちKc=mXCdと考えられる。この状況では,クロスばねの振動不安定化要因mXは回転上昇とともにその勢いを増し,自励振動が発生する。これは「Bently- Muszynskaのmモデル」と呼ばれる。この考えを踏襲,発展させた安定性診断法を提案する。
第3章…タービン翼振動と回転軸のねじり振動は翼軸連成振動問題として有名で,ISO 22266で規定されている。しかし,この考えは不十分で,軸の縦振動もこの連成に加えることで精度が向上することを本章で例証する。また,羽根車振動と回転軸の横振動の連成振動問題にも言及する。本章では,現行での最高レベルの連成解析の根幹を紹介する。
第4章…最も腐心した章で,本書の特長をなす。ニュートンの運動方程式から始まる従来の考え方に代わって,ここではラプラス変換後のs領域のブロック線図で系を表す。n回微分をsnに頭を切り替えて,システムを伝達関数で表すため機械系の視点は制御系の知見に移る。同時に,従来の固有値解析は開特性(一巡伝達関数)の分析・チューニングに変わる。そして,実機で遭遇するであろう機械系特有の弾性振動問題の解決法が制御系アプローチから解釈される。これを「知能機械の力学」と呼ぶ。
第5章…動吸振器は強制振動の共振振幅低減のために有効で,その最適設計理論は広く知られている。しかし,自励振動防止にも有効であることを最近の研究で再確認,最適設計法を導出したので本章で紹介する。
第6章…ロータ系では,油軸受動特性が回転数に依存するため,厳密には,複素固有値計算については回転数ごとに実施しなければならない。しかし,その回転数変更のたびに計算する現状の方法では無駄が多いので,回転数・境界定数の変更ごとに特性方程式を満足するように「少しずつ固有値を修正していく」という観点から,固有値解を追跡する手法を開発した。回転数を時間と見て,固有値解を連続的に時刻歴応答のように求める方法である。
第7章…v_BASE に収められている事例から,モータの音響騒音やTPJB,蒸気タービン制御弁,アクティブ防振制御,モータ駆動系ねじり振動など5事例を選び,演習問題として解説した。

目次

1.ロータ振動系の縮小モデル化と精度
1.1 Guyan(グヤン)縮小法の作り方と精度
1.2 モード合成法による縮小法の作り方と精度
1.3 Guyan法とモード合成法の精度比較
1.4 連続体の離散モデル化
1.5 モード分離

2.油膜軸受ロータ系の安定限界の簡易近似予測
2.1 剛体ロータ(1自由度系)と簡易安定判別
2.2 弾性ロータ(2自由度系)と不減衰固有振動数
2.3 弾性ロータ(2自由度系)と簡易安定判別
 2.3.1 ζd<<1の場合
 2.3.2 ζd>>1の場合
2.4 3円板を有する弾性ロータ系の計算例
2.5 軸受動特性異方性の影響
 2.5.11 自由度系
 2.5.2 2自由度系
 2.5.3 計算精度の検証
2.6 Muszynska(ムジンスカ)ロータ系の数値計算例
2.7 ケーシングホワールの数値計算例

3.翼軸連成系の総合的振動解析
3.1 モード合成法モデルの連成質量
3.2 3次元有限要素法(3D-FEM)を活用したモード合成モデル化手法
3.3 翼のモード合成法モデル

4.振動制御技術者向けメカトロニクスの基礎
4.1 ブロック線図
4.2 制御対象の伝達関数Gp(s)
4.3 制御器の伝達関数Gr(s)
4.4 開特性Go(s)および閉特性Gc(s)
4.5 安定性評価
4.6 振動応答解析

5.動吸振器の最適設計
5.1 強制振動に対する共振振幅低減の最適設計
 5.1.1 P,Q点の応答の高さを揃える
 5.1.2 P,Q点で極大になる減衰(最適減衰の付加)
 5.1.3 注意点:動吸振器の最大振幅
5.2 自励振動に対する安定化シミュレーション
 5.2.1 負性抵抗のモデル
 5.2.2 動吸振器の最適設計
5.3 自励振動に対する安定化の最適設計指針
 5.3.1 運動方程式と実モーダル解析
 5.3.2 動吸振器単体での固有周波数~2の最適な選択
 5.3.3 動吸振器のフィルタ特性
 5.3.4 動吸振器のフィルタ特性と開特性の関係
 5.3.5 開特性とベクトル軌跡
 5.3.6 動吸振器減衰定数の最適な選択
 5.3.7 動吸振器パラメータのロバストな選択
0
6.トラッキング解法
6.1 固有値解析の問題点と解決へのアイディア
6.2 アルゴリズムの基本
6.3 計算例
6.4 トレースの定理
6.5 2Dトラッキング解法
6.6 3Dトラッキング解法

7.実機振動問題(v_BASE)の事例研究
7.1 モータの音響騒音
 7.1.1 問題モータ電磁振動と動静翼干渉問題の類似性
 7.1.2 問題周期構造物系の多点モード加振
7.2 ティルティングパッドジャーナル軸受(TPJB)
 7.2.1 問題TPJ軸受試験機におけるオイルホイップ
 7.2.2 問題TPJ軸受形ロータのオイルホイップ
7.3 油圧機器などの流力弾性振動
 7.3.1 問題蒸気タービンのバルブ制御機構(理想流体)
 7.3.2 問題蒸気タービンのバルブ制御機構(体積弾性率を考慮)
 7.3.3 問題ポンプバランスピストンの制御機能
7.4 アクティブ防振
 7.4.1 問題強制振動の低減策:受動および能動制御(
 7.4.2 問題強制振動の低減策:受動および能動制御(
7.5 パワーエレクトロニクスの弾性振動制御
 7.5.1 問題電機子制御形DCモータの速度制御
 7.5.2 問題電機子制御形DCモータとねじり弾性振動制御

付録
付録1.式(2.13)および式(2.16)の導出
付録2.式(2.33)の導出
付録3.翼のモード合成法モデル化手法
付録3.1 変数と定義
付録3.2 全翼系の運動方程式
付録3.3 翼のモード合成法モデル
付録4.ゲイン交差周波数と固有振動数
付録4.1 時定数xで表す1次遅れ系
付録4.2 固有振動数ωnと減衰比ζで表す2次遅れ系
付録4.3 ゲイン交差周波数および位相余裕とオーバシュート評価の関係
付録5.位相余裕と弾性モードの減衰比
付録5.1 システムの記述と問題点
付録5.2 モード別開特性と弾性モード減衰比
付録5.3 Q値計測
付録5.4 感度関数ピークから見たモード減衰比
付録6.臨界点から見た開特性の距離D=1+Go

引用. 参考文献
索引

ISBN:9784339046700
出版社:コロナ社
判型:A5
ページ数:240ページ
定価:3500円(本体)
発行年月日:2021年07月
発売日:2021年07月02日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:TGM