出版社を探す

機械系 教科書シリーズ 8

計測工学

改訂版

新SI対応

著:前田 良昭
著:木村 一郎
著:押田 至啓

紙版

内容紹介

 計測の類語には、計る、測る、量る、計量、測定、測量、実測、歩測、目測、測地、測深、観測、天測、秤量、量水、検温、計時などがあり、大昔から今日に至るまで、計測が様々な分野に関係していることが分かる。紀元前2600年頃に建てられたピラミッドの4辺は精確に4方位を示し、側壁と底面のなす角はほとんど52度であることが知られており、当時すでに高度な計測技術があったと推定される。また14~16世紀のルネッサンス期の3大発明は遠洋航海術、火薬および印刷術であるが、遠洋航海術の確立のためには羅針盤だけでなく精密天文観測用具と航海歴とが必要であった。18世紀後半に始まるイギリス産業革命は19世紀には急速に世界に伝わり、大きな工業革命となり、さらに同時期には我々が恩恵を受けている電気文明の歴史が始まり、現在の高度な技術に至っている。特に第2次大戦後、工学分野に限ると、機械系のエンジニアにも不可欠なプロセス制御やサーボ機構などの制御技術が急速に発展し、同時に計測技術の重要性が高まった。制御は、ある物理量を目標値に一致させる動作を行うため、電流、電圧、変位、速度、加速度、温度、圧力、液位などを測ることが必要となった。近年注目されている人工知能(AI)による認識にしても、深層学習としてニューラルネットワークを用いているが、その学習用データに様々な計測データが必要とされる。このように計測技術が人類の自然科学の発展に大きく貢献してきたことは明らかである。しかし、一口に“計測“と言っても、電気計測、機械計測、化学計測、土木計測、医用計測、環境計測やヒトの感性を測る感性計測と、その範囲は極めて広い。
 本書は機械系の学生を対象としていることを考慮し、長さを測るマイクロメータなどの機械式測定器具から、ロボットなどのサーボ機構における各種センサ、光や超音波を利用したセンサ、さらに画像計測に至るまで、機械工学を学ぼうとする学生にとって、時代に沿った計測工学に焦点を当てた内容となっている。さらに得られた計測データをどのように処理し、解析を行うかを丁寧に説明している。計測される物理量を電気信号に変換し、信号処理・解析がなされるので、電気の知識を必要とするが、各種センサの原理も含めて基本原理は記しており、その内容も高校の物理程度であるので、機械系の学生でも十分理解できると考える。これを機会に、機械系の学生の皆さんには、電気はもちろんであるが、そのほかの分野にも興味をもって、幅広い知識を習得されることを期待したい。

目次

1.計測とその目的
1.1 科学・技術と測定
1.2 計測工学とは
1.3 計測機器の利用形態
 1.3.1 工業プロセスや操作の監視
 1.3.2 工業プロセスや操作の制御
 1.3.3 実験的工学解析
1.4 本書の目的

2.計測の基礎
2.1 単位と標準
 2.1.1 SIの基本単位とその標準
 2.1.2 物理量間の演算と次元,次元式
2.2 測定の基本的手法
 2.2.1 直接測定と間接測定
 2.2.2 絶対測定と比較測定
 2.2.3 偏位法と零位法
2.3 計測の計画と実施―計測システム計画―

3.計測データとその処理
3.1 測定誤差
 3.1.1 誤差の原因
 3.1.2 測定値の統計的分布
 3.1.3 誤差の回避・低減
 3.1.4 偶然誤差の性質と正規分布
3.2 測定精度
 3.2.1 正確さと精密さ
 3.2.2 計測機器の確度
3.3 測定データの統計的処理
 3.3.1 有効数字
 3.3.2 算術平均
 3.3.3 誤差の伝播
 3.3.4 最小二乗法
演習問題

4.計測システムとシステム解析
4.1 計測システムの基本構成
 4.1.1 情報源
 4.1.2 検出部
 4.1.3 信号処理部
 4.1.4 表示部
 4.1.5 制御装置
 4.1.6 信号伝送
4.2 計測システムにおける信号変換
 4.2.1 アナログ信号とディジタル信号
 4.2.2 アナログ信号処理
 4.2.3 ディジタル信号処理
 4.2.4 信号の表示と記録,記憶
4.3 計測システムの特性とシステム解析
 4.3.1 静特性
 4.3.2 動特性とシステム解析
演習問題

5.信号変換の方式とセンサ
5.1 機械式センサ
 5.1.1 機械的拡大
 5.1.2 弾性変形
 5.1.3 サイズモ系
 5.1.4 ジャイロ効果
5.2 電気電子式センサ
 5.2.1 抵抗変化
 5.2.2 容量変化
 5.2.3 電磁誘導
 5.2.4 圧電効果
 5.2.5 ゼーベック効果
5.3 流体式センサ
 5.3.1 流体静力学
 5.3.2 ベルヌーイの定理
 5.3.3 カルマン渦
5.4 光学式センサ
 5.4.1 光学的拡大
 5.4.2 光干渉
 5.4.3 モアレ法
5.5 その他の方式
 5.5.1 ドップラー効果
 5.5.2 波動の伝搬
 5.5.3 相関法
演習問題

6.計測技術の開発と応用―筆者の研究事例から―
6.1 ディジタル画像処理を用いた切削工具刃先形状の測定
 6.1.1 二次元すくい面画像による工具刃先状態の測定
 6.1.2 測定システムの構成
 6.1.3 データ処理の手順
 6.1.4 試作システムの性能と応用性
6.2 温度場と速度場の可視化情報計測
 6.2.1 感温液晶法
 6.2.2 可視化実験
 6.2.3 温度場の計測
 6.2.4 速度ベクトル場の計測
 6.2.5 二次元自然対流への適用
 6.2.6 三次元温度・速度計測
6.3 スペックルシアリング干渉法によるたわみ勾配の測定
 6.3.1 位相シフトスペックルシアリング干渉法
 6.3.2 位相シフトスペックル干渉法の精度
 6.3.3 位相シフト誤差の補正

引用・参考文献
演習問題解答
索引

ISBN:9784339044850
出版社:コロナ社
判型:A5
ページ数:220ページ
定価:2700円(本体)
発行年月日:2020年09月
発売日:2020年10月20日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:TBC