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バーチャルリアリティ学ライブラリ 2

神経刺激インタフェース

編:日本バーチャルリアリティ学会
編著:青山 一真
他著:安藤 英由樹

紙版

内容紹介

【読者対象】
本書は,バーチャルリアリティ(VR)やヒューマンコンピュータインタラクション(HCI)に関心を寄せる方や,脳科学,神経科学に興味のある方を対象としています。本書はVRやHCIの応用を主眼に置いて,神経や脳に働きかける技術である神経刺激インタフェースを一つの領域とし,高校生や社会人,研究者など多くの方が分かりやすいように解説しています。

【書籍の特徴】
VRやHCIに関連する書籍は多数出版されており,その中の一部として神経刺激に関する解説も行われてきました。本書はこれまでに焦点の当たってこなかった神経刺激に主眼を置き,触覚や味覚,前庭感覚,脳をはじめとする様々な神経系に働きかける技術がどのように発展してきたのか,どのようにVR・HCIの分野で活用されているのかを解説したものになっています。神経刺激はVRを題材としたSF(サイエンスフィクション)小説でも取り扱われるような技術です。読者の方は,楽しみながらVRの先端的な領域である神経刺激の領域に対する理解を深めていただけるでしょう。

【各章について】
本書は5章で構成されていますが,VRやHCIで盛んに利用されるインタフェース技術である,3章の非侵襲刺激に多くの紙面を割いています。
1章では,「神経刺激とVRの歴史」として,後述の電気刺激の歴史について解説しています。
2章では,「侵襲性と非侵襲性の刺激」として,神経刺激の分類を解説しています。
3章では,VRやHCI分野で盛んに研究されている経皮電気刺激や磁気刺激について「非侵襲刺激」として解説しています。また,この章では筋や腱,触覚,味覚,前庭感覚等多様な感覚器・効果器に関連した神経刺激について解説します。
4章では,安全に配慮した研究を実施するために「神経刺激の安全性」について解説しています。
5章では,近年急激に身近になってきている経皮電気刺激の応用について解説しています。

【著者からのメッセージ】
神経は人の情報処理機構の実体であり,VRで扱う「体験」は全てこの神経系を通して得られた感覚や神経系を通して起こした行動などによってもたらされます。VRにおいて感覚をいかにして作り出すのか,行動をいかにして誘発するのかは,非常に重要なテーマとして扱われてきました。神経刺激はこれらを実現する一つの技術であると共に,それがVRにおいて十分に活用されるには,解決すべき課題がまだまだあります。VRやHCIと共に,これから更なる発展が期待される神経刺激について,初学者から研究者までの多くの方に楽しく理解していただき,神経刺激の魅力が多くの方に伝われば幸いです。

目次

第1章 神経刺激とVRの歴史
1.1 電気刺激の歴史を学ぶ重要性
1.2 電気の発見
1.3 ライデンびんの登場と静電気研究の発展
1.4 ガルヴァーニの発見と動物電気
1.5 神経刺激装置の起こり
1.6 バーチャルリアリティへの神経刺激の応用
第2章 侵襲性と非侵襲性の刺激
2.1 侵襲性神経刺激とその研究の実施
2.2 感覚受容細胞や軸索末端に対する襲性神経刺激インタフェース
2.3 感覚や運動の神経軸索に対する侵襲性神経刺激インタフェース
2.4 脳神経に直接接続する侵襲性神経刺激インタフェース
第3章 非侵襲性刺激
3.1 非侵襲性刺激の総論
 3.1.1 非侵襲性刺激の定義
 3.1.2 末端器官や末梢神経系への刺激
 3.1.3 中枢神経系への刺激
3.2 筋電気刺激
 3.2.1 筋電気刺激の定義と原理
 3.2.2 侵襲性と非侵襲性の筋電気刺激の例
 3.2.3 筋電気刺激による身体所有感への影響
3.3 触覚電気刺激
 3.3.1 触覚電気刺激の概要
 3.3.2 指先の触覚を提示するディスプレイ技術
 3.3.3 皮膚電気刺激
 3.3.4 刺激の安定化
 3.3.5 皮膚電気刺激の応用
3.4 腱電気刺激
 3.4.1 腱がもたらす感覚と反応
 3.4.2 骨格筋周辺の自己受容器の構造と機能
 3.4.3 腱への刺激と効果
3.5 味覚電気刺激
 3.5.1 味覚の受容とおいしさ
 3.5.2 味覚電気刺激の基礎
 3.5.3 味覚電気刺激の応用
3.6 前庭電気刺激
 3.6.1 前庭電気刺激の概要
 3.6.2 GVSがもたらす平衡感覚の神経支配
 3.6.3 GVSがもたらす加速度知覚と身体応答
 3.6.4 電流刺激と前庭器官
 3.6.5 身体応答の評価手法
 3.6.6 VR等の感覚提示技術への応用
3.7 視覚電気刺激
 3.7.1 視覚電気刺激の概要
 3.7.2 眼球の構造
 3.7.3 侵襲性神経刺激による視覚提示
 3.7.4 非侵襲性神経刺激による視覚提示
3.8 嗅覚電気刺激
 3.8.1 嗅覚電気刺激の概要
 3.8.2 嗅覚の受容と情報伝達
 3.8.3 中枢神経系への電気刺激
 3.8.4 末梢神経系への電気刺激
3.9 経頭蓋電気刺激
 3.9.1 経頭蓋電気刺激の概要
 3.9.2 経頭蓋直流電気刺激
 3.9.3 経頭蓋交流電気刺激
 3.9.4 経頭蓋ランダムノイズ刺激
 3.9.5 VRにおけるTCSの利用例
 3.9.6 TCSを用いる際に考慮すべきこと
3.10 経頭蓋磁気刺激
 3.10.1 経頭蓋磁気刺激の概要
 3.10.2 刺激部位の同定
 3.10.3 刺激強度
 3.10.4 相関と因果
 3.10.5 刺激方法の種類
 3.10.6 VRにおけるTMSの利用例
 3.10.7 TMSの安全性
 3.10.8 TMSとTCSの比較
3.11 漿液分泌に影響を与える電気刺激
 3.11.1 効果器としての漿液分泌腺
 3.11.2 唾液腺への電気刺激
 3.11.3 涙の分泌を調整する電気刺激
第4章 電気刺激の安全性
4.1 電気入力の安全性
 4.1.1 電気入力の種類
 4.1.2 電気入力の危険性
 4.1.3 電流による影響
 4.1.4 電圧による影響
 4.1.5 周波数による影響
 4.1.6 時間による影響
 4.1.7 経路と身体部位
4.2 安全のために
 4.2.1 設計指針
 4.2.2 制約
第5章 神経刺激の応用
5.1 神経刺激の応用分野
5.2 XR技術と人間拡張への応用
 5.2.1 視覚電気刺激
 5.2.2 触覚電気刺激と筋電気刺激
 5.2.3 味覚電気刺激
 5.2.4 前庭電気刺激
5.3 医療・ヘルスケア・美容への応用
引用・参考文献
索引

ISBN:9784339026924
出版社:コロナ社
判型:A5
ページ数:176ページ
定価:2700円(本体)
発行年月日:2024年04月
発売日:2024年03月23日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:UB