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ひたすら楽して音響信号解析

MATLABで学ぶ基礎理論と実装

著:森勢 将雅

紙版

内容紹介

やあ,ようこそ,音響信号解析の世界へ.

音響信号解析というタイトルを見た時,きっと言葉では言い表せない「難しそう」という印象を受けたと思う.音響信号解析は,例えば信号から大きさや高さなどの情報を取り出すための理論の集合体である.1つ1つの理論を説明する数式は,大学1, 2年で学ぶ微分積分,線形代数,複素解析などの数学知識があれば証明はできる.信号処理の難しさは数式の証明ではなく,その数式が信号の何を説明しているかの解釈と,数式を計算機上で実装するプログラミング能力など,複合的な知識が求められる点にある.

◆本書の特色◆
音響信号解析の基礎的な理論に焦点を絞り,数式の導出と,その数式に対応するMATLABの実装例を併せて掲載することを重視した.章末課題はなく,プログラムを書き写すだけで実践的な解析ができるプログラムとなるようにしている.ひたすら楽するというコンセプトのもと,音響信号解析を効率的に学ぶための説明順序を再考して執筆した.将来的には理解してほしいが初見であれば詳細を読み飛ばしても良い箇所については,本文中で説明前に前置きした.まずは遠慮なく読み飛ばしながら学習を進め,読み終わった後で必要に応じて再度読んでみてほしい.

◆想定する読者◆
大学1, 2年での数学を習得した学生や技術者を想定している.音響信号に関する最低限の知識は本書の1章で説明しているので,音に特化した知識は読み始めるにあたり必要ない.プログラミングについては,MATLABの文法が分かれば最低限は問題なく,MATLAB入門のチュートリアルを終えていれば十分である.書籍内でプログラミングについての演習問題は存在しないが,「この数式の実装が何故このようなプログラムになるのか」について,各自でプログラムを動かし納得しながら学習を進めることを想定している.

◆各章のコンセプト◆
1章では本書を読み進めるために必要となる数学的知識をまとめた.2章から3章にかけて,音響信号のパワー等を取り出す基礎的な理論とプログラム,加えて音響信号解析において基盤技術となるスペクトル解析の説明まで進める.4章からは,スペクトル解析の実例を出発点として,やや高度な理論と実装を順番に説明することで,段階的に複雑な音響信号解析の手法を学べるようにした.

目次

1.基礎知識
1.1 離散信号と波形の表示
1.2 ベクトルと内積
1.3 正弦波
1.4 複素数
1.5 オイラーの公式
1.6 単位インパルス関数と畳み込み演算

2.時間領域での信号解析
2.1 離散信号を扱う上での注意点
 2.1.1 数式上の辻褄合わせ
 2.1.2 離散信号固有の性質
2.2 信号のパワー
2.3 信号の平均時間と持続時間
 2.3.1 信号の平均時間
 2.3.2 信号の持続時間
2.4 信号の簡単な雑音除去
 2.4.1 SN比に基づく信号・雑音の振幅調整
 2.4.2 移動平均フィルタ
 2.4.3 メディアンフィルタ

3.離散フーリエ変換の考え方
3.1 正弦波に関する事前知識
 3.1.1 正弦波を構成するパラメータの定義
 3.1.2 正弦波を構成するパラメータの推定
 3.1.3 パラメータ推定のプログラムによる検証
 3.1.4 周期の拡張
3.2 スペクトル解析に関する事前知識
 3.2.1 正弦波の周波数推定
 3.2.2 正弦波の重ね合わせ
3.3 離散フーリエ変換に向けた事前知識
 3.3.1 離散信号を用いた場合に対する制約
 3.3.2 複素数による係数の統合
 3.3.3 係数を計算する範囲の注意点
3.4 離散フーリエ変換
 3.4.1 離散フーリエ変換の定義
 3.4.2 高速フーリエ変換によるスペクトル解析

4.高速フーリエ変換によるスペクトル解析
4.1 簡単なスペクトル解析の例
 4.1.1 振幅スペクトルと位相スペクトルの定義
 4.1.2 正弦波のスペクトル解析
 4.1.3 ゼロ埋めによる信号長の調整
 4.1.4 パーセバルの定理による漏れ誤差の解釈
4.2 位相スペクトル解析の例
 4.2.1 単位インパルス関数を対象にした位相スペクトルの解析
 4.2.2 位相のアンラップ
 4.2.3 位相遅延
 4.2.4 群遅延
4.3 スペクトルから算出する平均時間と持続時間
 4.3.1 平均時間の算出
 4.3.2 持続時間の算出
 4.3.3 スペクトル解析に基づく解釈
4.4 スペクトル重心

5.窓関数
5.1 窓関数による信号の切り出し
 5.1.1 離散フーリエ変換の周期性に起因する問題
 5.1.2 窓関数による切り出しの数学的な解釈
 5.1.3 離散信号に対する畳み込み定理
5.2 窓関数を導入する意義
 5.2.1 窓関数の種類
 5.2.2 窓関数を用いて切り出した信号に基づくスペクトル重心の計算
5.3 窓関数の性能
 5.3.1 メインローブとサイドローブ
 5.3.2 時間周波数解析のための窓関数
5.4 時間周波数解析例で学ぶ時間分解能と周波数分解能
 5.4.1 チャープ信号の生成とスペクトル解析
 5.4.2 チャープ信号の時間周波数解析
 5.4.3 時間分解能と周波数分解能
5.5 不確定性原理

6.ディジタルフィルタ
6.1 線形時不変システム
 6.1.1 システムを構成する3要素
 6.1.2 線形性と時不変性
 6.1.3 線形時不変システムをおもに用いる理由
6.2 ディジタルフィルタの概要
 6.2.1 フィルタ処理の数学的解釈
 6.2.2 フィルタの種類
 6.2.3 その他のフィルタ
6.3 差分方程式から見る2種類のフィルタ
 6.3.1 差分方程式とFIRフィルタ
 6.3.2 IIRフィルタ
 6.3.3 IIRフィルタのスペクトル解析
 6.3.4 フィルタの接続
6.4 フィルタの解析
 6.4.1 z変換によるフィルタの安定性解析
 6.4.2 不安定なフィルタの例
 6.4.3 フィルタの因果性
6.5 窓関数法によるフィルタの設計
 6.5.1 振幅スペクトルの設計
 6.5.2 インパルス応答の計算
 6.5.3 振幅特性の検証
 6.5.4 窓関数による処理
 6.5.5 最終的な性能の評価
 6.5.6 最小位相の例題

7.信号の種類に応じた解析法
7.1 間引きによるダウンサンプリング
 7.1.1 単純に間引く場合の問題点
 7.1.2 低域通過フィルタによる高域成分の除去
 7.1.3 時間軸の補正
 7.1.4 間引きによる適切なダウンサンプリング
7.2 オクターブバンド分析
 7.2.1 オクターブバンド
 7.2.2 オクターブバンド分析の実装
7.3 等価騒音レベルの計算
 7.3.1 正弦波の周波数と知覚する大きさの関係
 7.3.2 等価騒音レベルの計算法
7.4 ウェルチ法
 7.4.1 振幅スペクトルのばらつき
 7.4.2 ウェルチ法によるパワースペクトル推定
 7.4.3 ウェルチ法の効果
7.5 周期信号解析に向けた基礎知識
 7.5.1 周期信号の定義と構成要素
 7.5.2 周期信号の生成
7.6 基本周波数推定
 7.6.1 自己相関関数の定義
 7.6.2 解析全体のアルゴリズムとプログラム例
 7.6.3 推定プログラムの構成
7.7 調波間の振幅比
7.8 今後の勉強に向けて

引用・参考文献
索引

ISBN:9784339009392
出版社:コロナ社
判型:A5
ページ数:196ページ
定価:2600円(本体)
発行年月日:2021年02月
発売日:2021年01月25日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:TBC