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探偵小説と〈狂気〉

著:鈴木 優作

紙版

内容紹介

近代は何を狂わせたか――
江戸川乱歩・小栗虫太郎・夢野久作ほか、探偵小説がいかに〈狂気〉を描いたかを読み解き、近代という時代に潜む文化と制度の裡面、そして文学によってなされた大胆な企みを明らかにする文学論。

装幀 コバヤシタケシ

目次

 序                          
  
第一部 心身における〈狂気〉         

第 一 章 狂信という心理
 ――小栗虫太郎「後光殺人事件」―― 
一 新宗教ブームと奇蹟の演出  
二 奇蹟のもたらす〈狂気〉 
三 科学による秩序の維持 
四 法水と科学的推理 
五 心をめぐる探偵小説として     

第 二 章 〈狂気〉を孕む身体
 ――夢野久作「ドグラ・マグラ」―― 
一 心理遺伝論にみる身体 
二 探偵される身体と科学思想 
三 探偵される身体による提起 
四 夢野久作と「探偵小説」      

第二部 〈狂気〉を内包する場        

第 三 章 精神病院法のもたらす探偵/犯人像の構築
 ――大阪圭吉「三狂人」―― 
 一 探偵役としての松永 
 二 松永のまなざし 
 三 語り手のまなざし 
 四 同時代の精神病院をめぐる社会状況             

第 四 章 戦後社会への批判としての〈狂気〉
 ――大下宇陀児・水谷準・島田一男「狂人館」―― 
 一 狂人館と二笑亭 
 二 黒田金之助のモデル赤木城吉と夏目漱石 
 三 文化消費/暴力のトポス 
 四 正常な世界と〈狂気〉の架橋 
 五 批判的視座としての〈狂気〉 

第三部 法制度と〈狂気〉           

第 五 章 精神鑑定という罠
 ――平林初之輔「予審調書」―― 
一 モチーフとしての予審 
二 罠としての精神鑑定 
三 司法に介入する精神医学 
四 密室としての予審          

第 六 章 自白の追求という〈狂気〉
 ――小酒井不木「三つの痣」―― 
一 欲望される自白 
二 先行する犯人識別法・探偵法 
三 自白の追求方法の模索 
四 〈狂気〉の烙印          

第 七 章 夢遊病と犯罪をめぐって
 ――浜尾四郎「夢の殺人」―― 
  一 大正・昭和初期の夢遊病言説と探偵小説 
  二 藤次郎の殺人計画 
  三 要之助の殺人 
  四 浜尾短編にみる人間関係の力学           

第四部 〈狂気〉表象の歴史性 
 
第 八 章 〈狂気〉の物語の発掘
 ――岡本綺堂「影を踏まれた女」―― 
 一 怪談と探偵小説 
  二 「病」を探偵する 
  三 モチーフとしての「影」 
  四 物語の発掘        

第 九 章 精神医学に復讐する狂女
 ――夢野久作「笑ふ啞女」―― 
   一 澄夫の人物造形 
   二 花子の人物造形 
   三 ディスコミュニケーションと身体性 
   四 自滅する澄夫 
   五 夢野作品と〈狂気〉 

第一〇章 佯狂表象の物語 
 ――岡本綺堂「川越次郎兵衛」―― 
  一 護身としての佯狂 
  二 責任回避としての佯狂 
  三 戯れとしての佯狂 
  四 風刺としての佯狂 
  五 本作の位置 
 
第五部 仕掛けとしての〈狂気〉        

第一一章 ミスリードと〈狂人〉
 ――江戸川乱歩「緑衣の鬼」――  
  一 戦争神経症から「緑色狂」へ  
  二 白虹の推理を支える〈狂気〉  
  三 菊太郎・乗杉の推理と科学性  
  四 形式への志向  
  五 不在の被害者としての〈狂人〉  

第一二章 探偵行為としての精神分析
 ――木々高太郎「わが女学生時代の罪」――  
  一 「網膜脈視症」「就眠儀式」にみる精神分析  
  二 「わが女学生時代の罪」にみる精神分析  
  三 臨床的精神分析の受容  
  四 探偵する「私」     

 おわりに  

  初出一覧  
  参考文献  
  索引    

著者略歴

著:鈴木 優作
神奈川県生まれ。立教大学大学院文学研究科博士前期課程修了、成蹊大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。2021年度成蹊大学非常勤講師(予定)。『新青年』研究会会員。

ISBN:9784336071934
出版社:国書刊行会
判型:A5
ページ数:372ページ
定価:3500円(本体)
発行年月日:2021年02月
発売日:2021年02月26日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:FB
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:1FPJ