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海外生活ストレス症候群

アフターコロナ時代の処方箋

著:鈴木 満

紙版

内容紹介

海外で精神不調。あなたはどうしますか?

 駐在、留学、ロングステイ……海外に住むという環境の変化をうけて、こころには何が起こりうるのでしょうか。新しい環境にうまく適応する人がいる一方で、不適応や精神不調に陥る人がいます。その違いはどこから起こるのでしょうか。

 また、海外ではこころの危機に瀕しても、日本語と日本文化を理解し、そのこころに寄り添えるメンタルヘルス専門家に出会える可能性は極めて低いです。多くの海外邦人が、精神医療過疎地に住んでいると言えます。では、身を守るためにどうしたらいいのでしょうか。

 新型コロナパンデミックを経験して、海外に住むことの意味合いとそのライフスタイルが変わったように感じます。本書では、下記「海外生活ストレス症候群」22症候群を挙げながら、海外でのこころのリスクマネジメントについて解説します。

【駐在員本人の場合】
1. 慢性過重労働症候群
2. 抱え込み症候群
3. 小規模事業所症候群
4. 赴任延長症候群
5. ワークライフバランス葛藤症候群
6. マルチスタンダード混乱症候群
7. サンドイッチ症候群
8. 依存助長症候群
9. 再適応困難症候群
10. 愛憎は倍増症候群
11. やむをえず単身赴任症候群
【帯同家族の場合】
12. ムラ社会症候群
13. 夫婦間葛藤顕在化症候群
14. 配偶者のキャリア分断症候群
15. アイデンティティ混乱症候群
16. 発達障害見のがし症候群
【青年期の一時渡航の場合】
17. 根拠なき楽観症候群
18. 海外モラトリアム症候群
19. 転地療法症候群
20. 海外発症の精神科救急症候群
【高齢者のリタイア後長期滞在の場合】
21. フレイル海外発症症候群
22. 老いらくの恋症候群

目次

第1章 初めての海外生活

初めての海外生活でこころに起こること
帰国を前提とした海外生活者の失うもの、得るもの
適応をめぐる環境因と素因との関係性
環境因としての海外生活
海外邦人に共通するストレス要因
環境変化に対する適応の時間的経過
適応がうまくいかなかったときの兆候とは
海外は広大な精神医療過疎地
海外で起こりうる精神不調の予防はできるのか


第2章 海外生活ストレス症候群

海外生活ストレス症候群とは
駐在員本人の場合
◇慢性過重労働症候群―いつまで続く忙しさ?
◇抱え込み症候群―余人をもって代えがたい?
◇小規模事業所症候群―ドミノ倒しに要注意
◇赴任延長症候群―赴任前と話が違います
◇ワークライフバランス葛藤症候群―何が正しいんだっけ?
◇マルチスタンダード混乱症候群―腹落ちできない価値観
◇サンドイッチ症候群―上司と部下とにはさまれて
◇依存助長症候群―時間とエネルギーを奪われる
◇再適応困難症候群―浦島太郎への共感
◇愛憎は倍増症候群―可愛さ余って憎さ二百倍
◇やむをえず単身赴任症候群―しかたないか
帯同家族の場合
◇ムラ社会症候群―噂話はインターネットより速い?
◇夫婦間葛藤顕在化症候群―今さら向き合うのが怖い
◇配偶者のキャリア分断症候群―あなたのせいでこうなった
◇アイデンティティ混乱症候群―サードカルチャーキッズ
◇発達障害見のがし症候群―もっと早く教えてほしかった
青年期の一時渡航の場合
◇根拠なき楽観症候群―行ってしまえば何とかなるや
◇海外モラトリアム症候群―気がつけば2年前と同じ悩み
◇転地療法症候群―海外なら何とかなると思っていたのに
◇海外発症の精神科救急症候群—明日まで待てない
高齢者のリタイア後長期滞在の場合
◇フレイル海外発症症候群―老年医学の視点から
◇老いらくの恋症候群―最後の恋には落とし穴
特定地域のストレス要因と関連する症候群


第3章 海外赴任者のためのメンタルヘルス心得

国内と異なる精神科医の処方箋
基本はセルフケア
セルフチェックをしてみよう
セルフケア強化は健”幸”な海外生活のため
赴任前研修で学ぶ海外生活の勘所
海外生活適応の過程
海外生活の動機付けと満足度評価
自分の感情や身体が発するSOSに気づく
不安の先取りに注意
入れ替わりの激しい邦人コミュニティ
海外で増幅される日本文化の特性
海外邦人社会での対人葛藤
赴任先の社会に溶け込む
カルチャーフリーの見方を大切に
帯同赴任中の妊娠出産への備え
いざという時のための支援者、支援体制を作っておく
一時帰国による治療的効果
悩みが多くなったらスーツケース法を試してみよう
困ったときの相談
緊急の医療介入を検討すべき症候と精神状態
重度の自己破壊的行動
入院治療の段取り


第4章 大規模緊急事態と海外邦人メンタルヘルス

海外邦人は災害弱者
自助共助公助
大規模緊急事態下の「隠れた被災者」
支援者支援の基本3点セット
大規模緊急事態における心的外傷
大規模緊急事態としてのパンデミック
新型コロナパンデミックの特徴と海外邦人コミュニティへの影響
世界各地に長期滞在する邦人メンタルヘルス専門家の報告から
海外邦人コミュニティにおける「孤独不安」対策
「情報遮断」対策としてのリスクコミュニケーション
パンデミックによる「自発的移動の制限」の影響
心理的応急処置(PFA)研修:平時からの備え
複合的ストレス要因下にあった中国在留邦人への調査から
中国在留邦人の声―仕事のストレス要因
中国在留邦人の声―生活のストレス要因
中国在留邦人の声―仕事と生活に共通するストレス要因
中国在留邦人の声―ストレス要因への対処法
大規模緊急事態による喪失と再生のストーリー
風の電話とセルフケア


第5章 官民産学による海外邦人支援と新たな協働に向けて  

国境をまたぐ国民への医療アクセス
官民産学それぞれの海外邦人メンタルヘルス支援を振り返る
官:外務省在外公館による邦人援護と医務官制度
民:世界各地の邦人互助団体と邦人メンタルヘルス支援団体
産:企業に蓄積された海外生活のノウハウ
学:海外邦人支援を志向する学術団体
海外邦人コミュニティ支援―「4つの連携」から第5の連携へ
海外邦人へのメンタルヘルス個別支援のこれまでのスタイル
精神医療におけるオンライン個別支援への技術的障壁
国内被災地におけるオンライン支援
高齢者へのオンライン個別支援「愛のマゴの手プロジェクト」
オンライン診療への課題
ICTを活用した官民産協働の事例
―パンデミック下のタイ日本人会によるコミュニティ支援
アフターコロナ時代の海外邦人のライフスタイル
官民産学協働の海外邦人メンタルヘルス支援に向けて
新しい越境者の矜恃

著者略歴

著:鈴木 満
中外製薬株式会社統括産業医。医学博士。日本精神神経学会指導医。日本医師会認定産業医。
1987〜1992年英国国立医学研究所に留学、2019〜2021年広域メンタルヘルス担当医務官として在タイ日本国大使館に赴任。世界140都市を訪問し、官民産学の立場から海外邦人メンタルヘルス支援に取り組む。(2023年8月現在)

ISBN:9784335651953
出版社:弘文堂
判型:4-6
ページ数:248ページ
定価:2300円(本体)
発行年月日:2023年10月
発売日:2023年10月06日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:VFD
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:MJ