KUNILABO人文学叢書
「田舎教師」の時代
明治後期における日本文学・教育・メディア
著:ピーテル・ヴァン・ロメル
内容紹介
「田舎教師」をキーワードに、明治後期の学校教師と文学の関係を教育雑誌に掲載された教育小説と田山花袋の作品の分析から論じる。
公教育が急速に拡大した明治後期、急増した小学校教員たちは中間的な知識人として出版文化の熱心な読者層を形成した。本書は、こうした新しい文学読者が熱心に読み、投稿した教育雑誌と影響力を持っていた田山花袋の作品分析を通し、近代文学と近代教育との関係、教育、教育ジャーナリズム、文学の複雑で多様なありようと変遷を示す。
目次
はじめに
第Ⅰ部 小学校教員と文学
第1章 教育史的背景
一、明治維新から明治二〇年代まで、個人主義から国家主義へ
二、明治三〇年代における教育界の多彩さ
三、明治四〇年代と天皇制イデオロギー教育の確立
第2章 小学校教師たちが形成した新たな読者層
一、地方教員という新たな近代職業階層
二、本科正教員・准教員・代用教員・老教員・女性教員
三、地方教員の日常生活
四、地方教員たちの文学的志向
第Ⅱ部 教育小説と教育ジャーナリズム
第3章 「教育小説」とは
一、「教育小説」という用語
二、新たな教育小説論へ
第4章 明治二〇年代の教育小説
一、明治二〇年代の教育小説の概要
二、立身出世とその矛盾
三、女性の地位
四、開発主義と国家主義
第5章 雑誌『教育界』とその掲載小説
一、雑誌の特徴
二、『教育界』の掲載小説
第6章 雑誌『教育学術界』とその掲載小説
一、雑誌の特徴
二、『教育学術界』の掲載小説
第7章 雑誌『教育実験界』とその掲載小説
一、雑誌の特徴
二、『教育実験界』の掲載小説
第8章 明治四〇年代の単行本の教育小説
一、教育小説のパターンと理想的教員像
二、日露戦争後の教育政策と教育小説との関係
三、児童中心主義と国家主義との関係
四、教育小説『教師の妻』の位置づけ
第Ⅲ部 自然主義文学と教育
第9章 『田舎教師』の先行研究――自然主義文学研究の歪み
一、『田舎教師』の先行研究
二、自然主義研究の歪み
三、新たな自然主義研究へ
第10章 田山花袋――ロマン主義的な地方文学青年から自然主義作家へ
一、田山花袋の学歴
二、田山花袋のロマン主義
三、自然主義への転換
第11章 地方青年を指導する田山花袋――雑誌『文章世界』と田山花袋の自然主義
第12章 小説『田舎教師』――田山花袋の自然主義が果たした社会的な意義
一、地方のロマンティックな文学青年
二、自然主義の必要
三、『田舎教師』の自然主義の社会的な意義
四、『田舎教師』と国家の問題
五、『田舎教師』の位置づけ
第13章 田山花袋の自然主義とその受容
一、池田 清
二、片岡鉄兵
三、江馬 修
四、その他の証言
おわりに
謝辞
参考文献
図版出典一覧
表一覧
初出一覧
事項索引
人名索引