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近代日本における出産と産屋

香川県伊吹島の出部屋の存続と閉鎖

著:伏見 裕子

紙版

内容紹介

女性が出産時ないし産後の一定期間、家族と離れて過ごした産屋はかつて日本各地にあり、伊吹島の出部屋も1970年まで利用された。当時の島の史料分析と、当時の助産婦や、出部屋で出産を経験した女性島民のライフヒストリーの聞き取りを通じて、重層的に産屋の存続のメカニズムを解明。日本近代の出産史を女性史・民俗学的に捉え直す。

目次

はしがき

序章 産屋研究の視角
 一 産屋はどのように描かれてきたか
 二 本書で明らかにすべきこと
 三 研究方法と本書の構成

第一章 フィールドについて
 一 伊吹島の概要
 二 家族構成と年齢集団
 三 出部屋について
 四 出産に関わる慣習・儀礼
 五 生業と女性の暮らし
 六 交通
 七 伊吹島および周辺の医療環境

第二章 昭和戦前期における出部屋の産院化
 一 妊産婦保護事業の広まりと産屋へのまなざしの変化
 二 「伊吹産院」の成立
 三 「伊吹産院」の評価

第三章 戦後の出部屋を活用した近代医療の導入──助産婦のライフヒストリーを通して
 一 助産婦になるまで
 二 伊吹島での開業
 三 出部屋で産ませる
 四 近代医療の導入
 五 伊吹島を去る

第四章 昭和二〇─三〇年代における出部屋の利用状況とその変化──出産をめぐる共同体の規範と家族の事情
 一 穢れ観に基づく規範
 二 同居の姑から離れての出部屋生活
 三 船霊信仰の弱まりと近代医療導入による影響
 四 穢れ観より優先される「家の事情」
 五 共同体の変化に伴う女性の出部屋離れ

第五章 昭和四〇─五〇年代における出部屋の閉鎖とその後──家族のなかの女性の選択
 一 出部屋に行くのは経産婦
 二 初産婦の選択と行動
 三 出部屋の閉鎖
 四 出部屋閉鎖後のバリエーション

終章 出部屋の存続・閉鎖のメカニズムとその意味
 一 伊吹島出部屋の存続と閉鎖のメカニズム
 二 出部屋の存廃が意味すること

あとがき

史料
参考文献
事項索引
地名索引
人名索引
初出一覧

著者略歴

著:伏見 裕子
伏見 裕子(ふしみ ゆうこ) 
1983年生まれ. 京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程研究指導認定退学. 京都大学博士(人間・環境学, 2015年). 現在:佛教大学, 帝塚山大学ほか非常勤講師 公益財団法人世界人権問題研究センター嘱託研究員 主著:『未来をひらく男女共同参画――ジェンダーの視点から』(西岡正子編著、共筆、ミネルヴァ書房、近刊) 主論文:「産屋と医療――香川県伊吹島における助産婦のライフヒストリー」『女性学年報』第31号、2010年 「戦前期の漁村にみる産屋習俗の社会事業化――香川県「伊吹産院」を中心に」『女性学年報』第32号、2011年 「山形県小国町大宮地区の産屋にみる安産信仰と穢れ観の変化――出産の医療化および施設化との関連を中心に」『女性学年報』第33号、2012年 「島のお産から家族のお産へ――昭和20-30年代における伊吹島の出部屋と女性たち」『女性学年報』第34号、2013年

ISBN:9784326602919
出版社:勁草書房
判型:A5
ページ数:240ページ
定価:5000円(本体)
発行年月日:2016年03月
発売日:2016年03月26日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JBCC6