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中所得国の罠と中国・ASEAN

著:トラン・ヴァン・トウ
著:苅込 俊二

紙版

内容紹介

発展途上国から中所得国へ、そして高所得国に向かう中国・ASEANは果たして「中所得国の罠」に嵌ることなく発展できるだろうか。

「中所得国の罠」とは、自国経済が中所得国のレベルで停滞し、先進国(高所得国)入りがなかなかできない状況をいう。中所得国の仲間入りを果たした後の各国は、果たして先進国入りができるのか。日本・韓国の経験を踏まえて、中国・タイ・マレーシア・インドネシア・フィリピン・ベトナムの課題と可能性を問う。

目次

はしがき

第1部 中所得国の罠の課題と理論

第1章 「中所得国の罠」論の登場
 1-1 中所得段階の成長過程
 1-2 開発経済学における「中所得国の罠」論の位置づけ
 1-3 「中所得国の罠」に関する3つの捉え方
 1-4 先行研究から見えてくる論点・課題

第2章 中所得国の罠についての理論的枠組み
 2-1 経済発展段階論
 2-2 要素賦存状況の変化と中所得国の罠
 2-3 キャッチアップ型工業化:雁行型発展の示唆と脱工業化の問題
 2-4 経済発展と制度要因:制度の罠と発展の罠
 2-5 結語と残された課題

第3章 中所得段階での成長鈍化と早期脱工業化
 3-1 世界銀行による所得分類
 3-2 世界銀行基準に準拠した長期的所得区分の作成
 3-3 中所得国の成長性に関する考察
 3-4 先進諸国における脱工業化過程
 【コラム】脱工業化とボーモルのコスト病
 3-5 おわりに

第4章 FDI主導型成長と持続的発展の条件
 4-1 外国の資本・技術・経営ノウハウの導入チャネル
 4-2 技術吸収能力・社会能力
 【コラム】後発性の利益と社会能力:日本と韓国の話
 4-3 外国直接投資の効果
 4-4 FDI依存度と中所得国の罠
 4-5 おわりに

第5章 アジア工業化と経済発展
 5-1 東アジアの重層的発展:日本発の発展過程と現段階
 5-2 東アジアでの工業化波及メカニズムとその要因:雁行形態論とフラグメンテーション理論
 【コラム】アジアダイナミズムへのASEAN諸国の合流過程
 5-3 アジアダイナミズムとメコン河流域諸国の発展
 5-4 おわりに

第2部 北東アジアの経験が示唆するもの

第6章 日本経済の発展経験
 6-1 日本経済の発展過程:時期区分
 【コラム】高度成長期の立役者:経世済民の経済学者と名宰相
 6-2 欧米へのキャッチアップと発展諸段階の要因
 6-3 結びに代えて:日本の発展からの示唆

第7章 韓国の経済発展:科学技術力強化過程を中心に
 7-1 イノベーションにおける科学技術の位置づけ
 7-2 韓国の科学技術強化政策の変遷
 【コラム】韓国の外国資本導入と経済発展
 7-3 韓国の科学技術力の評価
 【コラム】国際市場における技術的パフォーマンス
 7-4 韓国の科学技術力強化戦略からの示唆
 7-5 まとめ

第3部 中所得国の罠が回避できるか:中国とASEANの発展と展望

第8章 中国経済の発展過程と現段階:中所得国の罠に関して
 8-1 中国経済の発展過程・構造変化と現段階
 8-2 中国経済の発展成果と成長要因
 8-3 中国の持続的発展課題:要素市場と技術革新
 8-4 おわりに
 【コラム】中国が進める一帯一路政策

第9章 高位中所得国としてのタイとマレーシア:外資主導型発展の功罪
 9-1 タイとマレーシアにおける経済成長と直接投資流入の動向
 9-2 マレーシア,タイにおける工業化政策の変遷と外資導入の位置づけ
 9-3 通貨危機後の経済動向と今後の発展戦略
 【コラム】人口動態が経済発展に与える影響:人口ボーナスから人口オーナスへ
 9-4 おわりに

第10章 低位中所得国のインドネシアとフィリピン:非工業化型の発展は持続可能か?
 10-1 インドネシアとフィリピンにおける経済発展状況:通貨危機まで
 10-2 2000年代の経済動向
 10-3 非工業化型成長の持続性:インドネシアとフィリピンの発展戦略の方向性
 【コラム】国内消費を支える海外労働者送金

第11章 ベトナム経済:要素市場と持続的発展の課題
 11-1 ドイモイのフェーズIとその成果:1986-2006年
 11-2 2007年以降のドイモイフェーズIIとその課題:要素市場の低発達
 11-3 ベトナム経済の現段階と長期展望
 11-4 おわりに
 【コラム】北朝鮮がベトナムの経済改革に学ぶ話について

参考文献
人名索引
事項索引

著者略歴

著:トラン・ヴァン・トウ
トラン・ヴァン・トウ(Tran Van Tho) 
ベトナム生まれ. 高校卒業後, 国費留学生として来日. 一橋大学経済学博士. 日本経済研究センターや桜美林大学を経て, 現在, 早稲田大学社会科学総合学術院教授, ベトナム首相経済諮問委員, 瑞宝小綬章受章. 著書:『産業発展と多国籍企業』(東洋経済新報社, 1992年, アジア太平洋賞受賞), 『東アジア経済変動とベトナムの工業化』(ベトナム語, Chinh tri Quoc gia 出版社, 2005年, 優良図書賞受賞), 『ベトナム経済の新展開』(日本経済新聞社, 1996年), 『ベトナム経済発展論』(勁草書房, 2010年), 『時間ショックとベトナム経済』(ベトナム語, Tri thuc 出版社, 2015年, 優良図書賞受賞), 『最新アジア経済と日本』(共著, 日本評論社, 2001年), 『ASEAN経済新時代と日本』(編著, 文眞堂, 2016年), 『東アジア経済と労働移動』(共編著, 文眞堂, 2015年)ほか.
著:苅込 俊二
苅込 俊二(かりこみ しゅんじ) 
千葉県生まれ. 早稲田大学商学研究科修了後, 富士総合研究所入社. アジア経済研究所, 財務省財務総合政策研究所, みずほ総合研究所, 早稲田大学などを経て, 現在, 帝京大学経済学部准教授. 早稲田大学博士(社会科学). 著書:『巨大経済圏アジアと日本』(共著, 毎日新聞社, 2010年), 『全解説ミャンマー経済』(共著, 日本経済新聞社出版, 2013年), 『図解 ASEANの実力を読み解く』(共著, 東洋経済新報社, 2014年), 『メコン地域開発とアジアダイナミズム』(共編著, 文眞堂, 2019年).

ISBN:9784326504589
出版社:勁草書房
判型:A5
ページ数:288ページ
定価:3200円(本体)
発行年月日:2019年07月
発売日:2019年07月29日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:KCZ