カトリシズムと生活世界
信仰の近代ヨーロッパ史
他編:中野 智世
他編:前田 更子
他編:渡邊 千秋
内容紹介
暮らしの中の宗教実践から婚姻、家族、生殖、死、児童性虐待まで、近代ヨーロッパを舞台に展開されるカトリシズムの過去と今を探る。
本書は、ヨーロッパの伝統宗教であるカトリシズムを手がかりに、近代社会における宗教の役割を人々の生活世界に着目して明らかにする試みである。日々の生活や習慣、人とのつながり、人生の選択や生き方をも左右する宗教の力を、ドイツ、フランス、スペイン、イタリア、ハンガリー、アイルランドの事例から考察する。
目次
序[中野智世]
第1章 もう一つの母性愛――アイルランドにおけるカトリックの里親たち[勝田俊輔]
一 母性とカトリシズム
二 アイルランドの捨て子養育院
三 「これまで目にしたうちでもっとも悲しい情景」
四 カトリックは里親失格?
五 カトリックの里親と母性愛
第2章 B・ガーボルの苦悩――一九世紀ハンガリーの離婚と(再)改宗[渡邊昭子]
一 死が二人を分かつまで
二 第一の嘆願書
三 第二の嘆願書
四 赦しの可能性
五 二つの制度の間で引き裂かれる生
第3章 近代を生きる修道女たち――ドイツの慈善修道会施設にみる信仰・労働・生活[中野智世]
一 近代化の中の「聖女」
二 聖と俗との境界で――帝政期における女子修道会
三 慈善施設シェーンブルンの修道女たち
四 修道女たちの日常生活――修道女規則から読み解く
五 修道女という人生選択
第4章 女性平信徒と公共圏――スペイン・カンタブリア地方におけるアクシオン・カトリカ婦人部の活動を例に(一九一二~一九三六)[渡邊千秋]
一 アクシオン・カトリカ婦人部創立の背景
二 サンタンデール司教区における「婦人部」創立
三 プリモ・デ・リベーラ独裁体制期の活動
四 第二共和政期の活動
五 女性平信徒と公共圏
第5章 生殖と信仰――両大戦間期フランスのカトリシズムにおける避妊をめぐる議論[長井伸仁]
一 カトリシズムにおける生殖
二 人口問題とフランス教会
三 「天からの贈り物」
四 同床異夢
第6章 カトリック女性教員とライシテ――フランス政教関係の社会史[前田更子]
一 政教分離体制の中の個人
二 ダビデ運動の誕生と公教育のカトリック・ネットワーク
三 三つのフランスのはざまで
四 ダビデにとってのカトリシズムとライシテ
五 ジェンダー、公と私
第7章 独ソ戦に従軍した司祭ペラウの日常[尾崎修治]
一 戦場における宗教
二 軍隊に入った司祭
三 最前線の野戦病院
四 ロシアの村で
五 逃避行の中の信仰実践
第8章 家族と国家――戦後西ドイツの児童手当導入にみるカトリシズムの論理[芦部 彰]
一 家族の負担調整
二 国家介入の限定
三 「自助」による解決
四 カトリシズムの家族政策
第9章 『夫婦の愛、神への道』――二〇世紀フランス・カトリック世界における「カップル」[寺戸淳子]
一 〈勝利の聖母教会〉――「教区復興」から「信徒ネットワーク」へ
二 アンリ・カファレル神父――キリストとの相愛
三 「カップル」の目覚め――愛の喜び
四 「結婚の霊性」
五 迎える「汝」たち
第10章 われらを試みに引き給わざれ、われらを悪より救い給え――カトリック教会における聖職者による児童性虐待をめぐる考察[村上信一郎]
一 「祈り」だけで済ませてよいのか――「性的被害者のための祈りと償いの日」
二 宗教改革以来カトリック教会最大の危機
三 なぜ「ローマ」は何もしなかったのか
四 まだペドフィリアに名前がなかったとき――ソドミーとペドフィリア
五 教皇庁とペドフィリア
六 教皇ベネディクト十六世の蹉跌
あとがき
人名索引
事項索引
ISBN:9784326200641
。出版社:勁草書房
。判型:A5
。ページ数:324ページ
。定価:4500円(本体)
。発行年月日:2023年02月
。発売日:2023年02月21日
。国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:QRMB。