生殖する人間の哲学
「母性」と血縁を問い直す
著:中 真生
内容紹介
人間はみな、広義には「生殖」するものである。差異と普遍性の双方を考慮しつつ、生殖を軸に人間をとらえす、斬新な哲学的試み。
本書は、生殖に関するいまだに根強い従来の見方を再考し、「産む」ことや、自分の子どもをもつことだけでなく、「育てること」や、子どもとの関係からなる「親であること」もまた生殖の一部として考察していく。そこでは生殖に関するいくつかの境界線(妊娠出産経験の有無、血縁の有無、子どもの有無)が揺るがされ、無効化されることになるだろう。
目次
第1章 「生殖」と他なるもの
はじめに
一、生殖するものとしての主体
二、生む・生まない/産む・産まない
おわりに――「生むものとしての人間」へ向けての展望
第2章 生殖の「身体性」の共有――男女の境界の曖昧さ
はじめに
一、生殖の「身体性」とは何か
二、身体的経験と「身体性」の相違
三、生殖の「身体性」における境界の曖昧さと流動性
四、「身体性」の非対称性と縮小
五、「身体性」の共有の拡大
おわりに
第3章 「母性」の再考――「産むこと」に結び付けられているもの
はじめに
一、「母性」とは
二、「母性」の区分――リッチを手がかりに
三、「母性」の分節化
おわりに
第4章 新たな「母性」――産むことと、育てること/母であることの分離
はじめに
一、産むことと育てることの分離可能性――「母性」の第一の側面の分解
二、母であるというあり方――「母性」の第二の側面の分解と再解釈
三、身体性のグラデーション――明瞭な境界線の代わりに
四、なぜ「母」と呼び続けるのか――「第一の親」への呼び換え
おわりに
補章 事例から見る、産む(生む)ことと育てることの分離――新生児特別養子縁組、「赤ちゃんポスト」、児童養護など
はじめに
一、望まない妊娠における、産むことと育てることの分離
二、新生児の特別養子縁組
三、緊急時の最終手段――「赤ちゃんポスト」、内密出産
四、その他の一時的/長期的分離――一時保護、児童養護施設、里親制度
五、両義的感情や葛藤――通常の場合との連続性
おわりに
第5章 父親や養親の側から生殖を見る――間接性と二次性を超えて
はじめに
一、生殖における「核」と、そこからの隔たりによる「親」の「序列」
二、父親の間接性あるいは二次性
三、「第一の親」(primary parent)であること
四、「親」のグラデーションとその変動
おわりに
第6章 産むことや血縁を超えた「第一の親」の拡大
はじめに
一、産むことと「第一の親」であることの分離――育てることへ
二、親業における身体性とその変容
三、「第一の親」に不可欠なもの
四、子ども側の視点と「第一の親」の複数性
おわりに
終章 生殖にかかわる三つの境界の攪乱
はじめに
一、「生む(産む)こと」に関する境界とその無効化
二、なぜ境界ができるのか――代替不可能・不可逆という見方が境界を強化する
おわりに
あとがき
参考文献
ISBN:9784326154791
。出版社:勁草書房
。判型:4-6
。ページ数:312ページ
。定価:3200円(本体)
。発行年月日:2021年08月
。発売日:2021年08月20日
。国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:QDT。