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オッカムのかみそり

最節約性と統計学の哲学

著:エリオット・ソーバー
訳:森元 良太

紙版

内容紹介

なぜ仮説は単純なほうがよい?「オッカムのかみそり」はどう使う? この有名な原理を科学や哲学で振るうための使い方マニュアル。

哲学だけでなく科学や日常生活など多様な場面で利用される「オッカムのかみそり」。だが使い方はさまざまで、どう単純ならばよいのかはっきりしない。そんなオッカムのかみそりの歴史をひもとき、なぜ単純がよいのかを探り、使用法を各種紹介しつつ、統計学の哲学の観点から捉えなおす。「統計学の哲学」への手引きとなる1冊。

目次

はじめに
謝辞

第1章 最節約性に関する一切れの歴史──アリストテレスからモーガンまで

 命名式
 自然は無駄なことを一切しないというアリストテレスの原理
 オッカムはかみそりをどう振るったのか
 地球中心説と太陽中心説の宇宙論
 神と自然法則をめぐるデカルトとライプニッツ
 デカルトによる導出
 あらゆる可能世界のなかでの最善を主張するライプニッツ
 過剰な原因という贅沢を避けることについてのニュートンの考え
 自然の斉一性原理に関するヒューム
 カントによる神の降格
 ヒューウェルによる帰納の統合
 ミルはかみそりの刃渡りを短くしようとした
 福音主義の物理学者ジェイムス・クラーク・マクスウェル
 モーガンの公準
 結び

第2章 確率論的転回
 2つの確率論の哲学
 確率論入門とベイズ主義の基礎
 ベイズ主義者にとってのオッカムのかみそり
 2種類の事前確率
 ジェフリーズの単純性の公準
 ジェフリーズの公準に対するポパーの反論
 ポパー、反証可能性、験証度
 ポパーによる単純性の特徴づけ
 最節約性と非一番手の事前確率
 尤度と共通原因
 類似性について
 ライヘンバッハに関する3つの区別
 ベイズ主義的なオッカムのかみそり
 頻度主義と調節可能パラメータ
 唯一の結果に対して原因はいくつあるか
 ベイズモデル選択
 モデル選択の世界
 2つの最節約性パラダイムの違い
 なぜ偽のモデルが真のモデルよりも予測の精度が高く(かつ真理に近く)なる場合があるのか
 2つの最節約性パラダイムの共通点
 結び

第3章 進化生物学における最節約性──系統学的推論
 共通祖先
 ちょっとした歴史
 オッカムがマルコフに出逢う
 忠実に反映することを含意する2つのモデル
 共有原始形質
 スミス/コックドゥードル定理
 祖先の形質状態を推定する──忠実に反映しない2つの事例
 別の規準──統計的一致性(statistical consistency)
 さらに別の規準──最節約性が当て推量(guessing)よりも信頼できるのはどのような場合か
 先へ進むことともとへ戻ること
 葉の形質状態を推定する──擬人主義と比較心理学
 新旧の最節約性
 結び

付録3.1 共有派生形質1-1-0が(XY)ZをX(YZ)よりも支持し、共有原始形質0-0-1も同じくそれを支持し、かつ最節約性に統計的一致性があることの十分条件
付録3.2 共有派生形質が共有原始形質よりも近縁性の強い証拠となる条件
付録3.3 (P(ヒトにMがある|チンパンジーにMがない))/(P(ヒトにMがある|チンパンジーにMがある))を1よりも非常に大きくする条件

第4章 心理学における最節約性──心を読むチンパンジー
 実験
 対立する解釈
 ホワイトンの矢印
 2つの最節約性パラダイム
 ブラックボックスからの教訓
 遮断を一切引き出さない、心を読む別のモデル
 学習と遮断
 連関、相関、検定
 最節約性再訪
 遮断に関係しないチンパンジーの相互比較
 行動主義と心理主義
 結び

第5章 哲学における最節約性
 さまざまな自然主義
 無神論と悪の問題
 証拠の不在と不在の証拠
 心身問題
 心的なものの因果作用
 道徳実在論
 遮断についての誤解
 数学についての唯名論とプラトン主義
 独我論
 帰納の問題
 結び

参考文献
訳者あとがき
索引

著者略歴

著:エリオット・ソーバー
エリオット・ソーバー(Elliott Sober)ウィスコンシン大学哲学科ハンス・ライヘンバッハ教授・ウィリアム・F・ヴァイラス教授兼任.2014 年,科学哲学会のカール・ガスタフ・ヘンペル賞受賞.著作に,“Evidence and Evolution: The Logic Behind the Science”( 2008,抄訳『科学と証拠』松王政浩訳,名古屋大学出版会,2012),” Did Darwin Write the Origin Backwards?: Philosophical Essays on Darwin’s Theory”( 2011),“Reconstructing the Past:Parsimony, Evolution, and Inference”( 1988,『 過去を復元する』三中信宏訳,勁草書房,2010).

訳:森元 良太
森元 良太(もりもと りょうた)
北海道医療大学准教授。1975年、広島生まれ。慶應義塾大学大学院文学研究科博士課程修了。博士(哲学)。著書に『生物学の哲学入門』(共著、勁草書房、2016)、『ダーウィンと進化論の哲学』(共著、勁草書房、2011)ほか、訳書にエリオット・ソーバー『オッカムのかみそり─最節約性と統計学の哲学』(勁草書房、2021)、同『進化論の射程──生物学の哲学入門』(共訳、春秋社、2009)、イアン・ハッキング『確率の出現』(共訳、慶應義塾大学出版会、2013)ほか。

ISBN:9784326102945
出版社:勁草書房
判型:A5
ページ数:368ページ
定価:4500円(本体)
発行年月日:2021年05月
発売日:2021年05月17日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:PDA