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コミュニタリアニズムのフロンティア

編:小林 正弥
編:菊池 理夫

紙版

内容紹介

日本のコミュニタリアニズム論者ツートップが手掛ける論集、遂に実現!双璧率いる次代の論客達がコミュニタリアニズム最前線を踏破。

サンデルの政治哲学は、なぜ日本で、これほど一般の人に受け入れられたのか。そして専門家の間で未だに誤解されていることは何か。コミュニタリアニズムが様々な領域に与えた影響力や可能性を論じ、過去の日本の思想家に対するコミュニタリアニズムの観点からの再評価も試みる。現代コミュニタリアニズムの理解が深まる絶好の一冊。

目次

はじめに[菊池理夫]

第一部 コミュニタリアニズムの思想的展開

第1章 リベラル・ナショナリズム[川瀬貴之]
 第1節 共同体としての国民(nation)
 第2節 リベラル・ナショナリズム
 第3節 リベラル・ナショナリズムの意義と課題

第2章 グローバルな正義論[福原正人]
 第1節 コミュニタリアニズムを分類する
 第2節 コミュニタリアニズムA群――棲み分ける
 第3節 コミュニタリアニズムB群――和解する
 第4節 残された課題

第3章 環境倫理・世代間倫理[吉永明弘]
 第1節 環境問題におけるリベラリズムの問題点
 第2節 デシャリットのコミュニティ論――環境倫理学に対する批判とともに
 第3節 世代間倫理とコミュニタリアニズム

第4章 性差と家族・子ども――「正義とケア」論争から生成的コミュニタリアニズムへ[小林正弥]
 第1節 性差の存在と「本質主義批判」への進化論的応答
 第2節 「本質主義」反批判とエコ・フェミニズム
 第3節 フェミニン・コミュニタリアニズム
 第4節 異性和合的コミュニタリアニズムとジェネラティヴィティ(世代生成性)
 第5節 二極宇宙論的・生成的コミュニタリアニズム
 第6節 「平等性と二極性」に基づく公共哲学

第5章 宗教[栩木憲一郎]
 第1節 「世俗化」の理解をめぐって――「脱宗教化」への疑問符と宗教における公共的次元の存在
 第2節 「世俗主義」の理解をめぐって――ロールズの「現代リベラリズム」に対する批判
 第3節 宗教的前提の意義と課題――共通の課題への連帯に向けて

第二部 コミュニタリアニズムの実践的展開

第6章 公共政策学――共通善の政策科学[菊池理夫]
 第1節 ラスウェルの「民主主義の政策科学」再評価とコミュニタリアニズムの政策論
 第2節 「応答するコミュニタリアニズム」と「第三の道」
 第3節 日本のコミュニタリアニズムとしての「地域主義」
 第4節 共通善の政策科学の意義

第7章 正義・共同体・法――コミュニタリアニズムの憲法論的含意をめぐって[尾形健]
 第1節 複合的平等(complex equality)の観念
 第2節 正義の位相――ドゥウォーキン=ウォルツァー論争
 第3節 正義と共同体――ウォルツァー理論の意義と射程

第8章 福祉[妻鹿ふみ子]
 第1節 なぜ福祉とコミュニタリアニズムなのか
 第2節 コミュニタリアンとしてのビル・ジョーダン
 第3節 思想家ジョーダンのコミュニタリアン的立ち位置
 第4節 社会正義を実現させる福祉政治
 第5節 第三の道の失敗
 第6節 コミュニタリアニズムの原理に依拠した福祉国家はあり得るのか

第9章 学校,コミュニティ,ボランティア――なぜ人格形成を重視するのか[坂口緑]
 第1節 コミュニタリアニズムの論者による教育論
 第2節 学校とボランティア活動
 第3節 なぜ人格形成を重視するのか

第10章 パブリック・ジャーナリズム[畑仲哲雄]
 第1節 パブリック・ライフを再生させるジャーナリズム
 第2節 リベラル―コミュニタリアン論争という後景
 第3節 21世紀に継承された遺産と課題

第三部 日本におけるコミュニタリアニズム

第11章 南原繁[栩木憲一郎]
 第1節 南原繁の思想的背景とその問題意識
 第2節 南原繁の政治思想の展開(1)――政治的価値としての正義
 第3節 南原繁の政治思想の展開(2)――全体主義の時代に抗して
 第4節 南原繁の戦後―結びにかえて

補説 京都学派[小林正弥・栩木憲一郎]

第12章 賀川豊彦[伊丹謙太郎]
 第1節 賀川豊彦を読むことの現代的意義――共苦からの声
 第2節 賀川豊彦におけるコミュニティ実践――隣人となること
 第3節 人格主義と生命の成長――賀川における「善」の問題
 第4節 友愛の政治経済学――協同組合運動とコミュニタリアニズム

終章 コミュニタリアニズムのフロンティア――その到達点とビジョン[小林正弥]
第1節 コミュニタリアニズムをめぐる思想的地図
 第2節 時空間的展開――ナショナリズムとコスモポリタニズム,超世代的コミュニティ
 第3節 家族と宗教――世代生成性と精神性
 第4節 コミュニタリアニズムの実践的展開――政策,法,福祉,教育,ジャーナリズム
 第5節 日本思想史におけるコミュニタリアニズム的政治哲学――京都学派と南原繁
 第6節 日本のコミュニタリアニズム的経済論――賀川豊彦と宇野弘蔵
 第7節 地球的・複層的および生成的・動態的コミュニタリアニズム――戦争責任論と平和への論理

ブック・ガイド――各分野をさらに学びたい人のために

おわりに[小林正弥]

事項索引
人名索引
執筆者一覧

著者略歴

編:小林 正弥
小林 正弥(こばやし まさや)
1963年生。東京大学法学部卒業。千葉大学大学院社会科学研究院教授、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科特別招聘教授。著書に、『政治的恩顧主義論─日本政治研究序説』(東京大学出版会、2000年)、監訳書にM. J. サンデル『民主政の不満─公共哲学を求めるアメリカ(上・下)』(勁草書房、2010-2011年)、共編著に『コミュニタリアニズムのフロンティア』『コミュニタリアニズムの世界』(ともに勁草書房)ほか多数。
編:菊池 理夫
菊池理夫(きくち まさお)
1948年生.慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程修了.南山大学法学部教授.著書に,『ユートピアの政治学――レトリック・トピカ・魔術』(新曜社,1987年),『現代のコミュニタリアニズムと第三の道』(風行社,2004年),『日本を甦らせる政治思想――現代コミュニタリアニズム入門』(講談社,2007年),『共通善の政治学――コミュニティをめぐる政治思想』(勁草書房,2011年)ほか.
訳書に,M.J.サンデル『リベラリズムと正義の限界原著第二版』(勁草書房,2009年)など.

ISBN:9784326102235
出版社:勁草書房
判型:A5
ページ数:384ページ
定価:3700円(本体)
発行年月日:2012年11月
発売日:2012年11月29日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JP