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数学と物理の交差点 3

相対論とリーマン幾何学

著:山田 澄生
編:谷島 賢二

紙版

内容紹介

 一般相対論は重力の理論であり、また時間と空間を結びつける理論でもあるが、数学の立場からは物理現象をリーマン多様体の理論に基づく考察によって定式化する理論ともいえる。本書は筆者の講義をもとにして、数学の立場から書かれた、一般相対論の骨子であるアインシュタイン方程式が内包する幾何学への入門書である。まず、多様体上における微積分の準備をテンソルを介して行い、次に特殊相対性理論を扱う。その後、アインシュタイン方程式の導出をし、非真空アインシュタイン方程式、コーシー初期値問題としての定式化、シュバルツシルト時空、ハミルトン形式との関係などを解説する。最後には、いわゆるブラックホールのホーキング・ペンローズ理論を解説する。

目次

第1章 多様体上の微積分
1.1 多様体の定義
1.2 多様体の例
1.3 多様体上の関数と写像
1.4 多様体上の接ベクトルとベクトル場
  1.4.1 接ベクトル
  1.4.2 ベクトル場
1.5 多様体間の写像の微分
1.6 微分方程式系としてのベクトル場
1.7 部分多様体
1.8 多様体上のテンソル
  1.8.1 テンソルおよびテンソル場の定義
  1.8.2 テンソル積と外積
  1.8.3 (p, q)テンソルの変換則
  1.8.4 関数環上の加群としてのテンソル場
1.9 Rnのベクトル場の微分
  1.9.1 リーマン計量とローレンツ計量
  1.9.2 リーマン多様体上でのテンソル場
  1.9.3 ユークリッド空間の部分多様体の共変微分
  1.9.4 リーマン幾何学の基本定理
1.10 レビ・チビタ接続と平行移動
  1.10.1 平行移動の定義
  1.10.2 測地線の定義
  1.10.3 レビ・チビタ接続と等価原理
  1.10.4 標構について
  1.10.5 一般テンソルの共変微分
1.11 微分形式と外微分
  1.11.1 内部積
  1.11.2 レビ・チビタの擬テンソルとホッジの*作用素
1.12 微分同相写像とリー微分
1.13 いくつかの微分作用素と発散定理
  1.13.1 発散作用素
  1.13.2 発散定理
  1.13.3 へシアン
  1.13.4 ラプラス作用素
1.14 多様体上の微積分学の参考文献

第2章 特殊相対論とマクスウェル方程式
2.1 ミンコフスキー空間
  2.1.1 距離空間としてのミンコフスキー空間
  2.1.2 ミンコフスキー空間の対称性
2.2 特殊相対論におけるエネルギー・運動量ベクトル
2.3 マクスウェル方程式
  2.3.1 微分形式による定式化
  2.3.2 コーシー問題としてのマクスウェル方程式

第3章 アインシュタイン方程式の導出
3.1 リーマン曲率テンソル
  3.1.1 ビアンキ恒等式
  3.1.2 曲率テンソルと平行移動
3.2 一般相対性理論の幾何学的仮定
  3.2.1 アインシュタインの理論における幾何学的仮定
  3.2.2 ニュートン力学との対比
3.3 アインシュタイン・ヒルベルト汎関数とその変分
3.4 アインシュタイン方程式は幾何学的である

第4章 非真空アインシュタイン方程式
4.1 ミンコフスキー空間上のマクスウェル方程式再訪
4.2 エネルギー・運動量テンソルのラグランジアン汎関数からの構成
4.3 エネルギー・運動量テンソルのエネルギー条件
4.4 スカラー場
4.5 電磁場
4.6 完全流体
4.7 アインシュタイン方程式の線形化
4.8 アインシュタイン方程式の非相対論的極限としてのニュートン力学

第5章 コーシー初期値問題としてのアインシュタイン方程式
5.1 部分多様体の第1,第2基本形式
  5.1.1 ガウス方程式とコダッチ方程式
5.2 ローレンツ多様体の空間的部分多様体
  5.2.1 アインシュタイン拘束条件
5.3 大域双曲性とコーシー曲面
  5.3.1 大域的双曲時空とコーシー曲面の例
5.4 コーシー初期値問題としてのアインシュタイン方程式
  5.4.1 調和ゲージと波動写像ゲージ
  5.4.2 存在定理の証明
5.5 コーシー問題の解の一意性

第6章 静的アインシュタイン方程式とシュバルツシルト時空
6.1 キリング・ベクトル場と静的解
6.2 シュバルツシルト解の導出
  6.2.1 空間的シュバルツシルト計量のFlammモデル
6.3 シュバルツシルト時空におけるブラックホール入門
  6.3.1 時空の光的方向とカーター・ペンローズ図形
6.4 球対称静的解に関する定理とその解釈
  6.4.1 バーコフ(Birkhoff)の定理
  6.4.2 シュバルツシルト内部解と星の崩壊
6.5 漸近平坦な静的解

第7章 ハミルトン形式,時空の対称性とエネルギー保存則
7.1 時空の3+1分解とハミルトン方程式
  7.1.1 第1,第2基本形式の変分公式
  7.1.2 3+1分解とアインシュタイン方程式
  7.1.3 ハミルトン形式としてのアインシュタイン方程式
7.2 ネーターの定理と保存量
  7.2.1 ミンコフスキー空間上のエネルギー保存則
  7.2.2 アインシュタイン時空の漸近的不変量
  7.2.3 正エネルギー定理,正質量定理
  7.2.4 2次元正質量定理について

第8章 ブラックホール領域と特異点定理
8.1 宇宙検閲官仮説
8.2 光的超曲面と光的測地線
8.3 部分多様体の変分的考察
  8.3.1 リーマン多様体内の一般余次元の部分多様体
  8.3.2 ローレンツ多様体内の光的部分多様体
8.4 ヤコビ・ベクトル場とその応用
  8.4.1 ヤコビ・ベクトル場,ヤコビ方程式と測地線の安定性
  8.4.2 測地線束とレイチャウデウリ(Raychaudhuri)方程式
  8.4.3 エネルギー条件と共役点の存在定理
  8.4.4 ペンローズの特異点定理
  8.4.5 過去向き時間的測地線の共役点の応用
8.5 宇宙検閲官仮説とペンローズ不等式

あとがき
参考文献
索引

ISBN:9784320114036
出版社:共立出版
判型:A5
ページ数:292ページ
定価:3800円(本体)
発行年月日:2023年04月
発売日:2023年04月28日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:PBMP
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:PHR