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森林科学シリーズ 6

森林と地球環境変動

編:三枝 信子
編:柴田 英昭

紙版

内容紹介

本書では,地球規模で起こる自然および人為的要因による環境変動の影響を受け,森林が過去から現在にかけてどのように変化してきたか,将来の気候変動にどのように応答する可能性があるかについて,近年進展しつつある研究の成果を交えて解説する。本書では,主に地球の生物地球化学的循環や人間社会に対する森林の役割を,炭素,水,窒素などに関わる視点から解説するが,それを個々の調査地点で研究する手法のみならず,リモートセンシング等を併用して広域に捉える手法や,地球規模で将来予測を行うためのモデルを用いた研究手法についても紹介する。本書によってさまざまな時間・空間スケールで変動する地球環境と森林の関係についての理解が進み,将来の気候下において世界各地の森林がどのように変化する可能性があるかについても想像していただけることを期待する。

目次

【第1部 地球規模の環境変動と森林の役割】

第1章 気候変動に対する森林の役割(三枝信子・柴田英昭)
はじめに
1.1 地球の誕生と森林の出現:大気組成を変貌させた光合成生物
1.2 大陸移動と森林:気候帯と植生分布の形成
1.3 過去の温暖な気候下における古環境と森林分布の復元
1.4 氷期・間氷期の環境変動と森林:急激で大きな環境変動の時代
1.5 過去2,000年の地球環境変動と森林:人間の影響が顕在化する時代
1.6 現在進行中の地球環境変化と森林の応答
1.7 突発的な環境変動と森林:撹乱と極端現象
1.8 森林の季節変化・日変化:主に大気中二酸化炭素濃度への影響
おわりに 未来の地球:気候変動対策と森林

第2章 地球規模での森林環境の現状把握:リモートセンシングによるアプローチ(永井 信)
はじめに
2.1 植生フェノロジー観測
  2.1.1 デジタルカメラによる植生フェノロジー観測
  2.1.2 衛星による植生フェノロジー観測
2.2 植生バイオマスの観測
  2.2.1 光学センサーによる植生バイオマスの観測
  2.2.2 マイクロ波合成開口レーダーによる植生バイオマスの観測
おわりに


【第2部 世界の森林における気候変動の影響】

第3章 温帯林への気候変動の影響(村岡裕由)
はじめに
3.1 温帯林の構造と機能
  3.1.1 森林の生態学的構造と機能
  3.1.2 森林生態系の炭素収支
3.2 落葉広葉樹林の炭素循環・収支の時間的変動
  3.2.1 冷温帯落葉広葉樹林の炭素循環の長期観測
  3.2.2 冷温帯落葉広葉樹林の炭素循環・炭素収支の季節変化と年変動
  3.2.3 落葉広葉樹林の個葉光合成と土壌呼吸に対する気象環境の変動の影響
3.3 森林生態系の林冠光合成のリモートセンシング
  3.3.1 森林の生理生態学的プロセスに着目したリモートセンシング
  3.3.2 林冠の光合成能力の分光指数の検証と適用
  3.3.3 林冠の光合成活性のリモートセンシング
おわりに

第4章 熱帯林への気候変動および人間活動の影響(平野高司)
はじめに
4.1 熱帯林の特徴
  4.1.1 熱帯林の分布と分類
  4.1.2 熱帯林の炭素収支
4.2 気候変動・変化と熱帯林
  4.2.1 降水量の変動
  4.2.2 温暖化
  4.2.3 CO2濃度上昇
4.3 人間活動の影響
  4.3.1 森林伐採(deforestation)と森林劣化(degradation)
  4.3.2 火災の影響
4.4 熱帯泥炭林
  4.4.1 熱帯泥炭林の特徴と現状
  4.4.2 熱帯泥炭林の炭素収支と撹乱にともなう炭素放出
おわりに

第5章 北方林への気候変動の影響(高木健太郎)
はじめに
5.1 北方林の特徴
  5.1.1 分布
  5.1.2 気候と土壌
  5.1.3 植生
5.2 北方林の炭素蓄積量
  5.2.1 広域評価
  5.2.2 様々な北方林における炭素蓄積量
5.3 北方林の炭素循環
  5.3.1 生態系―大気間のCO2交換
  5.3.2 生態系―大気間のメタン交換
  5.3.3 土壌炭素の流出
5.4 撹乱が北方林の炭素循環に及ぼす影響
  5.4.1 森林火災が及ぼす影響
  5.4.2 病虫害が及ぼす影響
  5.4.3 森林伐採影響を含む総合評価
  5.4.4 撹乱が及ぼす北方林の熱環境の変化
5.5 気候変動が北方林の炭素循環に及ぼす影響
  5.5.1 温度上昇が及ぼす影響
  5.5.2 永久凍土の融解
  5.5.3 水環境の変化を介して及ぼす影響
5.6 大気環境の変化が北方林の炭素循環に及ぼす影響
  5.6.1 CO2濃度の増加が及ぼす影響
  5.6.2 オゾン濃度や窒素沈着量の増加が及ぼす影響
おわりに


【第3部 将来気候下での世界の森林環境】

第6章 地球温暖化に伴う植生帯の移動(中尾勝洋)
はじめに
6.1 気候変動による分布変化
  6.1.1 気候変動に対する植生帯の移動
  6.1.2 国内における分布変化
6.2 気候変動による分布変化を捉える
  6.2.1 分布変化の検出手法
  6.2.2 国内におけるモニタリングネットワーク
  6.2.3 市民参加型モニタリングネットワーク
  6.2.4 温暖化操作実験
6.3 気候変動による分布変化の予測と課題
  6.3.1 分布変化を予測する手法
  6.3.2 統計的な方法
  6.3.3 種特性情報を用いた方法
  6.3.4 間接的な評価手法
  6.3.5 不確実性
おわりに:気候変動影響への自然生態系の適応策

第7章 地球規模の観測データに基づく森林環境の変化の把握(市井和仁・近藤雅征)
はじめに
7.1 陸域生態系物質循環における地上観測データベースの役割
  7.1.1 フラックス観測データベース
  7.1.2 生態系観測データベース
  7.1.3 異なる観測データベースの長所・短所
7.2 地上観測データベースを利用した森林環境変動の把握
  7.2.1 CO2フラックスと気候条件の関係性
  7.2.2 環境条件・植生成長が及ぼすCO2交換量の変動パターン
7.3 地上観測データと衛星観測データを利用した広域化による現状把握
  7.3.1 広域化の概念
  7.3.2 代表的な広域化手法
  7.3.3 機械学習による広域化手法
おわりに

第8章 陸域生態系モデルに基づく世界の森林環境の将来予測(伊藤昭彦)
はじめに
8.1 将来の森林環境
  8.1.1 大気と気候の変動
  8.1.2 土地利用変化
8.2 森林生態系のシミュレーションモデル
  8.2.1 森林の分布・動態を予測するモデル
  8.2.2 森林機能を予測するモデル
8.3 将来の森林の構造と機能の予測
  8.3.1 森林サイトでのシミュレーション
  8.3.2 広域(アジア)でのシミュレーション
おわりに


索 引

ISBN:9784320058224
出版社:共立出版
判型:A5
ページ数:244ページ
定価:3300円(本体)
発行年月日:2019年12月
発売日:2019年12月09日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:TVR