エコシステムマネジメント
包括的な生態系の保全と管理へ
編:森 章
内容紹介
本書では,「生態系管理」,あるいは,「エコシステムマネジメント」と呼ばれる自然環境や資源,生物多様性の管理,復元,そして保全について述べる「生態系管理学」について述べています。生態系の「管理」とは,生態系をトップダウン型に「コントロール」しようとすることではありません。ここでは,人間活動により元の姿(いわゆる自然の姿)とは異なり,何らかの問題(生物多様性や生態系サービスの減少)を抱えてしまった生態系を,より良い状態(生物多様性や生態系サービスが高い状態)へと導くための試行錯誤を指します。本書では,ともすれば曖昧になりがちなエコシステムマネジメントについて,最新の知見を軸に解説します。
古くは公害問題,1990年代後半からは温暖化にまつわる問題,最近では2010年に愛知県名古屋市で開かれた生物多様性条約第10回締約国会議の際における生物多様性への関心の高まりなど,我が国においても,自然環境の保全に関する関心は高まる一方だといえます。国際連合の枠組みの中でまとめられたミレニアム生態系評価においても,生態系が人間社会に享受する恵み(サービス)の高さが評価されています。自然環境への関心は高まり,生態系や生態系に影響を及ぼす社会に関する知見も蓄積してきています。しかしながら,まだまだ我々は資源を利用しつつ生物多様性をできるだけ保全するためのバランスをうまく見出すことができていません。本書では,このバランスについて考えています。
目次
第1部 エコシステムマネジエントについて
第1章 エコシステムマネジメント-概念と遍歴
第2部 生態系に及ぶ危機とその対応
第2章 分断化景観のマネジメント-残存生息地からマトリックスへ
第3章 自然保全区のマネジメント-設置の計画から管理の在り方まで
第4章 外来種のマネジメント-侵略的種による影響の予防と抑制
第3部 生態系と社会のレジリアンスの構築へ
第5章 生態系の非線形な変化-生態学的閾値の概念に基づくマネジメント
第6章 生態系サービスと社会・生態システム-持続可能性の探究
第4部 陸域生態系におけるマネジメントの在り方
第7章 森林生態系-資源利用と生物多様性の双方に配慮したマネジメント
第8章 土壌生態系-機能性を重視したマネジメント
第9章 淡水生態系-多様性,変動性,閾値に配慮したマネジメント
第5部 生態系を保全する社会的な取り組み
第10章 エコシステムマネジメントと環境法-動的な秩序形成過程の相克
第11章 生態系サービスの評価-環境経済からのアプローチ
第6部 エコシステムマネジメントのこれから
第12章 生物多様性とエコシステムマネジメント-生態系を基軸とした保全と管理
第13章 気候変動とエコシステムマネジメント-不確実な未来への適応
ISBN:9784320057760
。出版社:共立出版
。判型:B5
。ページ数:348ページ
。定価:4500円(本体)
。発行年月日:2012年09月
。発売日:2012年09月23日
。国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:PSAF。